リアル介護現場の実情

バルンカテーテル留置の利用者は「トイレ誘導を減らせるから楽」はあり得ない実情

投稿日:2020年5月23日 更新日:

 

利用者の中には、バルンカテーテル(尿道カテーテル)を留置されている人もいます。

それは、何らかの理由で排尿しづらかったり排尿が無い場合に持続的、且つ、安全に尿を排出するための処置になります。

しかし、Twitterで「とある特養では8割以上の利用者がバルンカテーテルを挿入されている」「その理由はトイレ誘導を減らすため」という情報発信を目にして驚愕してしまいました。

俄かには信じられない話だからです。

何が信じられないかと言えば、

  • トイレ誘導を減らす目的でバルンカテーテルを留置しているのは誰が得をするのだろう
  • そもそも、バルンカテーテルを留置している場合は介護負担は減るどころか増えるのにおかしい

という違和感があるからです。

つまり、本当に介護現場を知っている人であれば、「バルンカテーテルを留置していることのリスクやデメリットを重々承知のはず」なのですが、それを「トイレ誘導を減らすため」という理由づけだけでやってしまっているとすれば眉唾ものです。

もっと言えば、「本当にそんな介護施設があるのか」「そんな事実が本当にあるのか」さえ疑わしく感じてしまいますが、バルーンカテーテルを入れている利用者は「トイレ誘導を減らせるから楽」はあり得ない実情について記事を書きたいと思います。

 

 

 

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バルーンカテーテル留置の利用者は「トイレ誘導を減らせるから楽」はあり得ない実情

 

 

バルンカテーテルを入れている利用者は、確かに定時・随時のトイレ誘導が不要なように思いますが、実は一概にそうとも言い切れませんし、余計に介護負担が増えてしまうことも多々あります。

「トイレ誘導を減らせるから楽」ということはあり得ない実情を以下で詳しく解説していきたいと思います。

 

トイレの訴えがあることも多々ある

バルンカテーテルを入れているからと言って「尿意がない」わけではありません。

もちろん、排尿はカテーテルに中を流れていきバルンパックに入るのですが、それでも尿意を感じて「トイレに行きたい」という訴えをする利用者もいます。

この場合、介護職員としては、

「バルンの中に入っていきますから大丈夫ですよ」

「トイレに行かなくてもちゃんとバルンに出ていきますよ」

などと説明をするのですが、

「私(ワシ)がトイレに行きたいって言っているんだから早く連れて行ってくれ!」

と納得しない利用者もいます。

それは、わがままでも何でもなく本当に本人がそう感じているのですから、バルンカテーテルを留置されている人であってもトイレ誘導をして納得して貰う必要があります。

また、上手く説明できないだけで、「排尿ではなく大便がしたいからトイレに行きたいと訴えている」という場合も往々にしてあり得ます。

そういう場合は、「トイレ誘導を減らす」ということにもならないため、むやみやたらにバルンカテーテルを入れることのメリットは少ない(又は全くない)と言えます。

ですから、「トイレ誘導を減らすために多くの利用者にバルンカテーテルを入れている」という理由付けは眉唾物なのです。

 

そもそも不必要なカテーテルの挿入は虐待の疑いあり

バルンカテーテルの挿入は医療的な処置ですから、医療的な根拠や治療の目的も本人のニーズもないまま闇雲に「トイレ誘導を減らすため」という理由だけで留置することは「一種の虐待」と言っても過言ではありません。

「虐待の疑いがあるからやってはいけない」という当たり前のことを言う以前に、もし表沙汰になれば施設運営や経営の信用は失墜し大きなダメージを食らい、最悪の場合「指定の取消」にもなりかねません。

ですから、本来であれば「外部に漏れて欲しくない実情」のはずです。

個人的に違和感を感じるのは、「いともたやすくそういう実情を外部に漏らしてしまう施設トップ」がいるという事実です。

そんな人が本当にいるのでしょうか。

Twitterでの情報発信者が嘘をついていないとすれば本当に存在することになりますが、この点については違和感しか感じません。

 

バルンカテーテルのリスクやデメリット

バルンカテーテルを留置していれば「トイレ誘導を減らせる」という理由づけでしたが、そのメリットを打ち消してしまうほどのリスクとデメリットが存在します。

 

デメリット①:尿量や尿の状態の確認と破棄

当たり前のことですが、バルンカテーテルを入れている利用者のパックには尿が溜まっていくため、尿量や尿の状態(色や浮遊物の有無など)を確認して、定時又は随時破棄しなければなりません。

尿を破棄するのに、他の利用者などがいるリビングで行うことは誰がどう考えても不適切ですから、本人の居室に誘導したりトイレに誘導することになります。

結局は、居室やトイレに誘導せねばならず、更には、パック内の破棄した尿量の確認や記録が必要になるため、バルンカテーテルを入れていない利用者と比べても介護負担が軽くなるどころか重くなることになります。

