同一の法人(施設)内にデイサービスとショートステイが併設されている事業所もあるかと思います。
両方に共通しているのは、居宅系介護サービスであることと利用開始と終了時に送迎があることです(家族送迎の場合もあり)。
その両者の送迎には大きく違う点があり、
- デイの場合は基本報酬に送迎料金が含まれている
- ショートの場合は加算として送迎料金をもらう
ということです。
つまり、デイ利用者を送迎しない場合は「減算」となり、ショート利用者を送迎しない場合は「加算を算定できない」という違いです。
もちろん、同一法人内であっても「デイとショートは別の事業所」という扱いですから、各々が別個で対応していれば何の問題もないのですが、併設事業所にありがちなのが「デイの利用者もショートの利用者も一緒に送迎をしている」という問題です。
この何が問題なのかと言うと、「(同一法人内であっても)違う事業所のスタッフが違う事業所の利用者の送迎をしているのにショートは送迎加算が取れるのか」及び「違う事業所(デイ)の利用者との混合送迎でもショートは送迎加算が算定できるのか」という点です。
デイとショートが併設している法人の場合、介護サービスの提供時間や職員配置などの理由で送迎に対応しやすいのはデイのスタッフであるため、「ショート利用者の送迎もデイスタッフが行うことが多い」と言えます。
今回は、同一法人で同一の敷地内にデイサービスとショートステイが併設している場合の送迎問題として「ショートの利用者をデイスタッフが送迎(送迎が一緒)していても送迎加算が算定できるのか」ということについて記事を書きたいと思います。
ショートとデイの送迎が一緒でもショートの送迎加算は算定できる?
ショートの利用者の送迎をデイスタッフが行っているのにショートは送迎加算を算定できるのか、ということについて解説していきたいと思います。
ショートが送迎加算を算定できる要件
この場合、もしもショートは送迎加算を算定できないのに算定してしまっている場合は、最悪の場合「介護報酬の不正請求」になってしまいます。
介護保険法にもそこまで細かく規定していないため、他の「通知」や「事務連絡」などを調べていく必要があります。
この送迎問題に言及した厚生労働省からの事務連絡が以下になります。
Q1.短期入所における送迎の実施について、通所サービスの送迎のための乗合形式のバス等を利用する場合は、送迎加算は算定できるか。
A1.短期入所の送迎加算は、利用者の心身の状況等に応じて個別に送迎を実施することを前提としており、事業者が画一的に時刻やルート等を定めてサービスのバス等に乗車させる場合は、算定できない。
ただし、当該事業所の送迎が原則として個別に実施されている場合において、利用者の心身の状況等から問題がなく、たまたま時刻やルートが重なったなどの場合に限り、乗合形式で送迎を行ってもよい。【引用元】事務連絡 介護保険最新情報vol.151 介護報酬に係るQ&A(PDF)
つまり、上記の要件を満たしていれば送迎加算を算定することが可能で、満たしていない場合は算定することができない、ということになります。
結局はグレーゾーン
前述の事務連絡を要約すると、以下になります。
- ショートの送迎加算は利用者の心身の状況等に応じて個別送迎が原則
- 事業者が画一的に時刻やルート等を決めてバス等で送迎する場合は算定できない
- たまたま時刻やルートが重なったなどの場合に限り乗合形式での送迎はしてもよい
「画一的に決めた場合はダメ」で「個別送迎を原則としている場合に、たまたまルートが重なった場合は乗り合いOK」という解釈になりますが、非常にその判断が難しいと感じます。
何故なら、職員配置の都合上そうせざるを得ない状況があり基本的にデイスタッフ(デイ所属のドライバー含む)に送迎をお願いしている実情から見れば「画一的」にも思えますし、状況によってはショートスタッフが個別送迎をすることもある中でどこまでを「原則」と見るのかも不明確です。
もちろん送迎は、当日送迎予定の利用者に対して「同じくらいの時刻」で「ルート的に近い利用者」を班分けして乗り合い送迎が行われますので「たまたまと言えばたまたま」です。
この辺の判断は、各地域の行政や保険者によって異なってくる部分でもあります(ローカルルール)。
ですから、各事業者は事前に都道府県や市町村に相談したり判断を仰いでいるかとは思いますが、結局のところはっきりとしないグレーゾーンであると言えるのではないでしょうか。
最後に
今回は、同一法人で同一敷地内にデイサービスとショートステイが併設している場合の送迎問題として「ショートの利用者をデイスタッフが送迎(送迎が一緒)していても送迎加算が算定できるのか」ということについて記事を書きました。
デイとの乗り合いをしている場合にショートが送迎加算を算定できるかできないかは厚労省から事務連絡が出ているものの、幅広い解釈ができてしまうため最終的には各地域の行政や保険者の判断になろうかと思います。
ひょっとしたら、確認をしないままデイとショートの乗り合い送迎をして送迎加算を算定している事業所もあるかもしれません。
それも一種のグレーゾーンですが、アウトにならないように注意したいものです。