プラセボ(プラシーボ)効果とは「偽薬効果」とも言われています。
本来は薬効として効く成分がない薬(偽薬)を投与したのに、病気が快方に向かったり治癒したりすることがあります。
恐らく、偽薬であっても信じて服用することによって「精神的な安心・安定」だとか「病は気から」ということに通じ、効果が表れているのだと思われますが、その詳しいメカニズムは解明されていないようです。
特に高齢者は「薬」に対して「特別な感情」を抱いているように感じることがあります。
重度の認知症者は例外ですが多くの高齢者からは 「ご飯は食べなくても薬は飲まなくてはならない」「薬さえ飲んでおけば安心だ」という薬に対する強い情熱を感じます。
「早くあの世からお迎えが来ればいいのに」と口癖のように言う高齢者でさえ、薬はしっかり服用するのですから、お迎えが来て欲しいのか欲しくないのかよくわかりません。
今回は「高齢者は医者の言葉だけでも痛みが取れてしまうのはプラセボ効果ではないか」ということについて記事を書きたいと思います。
介護施設でのプラセボ効果
まずは、介護施設における「プラセボ効果」について見ていきたいと思います。
利用者の中には、薬に依存してしまい用法用量を超えて投薬を希望する利用者もいるため、介護施設でも時々「偽薬」でのプラセボ効果の恩恵に与っている利用者も存在します。
そういったケースは、家族や主治医や関係専門職とカンファレンス(会議・協議)をした上で、偽薬を投薬する場合があります。
本人には偽薬だと伝えずに「効果のある薬です」と言ってブドウ糖や乳糖の偽薬を服用させます。
例えば、頭痛を訴えて、一日に何回も鎮痛剤の服用をしたがる利用者に偽薬を投薬すると「薬のお陰で治りました」ということが確かにあるのです。
恐るべし、プラセボ効果です。
医者の診断もある種のプラセボ効果
医者の診断や言葉は診察や検査に基づいたものなので、信頼性が高いのは事実ですが、それだけで瞬時に痛みが軽快してしまうのは一種の「プラセボ(プラシーボ)効果」だと言えます。
腰に強い痛みを訴えていた利用者が病院受診し、医者の問診とレントゲン撮影後に「特に異常所見なし」という診断を受けたら「瞬時に痛みまで軽快した」という例もあるようです。
特に何か治療的なことをしたわけでもなく、問診とレントゲンを撮っただけなのですが、医者の「異常所見なし」という言葉だけで、病院受診から帰ってきた利用者は表情が明るく腰痛さえ軽快していました。
「あの痛がり方はなんだったんだ」
とも思える効果です。
これは医者という立場の人間が「異常はないという診断をしたことによるプラセボ効果ではないか」と思われます。
医者の言葉はそれだけ絶大な安心感を生むのです。
受診前まで苦痛表情を浮かべながら、食事も喉を通らず車椅子で移動していた利用者が、病院受診後には
- 満面の笑み
- 食欲旺盛
- いつも通り歩行
という状態まで回復したそうです。
また、最新の研究でも医者の言葉には「プラセボ効果」があることが明らかになってきているようです。
- 皮膚のかゆみを測るテストにより、専門家が「かゆみが引いていく」と語ったグループの「かゆみ」の数値が低いことが分かった
- 医者にかかるという行為は「心理学的」な要素を含んでいる
【引用元】ナゾロジー
高齢者に限らず、我々でも似たようなことがあり得ますが、やはり高齢者の方が顕著な印象です。
その理由は、高齢者が「医者を神格化している」「信じ込みやすい」ということがあると考えられます。
最後に
今回は「高齢者は医者の言葉に絶大な安心感を覚えることで痛みさえも軽快してしまう」ということについて記事を書きました。
やはり、医者という社会的地位とステータスの高い人物からの発言や診断は絶大な安心感と効果があるようです。
同じ専門職といえども、我々介護職員では「超えられない壁」があることも痛感しました。
特に高齢者は「医者を神格化」さえしているきらいがあります。
今後「介護福祉士」の社会的地位とステータスを上げていくに当たって、専門職としての発言やケア方法によって、どの程度の「プラセボ(プラシーボ)効果」を与えていけるか、ということも、ひとつのモノサシとなるのではないでしょうか。