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厚労省が有料老人ホームの新設支援で介護離職ゼロを目指す?箱を増やしても介護職員が確保できるのか

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社会問題のひとつとして「介護離職」があり、政府は「介護離職ゼロ」のスローガンを掲げています。

一見、介護職員の離職をゼロにする内容かと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、介護離職とは介護職員の離職のことではなく親などの介護で仕事を辞めなくてはならない状態のことを指します。

つまり、親などの介護で仕事を辞めざるを得ない状況をゼロにするというのが「介護離職ゼロ」なのです。

2019年の調査では、特別養護老人ホーム(以下、特養)の待機者は29万人にのぼっているというデータがあります(入所申し込みが重複している等で不確かな数字であるという指摘もありますが)。

要は、それだけ多くの人が特養に入所したくても入所できないため、半強制的に在宅介護を継続しなくてはならず、ひいてはそれが介護者(家族)の介護離職に繋がっているのが「介護離職問題」なのです。

先日見たニュースで、厚生労働省(以下、厚労省)が「介護離職ゼロ」を目指すために特養の受け皿となる有料老人ホームの新設を支援していく方針であるという内容のものがありました。

詳細は、日本経済新聞の下記報道をご参照下さい。

有料老人ホーム 新設支援 厚労省、介護離職ゼロへ受け皿(リンク先:日本経済新聞)

このニュースを読んだ時に、いくつかの違和感を感じた人も多いのではないでしょうか。

そのひとつが、「そもそも現状で介護職員が不足しているのに箱(建物)を増やしキャパシティを拡げるだけでは何の解決もしないどころか運営不能になる事業所を増やすだけになるのでは?」という違和感です。

もっと言えば、「現状で働き手(介護職員)がいないために倒産や閉鎖している介護事業所が増えている中で、同じ轍(てつ)を踏ませるような方針の意味がよくわからない」ということになります。

以下で詳しく書いていきたいと思います。

 

 

 

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有料老人ホームの新設支援よりも介護職員を確保するのが先

 

 

介護離職をゼロに近づけるために、入所系の介護施設を増やしていくのは一見、理に適っているように見えます。

しかし、箱(建物)を新設しキャパシティを増やしても、そこで働く介護職員を確保できなければ運営不能になるどころか運営を開始することさえできない可能性もあります。

何故そういった懸念を抱いてしまうかと言えば、「現状の箱(介護事業所)で既に介護職員が足りていないから」にほかなりません。

現状で足りていないのに、新設した事業所には充足される可能性は明らかに低いのではないでしょうか。

これは、介護職員の「絶対数」や「分母」の問題です。

絶対数が足りず分母が小さいままキャパシティだけを増やしていけば、人材の獲得競争も激しくなっていくばかりか、獲得競争に負けた事業所は倒産や閉鎖をすることになり「こっちを立てればあっちが立たず」状態になってしまいます。

ですから、まずは介護職員を確保していくことが先決なのです。

 

介護職としては選択の幅が広がる?

介護職員の人材確保や離職対策もなされぬまま、働く場所(箱)が増えていけば、「転職天国」「働く事業所を選び放題」になることが予想されます。

介護職員としてはありがたい話のように思えますが、低い水準(又は似たり寄ったりの水準)で働く場所が増えてもメリットが大きいとは言いにくいのではないでしょうか。

そもそもの待遇や処遇が上がっていかないと、業界内で渡り鳥のように飛んでばかりではそのうち止まり木さえ見つからなくなってしまうかもしれません。

事業所が増えることで選択の幅が広がる反面、むやみに転職カードを切っていき自分で自分の首を絞める結果にならないようにしたいものです。

要は「事業所の量より質」をしっかりと見極めることが大切なのです。

 

現状で倒産件数が過去最多なのに新設支援

東京商工リサーチの調べで、2019年の介護事業所の倒産件数は訪問介護事業を筆頭に過去最多となっています。

有料老人ホームは、訪問介護事業、通所介護・短期入所介護事業に次ぐ多さです(下記図表参照)。

【出典】東京商工リサーチ https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200107_01.html

「倒産していく事業所が沢山あるのに厚労省(国)は新設を支援」という内容に違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか。

事業所を新設するコストや手間などを考えれば、新設を支援するよりも既存の事業所が倒産しないように支援する方がお互いのためでもあり、時間的に考えても「介護離職ゼロを早期に実現させるため」に効率的であるように感じます。

ここから読み取れるのは、「新設は支援するけど人材不足や経営難は支援しないよ」というスタンスです。

もっと言えば、「梯子をかけてあげるけど、その梯子をはずすかもしれないよ」という印象さえ受けます。

介護事業で今最も重要なのは「介護職員などの人材を確保すること」のはずですが、要は、新設した有料老人ホームも倒産していった有料老人ホームと同じ轍を踏ませるだけのものでしかないという無意味さと不健全さがあるような気がしてならないのです。

自滅する介護施設(事業所)にありがちな5つの特徴「ボーナスカットは経営難を示唆」

 

「施設から在宅へ」ではなかったのか

そもそも、現状での国の介護事業の方針は「施設から在宅へ」というものでした。

施設入所者を減らして在宅復帰を推進したり、在宅介護でのサービスを充実させて介護負担を軽減しようというもののはずだったのに、「特養の入所待ちが多すぎるからやっぱりその受け皿となる老人ホームを作ろう」という方針に急にシフトされれば関係者はズッコケてしまいます。

いや、皆が「在宅介護では限界があること」は薄々わかっていたのです。

それでも、国がそういう方針を示すものだから必死でやってきたわけです。

しかし、「やっぱり無理があった」とわかると急な方向転換で入所系施設を増やそうとしてしまうこの矛盾と手のひら返しには呆れてしまいます。

そもそも、特養の入所条件を要介護3以上としたのも国の方針ですし、その方針によって特養の入所受け入れがスムーズにいかなくなったことも事実です。

もっと言えば、特養でも空所があるのに受け入れを制限している事業所もあります。

介護職員が不足しているために空所があっても受け入れができないのです。

そんな状況で「特養の入所待ちが多すぎるから有料老人ホームを新設しよう」というのは本末転倒ではないでしょうか。

特養の介護職員が充足されればそのキャパシティを活用できるのに、そこには目を向けないまま関係者はただただ国の方針に振り回され翻弄されているに過ぎません。

まずは、介護職員を確保していくことが何よりも優先されるのです。

【介護保険制度破綻①】特養の入所を要介護3以上に制限したことで「ねじれた介護現場」

 

 

 

最後に

 

今回は、厚労省が有料老人ホームの新設支援をして介護離職ゼロを目指す方針について記事を書きました。

久しく介護職員の人材不足が叫ばれてきましたが、実はその本番はこれから訪れるのかもしれません。

「介護が必要な高齢者の増加」「介護事業所のキャパシティの増加」「介護離職の前に介護職員の離職には(本気で)目を向けない体制」という状況を考えれば、介護職員の獲得競争が激化することは誰の目にも明らかです。

但し、そうなったからと言って介護職員の待遇や処遇が良くなるかどうかは未知数であるところが気掛かりです。

【2025年問題】介護職員は今より「幸せ」になれるか?

 

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