介護の基礎知識

脱健着患(だっけんちゃっかん)とは?片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助のコツ

投稿日:2020年3月24日 更新日:

 

既に介護現場で働かれている人はご存知でしょうが、片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助をする際は「脱健着患(だっけんちゃっかん)」が基本になります。

「だっけんちゃっかん」は馴染みにくい言葉なので文字だけで頭に入れようとすると「ちゃっけんだっかん?」「だっかんちゃっけん?」などと間違えてしまったりこんがらがってしまうこともあるかもしれません(着患脱健(ちゃっかんだっけん)であれば意味としては間違いではありませんが文字変換で出てこないので言葉としてはポピュラーではないようです)。

しかし、「衣服を脱ぐ時は動きやすい方(健側)から脱いで、着る時は動きにくい方(患側)から着る」という理屈がわかっていれば、「脱健着患(だっけんちゃっかん)」が導きだせますし、仮に「脱健着患」という言葉を忘れてしまったり知らなかったとしても介護職員は基礎的な介護技術として日々「脱健着患の介助」を行っています。

今回は、そんな脱健着患について片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助のコツについて記事を書きたいと思います。

 

 

 

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片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助は脱健着患

 

 

介護現場では衣服やズボンの更衣をする機会が多くあります。

例えば、

  • 食事をこぼして汚れた時
  • 排泄の失敗や下剤服用時の多量の水様便で汚れた時
  • 入浴時
  • 就寝時や起床時

などになります。

利用者自身で更衣ができる場合はいいですが、多くの場合は着脱の介助が必要です。

特に四肢に麻痺や拘縮がある利用者の場合は慣れていないと手こずったり利用者に怪我をさせてしまう可能性もあります。

以下で脱健着患について片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助のコツをご紹介したいと思います。

 

脱健着患とは

冒頭でも触れましたが、脱健着患とは片麻痺などがある利用者の着脱介助をする際の基本で「衣服を脱ぐ時は健側(動かしやすい方)から脱いで、着る時は患側(動かしにくい方)から着る」という原則のことです。

これは、服だけでなくズボンの着脱介助の場合もほぼ同様となります。

実際にやってみるとわかりますが、脱ぐ時に先に動かしやすい側から脱ぐことで麻痺側をそんなに動かさなくても服を脱ぐことが可能になります。

要は、服は片方の袖さえ脱げればもう片方は簡単に脱げるので、最初に脱ぐ袖は動かしやすい側から脱げば介助者にも利用者にも負担が少ないのです。

また、着る時は逆に麻痺側から先に袖を通すことで麻痺側をそんなに動かさなくても袖を通すことができ、もう片方の袖を通すためには動かしやすい側を後に通すことでお互いの負担も少なくて済みます。

 

片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助の3つのコツ

片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱方法の大原則が「脱健着患」であることはわかりましたが、介護初心者が実際にやってみるとなかなか上手くいかないものです。

初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などで実技講習を受けた時と実際の介護現場は全くと言っていいほど違います。

何故なら、実際の介護現場では座位が保てない利用者や介助拒否をする利用者が多く、研修で利用者役をやってくれたモデルのように意思疎通が取れて、しっかり地面に足をつけてベッドや椅子に端座位で座ってくれたり、時には協力動作までしてくれることはあまりないからです。

また、特にユニットケアでは「その人らしさ(自分らしさ)」や「尊厳の保持」という方針から、利用者の衣服は「着脱しやすい伸縮性のあるゆったりとした前開きの服ばかりではない」という現実もあります(「本人らしさ」を選ぶのか「本人の負担軽減」を選ぶのかというニーズの擦り合わせは行っていく必要がありますが)。

時として、サイズがキチキチの前開きではないかぶりの服やデニム生地のような全然伸縮性のない生地の服の場合もあります。

以下に着脱介助の3つのコツをご紹介します。

 