 

デメリット②:尿路感染症などのリスクが高まる

バルンカテーテルを入れている利用者は、尿路感染症などのリスクが高くなります。

排尿が1滴残らずパックの中に流入していけば良いですが、尿道から尿漏れすることで不衛生になりやすく、また、カテーテル内の尿が逆流するなどの要因も感染症のリスクになるのです。

不衛生な状態にならないようにするためには、尿が逆流しないよう細心の注意を払い、適宜陰部や臀部の確認や清拭をする必要があります。

これも、他の利用者がいるリビングでは行えませんので、居室やトイレに誘導することになりますが、そうなると「トイレ誘導を減らす」という理由付けが明らかにおかしいということに気づきます。

 

デメリット③:バルンが抜けたり自己抜去してしまうリスク

バルンカテーテルを留置していると、必ずつきまとうのが「バルンが抜けてしまったり自己抜去してしまうリスク」です。

何度も挿入することで尿道が緩くなってしまい抜けやすくなるパターンもありますし、認知症などがある利用者の場合は自分で引っこ抜いてしまう(自己抜去)というリスクがあります。

もしそうなってしまった場合は、特養であれば看護師が再度挿入することになりますが、看護師の技術と経験の有無によっては上手く挿入できない場合もありますし、看護師の居ない時間帯(夜間など)であれば介護士では成す術がありません。

不自然な形で抜けてしまったり、自分で無理やり引っこ抜くのですから、尿道を痛めてしまったり出血がある場合もあります。

そんなリスクを冒してまで、「トイレ誘導を減らせるから」という不可解な理由だけでバルンカテーテルを挿入することはあり得ないのではないでしょうか。

 

デメリット④:下衣類の着脱に手間が掛かる

カテーテルを上向きにすると、尿が逆流してしまい尿路感染症などの原因になることは前述しましたが、つまり、「カテーテルは下向き(尿パックは膀胱より下)になっていなければならない」のです。

カテーテルを下向きにしているということは、カテーテルをズボンなどの下衣類の左右どちらかを通して裾から出しているわけです。

この状態でのズボンの着脱はなかなかテクニックが必要です。

まずは、「カテーテルが右から出ているのか左から出ているのか」という確認も必要ですし、不衛生にならないようにパックを床や地面につけないように介助をしなければなりません。

バルンカテーテルが入っていない利用者と比べて時間も手間も掛かってしまいます。

カテーテルを引っかけてしまったり少し力を入れて引っ張ってしまうと抜けてしまうリスクもあり得ます。

そんなデメリットがあるのに「トイレ誘導を減らせるから」という単細胞な理由だけでバルンカテーテルを挿入することはあり得ないのではないでしょうか。

 

デメリット⑤:ベッド上や移動時には細心の注意が必要

バルンカテーテルを入れている利用者がベッドで過ごす際は、ベッド柵などにパックを引っかけておくのですが、利用者自身がそれを忘れて大きな寝返りをうったり、ベッドから起き上がり動き出してしまうとベッド柵に掛けたパックと尿道のバルンがカテーテルで繋がっているため引っ張られてしまい抜けてしまうリスクがあります。

また、移動する際もシルバーカーや歩行器や車イスの適切な位置に引っ掛けて適度な距離感を保つ必要があります。

前述したようにバルンカテーテルが抜けてしまうと色々大変なのです。

ですから、利用者自身でもバルンカテーテルを入れていることをしっかり理解していて、取り扱いにも注意できる人でなければ、居室で過ごしている時でさえリスクが高くなってしまいます。

しかし、特養では認知症がある利用者が大半でしょうから、バルンカテーテルを入れている利用者ばかりだとベッド上や移動時にバルンが抜けてしまうだけでなく、その反動で転倒してしまうなどのリスクも事故も多発することとなり、デメリットが多いのではないでしょうか。

 

 

 

最後に

 

今回は、バルーンカテーテルを入れている利用者は「トイレ誘導を減らせるから楽」ということはあり得ない実情について記事を書きました。

本当にそんな介護施設(特養)があるとは俄かには信じられない話ですが、どう考えても「誰が得なのかよくわからない」状況です。

バルンカテーテルの管理や取り扱いを考慮すれば、利用者にも介護職員にもメリットどころかデメリットの方が多くなります。

経営者にとってメリットがあるとすれば「尿取りパッドの使用枚数を削減できる」ということなのでしょうか。

尿取りパッド削減のために、誰も得をしないばかりか虐待まがいのことをしてしまうのも割に合わない気がしますが、違和感と首を傾げてしまうことだらけだったのでシェアしたいと思います。

介護業界に存在するサイコパス職員の5つの特徴

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