2019年度分の必要な介護保険料に対して200億円もの徴収ミスがあり、厚生労働省もその影響を認識せずに約2か月間に渡って放置していた、というニュースが流れてきました。
ミスがあったのは、40歳以上の会社員が納める必要がある介護保険料で、計算する際に資料の取り違えをしたという単純なミスによるものです。
今回は、介護保険料の徴収ミス200億円とそれを約2か月放置した厚労省について、現役介護士として思うところを記事に書きたいと思います。
ニュース概要
外郭団体資料取り違え、厚労省も放置 介護保険料ミス200億円
平成31年度分の介護保険料で約200億円の徴収不足の恐れがある問題で、厚生労働省は22日、計算ミスをした外郭団体の「資料の取り違え」が原因であることを明らかにし、再発防止策を公表した。報告を受けた厚労省側が影響を認識せず約2カ月放置していたことも判明。組織として情報共有しなかったことも影響の拡大を招いたという。
【引用元】産経新聞
https://www.sankei.com/life/news/190422/lif1904220031-n1.html
介護保険料の徴収代行をしている外郭団体が、介護保険料の算出をする際に資料を取り違えて計算をしてしまったことが原因のようです。
現役介護士が感じた5つのこと
現役介護士である私が、このニュースを読んで思ったことを書いていきたいと思います。
①不祥事が続きすぎ
記憶にあるだけでも、「勤労統計の不正」「薬事工業生産動態統計ミス」「厚労省課長が韓国空港で職員に暴行」「鳥取県と島根県の数値を取り違えて資料公表」「年金個人情報流出」などがあります。
もしこれが一般の企業だったら、「存続の危機」とも言える不祥事の連続ですが、厚労省は国が運営しているので無くなることはありません。
しかも今回は「200億円」にものぼる大金です。
どんな大企業でもそれだけの損失を出せば倒産必至でしょうが、介護保険料の大半は「国民から搾り取った税金」であるために痛くも痒くもないようです。
国民感情として「不信感」を抱いてしまうのは当然です。
②謝罪して再発防止策を出して終わり
毎度お決まりのパターンですが、謝罪をして再発防止策を出して終わりです。
人間なのでミスをしてしまうのは仕方のないことですが、200億円のミスは「はい、次は気をつけてね」では終わらないレベルではないでしょうか。
我々介護職員だってミスもすれば失敗もしますが、人の命に関わっているために、一歩間違えれば犯罪者になってしまいます。
准看護師が見守りを怠ったがために発生してしまった「おやつを喉に詰めて亡くなった利用者の事件」然りです。
人の命は尊いものですから、天秤にかけることは適切ではないかもしれませんが、だからと言って「200億円という税金」が尊くないはずはありません。
謝罪と再発防止策だけで終わりになってしまうとすれば「職業に貴賤あり」ということを雄弁に物語っていることになります。
国民感情として「嫌悪感」を抱いてしまうのは当然です。
③ミスを放置するミス
ミスはミスで仕方がないにしても、厚労省は外郭団体からその報告を受けたにも関わらず、情報を共有せず約2か月に渡り「放置」していました。
その結果が今回の根深い闇の部分ではないでしょうか。
ミスに更なるミスを重ねてしまったのです。
介護現場でもミスが発生した場合、そのミスを「どの段階で気づけるか」ということがとても重要になってきます。
早い段階で気づければ、修正したりそれ以上のリスクを回避できたりします。
厚労省では、こうした「気づき」や「情報の共有体制」が活かされていないことになります。
そんな機関に監督されている介護現場の一職員としては「情けない気持ち」と「どの面を下げて監督しているんだろう」という思いでいっぱいです。
そんな職場環境では、いくら再発防止策を打ち立てても「その再発防止策が共有されない」可能性が十分にあり得ます。
④益々介護保険の財源が枯渇していく
計算ミスによる徴収不足は「猶予制度の利用」もできるが、「健保組合が準備金を取り崩す」などして納付するよう求めているということです。
「200億円の不足」と言っても、我々国民からしてみれば、介護保険料の納付義務がある国民全体で、「本来支払うべき保険料が200億円少なかった」わけですから、言い方を替えれば「少ない納付金額で済んだ」ということになります。
しかし、結局はどこかでしわ寄せをしてくるのが世の常ではないでしょうか。
そもそも「準備金」というのは、介護保険での余剰金をプールしておく「貯金」のようなものです。
その貯金の大半は結局は我々国民から徴収した税金であり介護保険料です。
その準備金から補填するとなると、益々介護保険の財源が枯渇していきます。
財源が枯渇してしまうと破綻してしまうので、そうならないように今後税率を上げたり、40歳より若年者からも徴収していくような制度に変更される可能性があります。
そうならないように、介護サービスの利用を制限したり、利用できる単位数の上限を下げてきたり、次回の介護保険報酬改定でマイナス改定をしてくる可能性も十分にあり得ます。
どちらにしても、どうにでもできる権限を持っているのが国なので、結局はそのしわ寄せが利用者、高齢者、労働者、介護職員などの国民に来るのは必至でしょう。
ミスにミスを重ねた挙句、謝罪だけしておいて、結局は国民にしわ寄せされたのでは「本当意味がわからない」と感じてしまうのは当然です。
⑤「まだ何かあるんじゃないの?」
これだけ不祥事が続き、謝罪だけして何事もなかったかのように通り過ぎて、ちょっとするとまた何か発生します。
この繰り返しの中で勘ぐってしまうのは「まだ何か隠しているんじゃないの?」「また何か発生するんじゃないの?」ということです。
そして、もし何か発生しても「また謝罪して終わりなんじゃないの?」という「戦々恐々」としつつも「不毛」な気持ちです。
自浄作用が無い組織に、国民は何を期待すれば良いのでしょうか。
求めているのは謝罪ではなく実行なのです。
最後に
今回は、厚労省が約2か月も放置した介護保険料の徴収ミス200億円について、現役介護士として感じたことを5つご紹介しました。
ミスはあり得るものですが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ような処理の仕方では意味がありませんし、介護現場を監督する行政機関として示しがつきません。
また、ミスをミスで上塗りするような組織は信用ができませんし、差額を改めて追徴されるようなことにならないことを願いたいと思います。
仮に一人頭数百円~千円程度の追徴だとしても、200億円を疎かにするような所には1円だって支払いたくないですし、ミスのしわ寄せを国民に持ってくるのも筋違いです。
たった千円でも稼ぐのは大変なのです。
以上、介護サービスを提供しながら介護保険料を支払っている介護職員のひとりごとでした。