コツ①:関節に注意してしっかり支える

着脱介助をする際は利用者の腕や足の関節に注意してしっかりと支えましょう。

麻痺側の関節であれば、力が入らずにダランとなっていることもありますし、拘縮などで可動域が狭くなっていることもあります。

ですから、無理に引っ張ったり動かしたりせずにしっかりと支えながら介助をすることが大切です。

無理に動かすと骨にヒビが入ったり骨折したり脱臼したり筋を痛めてしまいかねませんので注意が必要です。

 

コツ②:かぶりの服を脱ぐ時は健側の裾を肩までたくし上げる

かぶりの服は前開きの服よりも着脱介助に手間取りがちです。

利用者と意思疎通が図れたり協力動作があればいいですが、意思疎通も図れず協力動作もない利用者の場合、初心者の頃は特に脱ぐ時にどうしても最初の健側の袖が脱げず手こずってしまうことがあります。

この時の脱衣介助のコツは、まず健側の後ろの裾をたくし上げて健側の肩を露出させることです。

その状態で肘を後ろに引くとスムーズに腕が袖から抜けます。

伸縮性の無い生地だと肩を露出させるほどたくし上げるのが難しい場合もありますが、「袖は肘から抜く」という感覚で脱衣介助をしましょう。

 

コツ③:着る時は迎え袖をする

着衣介助をする際は「迎え袖」をするのがコツです。

迎え袖をすることで袖を通しやすくなりますし、利用者の爪や指などが生地や縫い目などに引っ掛かって怪我をするのを防ぐことができます。

ズボンの場合も同様に迎え手で介助を行います。

 

着脱介助の留意点

着脱介助をする際の留意点もご紹介しておきます。

 

自分でできる部分は自分でやってもらう

「麻痺があるから」「利用者だから」という理由で全て介助を行うのではなく、利用者の残存能力を活かして自分でできることは自分でやってもらうことが大切です。

しかし、それがわかっていても「待つ介護をやっている時間がない」「時間を掛けれるほど人員がいない(ワンオペ夜勤等)」という状況があるのも事実です。

「職員の都合で残存能力を奪ってはいけない」「わかっているのにやってしまう職員はダメな職員」と決めつけてしまう前に、「介護職員にそう思わせてしまう環境になっているのではないか」というところに目を向けて考えていくことが先決です。

 

寝た状態で介助する際は麻痺側を下にしない

更衣介助はいつも座った状態や立てる状況であるとは限らず、利用者がベッドなどに寝た状態で行うことも多々あります。

寝ている状態なので背中がベッドについているため、着脱介助をする際は身体を左右の側臥位(横を向いて寝ている体位)になってもらう必要があります。

この際に注意しておかなければならないのは、「健側の側臥位はしっかり角度をつけて、麻痺側の側臥位は患部が下にならないようにあまり角度をつけずにやや傾けて行う」ということです。

麻痺側が下にならないようにする理由としては、圧迫されることで痛みや痺れを強く感じたり、逆に痛みを感じないため患側が不自然な形で圧迫されて痛めてしまうなどを避けるためです(血液の循環が悪くなっているため長時間圧迫を続けると褥瘡(床ずれ)の発生要因にもなります)。

褥瘡(じょくそう)は介護職の恥?

 

 

 

最後に

 

今回は、初心者向けの内容になりましたが脱健着患について片麻痺がある利用者の衣服やズボンの着脱介助のコツについてご紹介しました。

私自身も初心者の頃は手間取ってしまったり時間が掛かっていましたが、数をこなしていくうちに慣れてきました。

一番良くないのは、焦って雑になってしまったり手順や基本を無視して自分と利用者ともに負担が大きくなってしまうことです。

更衣介助に限らずですが、介護現場では自分と利用者のためにも「安全第一」で、初心を忘れないように心掛けていきたいところです。

初心者の介護職員やこれから介護の仕事を始めようとしている人のご参考になれば幸いです。

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