「1介助、1手袋」は基本の「き」です。
つまり、「1つの介助をするたびに、使い捨てのゴム手袋を付け替えましょう」ということになります。
時々、介助をする時に手袋(グローブ)を使わずに素手で行っている人がいます。
ごく稀に事業所が経費としてゴム手袋を認めておらず、職員が介助をする時に手袋を使用していなかったり、職員が自腹で購入して使っているようなところもあると聞いたことがあります。
もちろん、介助後は手洗いをしているのでしょうが、 それでもやはり不衛生です。
ひとつの介助ごとに手袋を使用するのは基本であり常識となっています。
今回は「介助をするたびに使い捨てのゴム手袋(グローブ)を付け替えるのは基本であり常識」ということについて記事を書きたいと思います。
年配の人に素手介助が多い?
統計を取ったわけではないので 私の個人的主観になってしまうのですが、ゴム手袋を使用しないのは「年配の職員」に多いように感じます。
事業所がグローブを経費として認めていないところは「年配の経営者」ということがあるのかもしれません。
年配の人が手袋を使用しないのは
- 昔は今ほど衛生管理の基準が厳しくなかった
- 昔はグローブを着用するという概念が無かった
- グローブをつけて介助することは利用者に失礼という精神論
- そういう昔からのやり方が身についてしまい変化についていけない
- 手洗いをしっかりすれば問題ないという固定概念を持っている
という理由があるように思います。
素手介助を誇りに感じている人もいる
利用者の口腔ケアだろうと排泄介助だろうと「素手で行う」という事に「誇り」を持ってやっている人もいるように感じます。
- 自分は利用者に愛情を持っているから素手で介助できる
- 手袋をつけるなんて利用者に失礼
- 利用者を「汚い」なんて思っていないから素手介助をしている
という時代錯誤の間違った美学を持っています。
しかしながら、それらの誇りは 「精神論」に過ぎず、推奨されるどころか淘汰されていかなければならない考え方になります。
介助の時は手袋を装着するのが常識
「グローブ着用は常識で、素手介助は淘汰されていかなければならない」という理由について説明したいと思います。
①自分のため
手指は介護で一番よく使う部位であり、一番利用者に触れる頻度が高い最先端の部位です。
素手で利用者の介助をすると、目に見えない細菌やウイルスが付着します。
自分の手指に細菌やウイルスが付着した状態で、お昼ご飯におにぎりやサンドイッチを食べたり、 目を擦ったり鼻の穴をほじったりすると、それらの細菌やウイルスに感染するおそれがあります。
勿論、介助後に手洗いはするのでしょうが、 手洗いで100%細菌やウイルスが洗い落とせるわけではありません。
また、手指に切り傷や擦り傷などの外傷がある場合、「肝炎ウイルス」等に血液感染するリスクも高まります。
また、水虫の原因菌となる「白癬菌」は 皮膚に接触することで感染します。
そういった細菌やウイルス感染から「自分を守るため」にグローブの着用は必須になります。
また、細菌やウイルスが付着したまま帰宅し、家族に感染させてしまうリスクもあります。
②利用者本人のため
素手で介助後、手指に菌やウイルスが付着した状態で利用者の衣服や体の他の部位を触ると、触った箇所にも菌やウイルスが付着します。
排泄介助をしたあとに、(手を洗ったとしても)口腔ケア介助をするのはどう考えても不衛生ですし、心象的にも良くありません。
私が利用者なら嫌です。
「では、口腔ケアをしてから排泄介助をすればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、どちらにしても排泄介助の後にズボンを上げる介助をしたり、衣服を整えたり、ベッドやリビングに誘導したり、 色々な場所を触ることになります。
その一連の流れの中で、素手介助は菌やウイルスをまき散らし、感染を拡大させるリスクを高め、利用者本人や他者に不衛生をもたらしています。
③他の利用者のため
素手介助後にいくら手洗いをしても完全ではない以上、 その「不衛生な素手」で他の利用者を介助したり、食事の盛り付けや配膳をすると、他の利用者や周りの人への感染リスクを拡大させることになります。
院内(施設内)感染や食中毒はそういう経緯で発生します。
つまり、「素手で介助をするということは、自分が感染源になっている」ということなのです。
菌やウイルスなど目に見えないものほど恐ろしいものはありません。
一見綺麗に見える手指でも汚染している可能性は十分あり得ます。
グローブも100%完全ではないとは言え、素手介助に比べると汚染のリスクを最小限に抑えてくれます。
ちなみに、余談ですが「目に見えない怖いもの」として他にも
- 恨み
- 憎しみ
- 嫉妬
などがあります。
コストが掛かっても使う枚数を気にしない
介護事業所でのグローブの使用は「1人1手袋」ではありません。
「1介助1手袋」ですから、口腔ケア介助や排泄介助や入浴介助をするたびに、新しい手袋を使用し常に衛生的な状態を保つようにする必要があります。
1人の利用者の介助ごとに何枚もの手袋を使用するとコストが掛かってしまうし、ゴミ箱もすぐにいっぱいになってしまうので「もったいない」と感じてしまう人(特に経営者)もいるかもしれませんが、そんなことを気にしていてはいけません。
自分や利用者を守り、ひいては事業所の信頼や信用を守るのが「使い捨て手袋」なのです。
衛生管理、感染症予防(対策)のために、手袋を使い回したり素手で介助をすることが無いように徹底しましょう。
経費削減の為に「手袋の装着を推奨していなかったり事業所から支給が無い」などという施設があるようですが、完全に間違っていておかしい運営方針だと断言できます。
消費した手袋の枚数だけ衛生的な介助を沢山しているのです。
つまり、手袋にコストを掛けている施設ほど良い施設だと言えます。
手袋介助は「急な場面に対応できない」という問題
介護現場ではいつなんどき、介助が必要になる状況が発生するか予想がつきません。
- 便まみれの利用者が急に現れる
- 血まみれの利用者に遭遇する
そんな場面で
「手袋持ってくるからちょっと待ってて下さい」
などと悠長なことを言っていられないことが多々あります。
そういう時は致し方なく素手で介助してしまう人もいるかもしれません。
「介護現場では急にグローブが必要になることが多々ある」ということを知っておき、急な場面でもいつでもグローブを装着できるように「身近な所に準備しておく」ということも必要になってきます。
最後に
今回は「素手介助は不衛生な上に感染リスクを高めてしまうので、介助するたびにグローブを付け替えることが常識」ということについて記事を書きました。
ちなみにお恥ずかしい話ですが私が新人の頃、利用者が嘔吐した時に看護師が
「グローブ持って来て!」
と指示を出しました。
介護の仕事が初めてで右も左もわからなかった私は「グローブ」と聞いて「野球のグローブ」しか思いつかず
「グローブをチリ取りのように使って吐物を処理するのだろうか」
と本気で思ってしまった経験があります。
介護業界が初めての新人にとっては「グローブ」という用語がわからない人もいるのではないでしょうか(私だけでしょうか)。
介助をする際は、その都度、使い捨てのゴム手袋(グローブ)を使用していくのが常識です。
グローブを経費で支給していなかったり、素手介助の美学を謳う事業所は常識を疑われる時代なのです。