前回は「介護施設のワンオペ夜勤では利用者を起こす順番に暗黙の了解がある」という記事を書きました。
今回は「介護施設のワンオペ夜勤でのパジャマ更衣」について記事を書きたいと思います。
就寝する時はパジャマを着る?
皆さんは普段の生活の中で、就寝する時はどんな格好をされていますか?
- 寝間着(パジャマ)
- スウェットやジャージ
- Tシャツや肌着
など、人によって違ってくると思います。
ちなみに私の場合は特に決めておらず「動きやすい恰好」を基準にして寝ています。
つまり、寝る時に必ず着替える「寝間着やパジャマ」は特になく、夏ならTシャツ1枚だったり、冬はスウェットだったりします。
では、介護施設の利用者は一体どんな格好で寝ているのでしょうか?
介護施設でのパジャマ更衣
介護施設では、基本的に就寝時はパジャマに着替えます。
年配の人ほど「寝る時は寝間着やパジャマに着替えるものだ」という考え方が強いのかもしれません。
寝間着やパジャマの持参がある利用者は「夜、寝るときは着替えさせて下さい」という希望があるものと読み取れます。
持参があっても本人や家族が「別に着替えなくても良い」と言っている場合は別ですが持参がある以上、就寝前にパジャマ更衣をするのが普通の考え方だと思います。
しかし、実際の現場では
- 自立度が高く自分で着替えられる利用者
- 「パジャマ更衣を必ずしたい」という強い希望がある場合
を除きパジャマ更衣が殆ど出来ていないのが現状です。
パジャマ更衣が出来ない理由は?
何故、介護施設では就寝前に殆どパジャマ更衣ができていないのでしょうか。
一言で言ってしまえば「ワンオペ夜勤だから」になります。
つまり「人員の問題」「時間の問題」により、パジャマ更衣をしていられないのです。
利用者に寝てもらう時間帯はまだ二人か三人の職員がいるので更衣してもらうことは可能なのですが、問題は朝の起床介助です。
前回の記事にも書きましたが、「朝食開始時間には全利用者が揃っていて欲しい理由」があります。
そうなると、「起床時に更衣介助をする時間」というのがワンオペ夜勤職員にとってはデメリットやリスクでしかないのです。
①大変な手間
利用者の更衣介助をするのは時間が掛かります。
「仕事なんだから面倒臭がらずにやれよ」
という声も聞こえてきそうですが、介護職員だって人員と時間の余裕さえあればやります。
朝のとても忙しい時間に「更衣介助」が加わった場合どれくらいの時間が必要になるでしょうか。
1人の利用者に5分掛かると
5分×20人=100分(1時間40分)
1人の利用者に3分掛かると
3分×20人=60分(1時間)
という単純計算ができます。
多少、利用者の人数や自立度や更衣介助の技術力によって掛かる時間数は変わってきますが「誤差とは言えない時間」が掛かってしまうのは事実です。
一体、何時から利用者を起こしていけばいいのでしょうか。
これだけの時間があれば、他の利用者の介助をしたり安全確保のために時間を割くことが可能になるため、苦肉の策として「就寝前のパジャマ更衣を省く」という実情があります。
②リスクを増やしてしまう
就寝前にパジャマ更衣をすることで、ワンオペ夜勤者は朝の更衣介助が必要になってきます。
朝は本当に時間的余裕がないので職員が慌ててしまったり、焦ってしまうことでリスクの発生確率が上がります。
- 利用者を急かしてしまう
- 乱雑な介助になってしまう
- 利用者の爪が服やズボンに引っ掛かり怪我をさせてしまう
などのリスクや不適切ケアやヒューマンエラーの発生確率が高くなってしまいます。
他にも居室に籠って介助する時間が増えると
- 他利用者の見守りをする時間が減る
- 他利用者のアクシデント(転倒や転落や異常等)に気づくのが遅れる
などのデメリットもあります。
パジャマ更衣をすることでリスクを増やしていたのでは「本末転倒」です。
現状のワンオペ夜勤では、パジャマ更衣をしない方が「職員も利用者も幸せ」と言っても過言ではありません。
介護職員の名誉のために
散々、パジャマ更衣のリスクやデメリットに言及し、殆どの介護施設や介護職員が更衣をさせていないように書きましたが、介護職員の名誉のために申し添えさせて頂きます。
我々介護職員は
- 可能な限り
- 出来る限り
- 時間の許す限り
パジャマ更衣介助を行っています。
更衣することのメリットも知っているからです。
- その人らしい生活
- 日中と夜間のメリハリをつけた生活
- 皮膚状態の観察、異常の早期発見
- 更衣動作による生活リハビリ
など良いことも沢山あります。
それらが「わかっていても」「やりたくても」できない環境しか用意されていないといった現状もご理解頂きたいと思います。
最後に
今回は「ワンオペ夜勤で暗黙の了解となっているパジャマ更衣」について記事を書きました。
こういった内容について「介護職員や介護施設の質の問題」と斬って捨てる人もいますが、現役介護職員の立場でデメリットやリスクを考えてみると「人員不足や人員配置の問題」だということがわかります。
介護職員の意識や質がどれだけ高くても「人員も時間も不足」していれば、できるものもできません。
利用者の生命に直接関わらないような介助を省き、他の優先度の高い介助に時間を割く選択は「他の利用者を守るため」でもあります。
与えられた環境の中で優先順位を決め、リスクの少ない介護を提供するのが「本当のプロの仕事」ではないでしょうか。