多くの介護現場では人員不足です。
東京商工リサーチが公表している2019年の「老人福祉・介護事業の倒産件数」でも、資金繰りや人員不足での経営難によって零細の訪問介護事業を筆頭に介護施設(有料老人ホーム等)の倒産件数も過去最多となっています。
最近では、倒産しにくいと言われていた特別養護老人ホーム(特養)の閉鎖や破綻も目につくようになってきました。
「明日は我が身」と感じている介護事業所経営者も少なくはないのではないでしょうか。
今回は、私が見聞きしてきた中で「明らかに自滅しているなぁ」と感じる介護施設(事業所)の5つの特徴について記事を書きたいと思います。
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自滅する介護施設(事業所)にありがちな5つの特徴
「自滅」とは、自らの行動などが原因となって自分で自分の首を絞めて滅んでいくことを指します。
要は「墓穴を掘る」ということです。
どんな墓穴なのか5つご紹介していきます。
①ボーナスをカットする
ただでさえ少ない介護職員の収入に手をつけることは、明らかに墓穴を掘っていることになります。
基本給を減らすことはなかなかできないため、カットするとしたらボーナスです。
もちろん、急にボーナス0円にすることはないにしても、昨年まで年間4か月分のボーナスが支給されていたところを今年から3.8ヶ月分にするなど、微妙なラインで攻めてきますが減少していることには変わりありません。
たった0.2ヶ月分のカットでも、1人当たり数万円も減少しますし全従業員から浮くお金は数百万円になります。
確かに、ボーナスをいくら支給するかは法人や事業所に委ねられているとは言え、カットするハッキリとした説明が末端の職員まで周知されていない場合は相当反感を買うでしょう。
このご時世に介護職員の収入を減らす行為は自滅行為です。
そもそも、ボーナスカットの最大の理由は「資金繰りが赤字」なのでしょうから、経営難を示唆しています。
一度こういうことをされた職員は「来年もカットされるかもしれない」という戦々恐々とした気持ちとなり、安心して働くことができないのは当然のことです。
遅かれ早かれ坂道を転がり落ちていくことは必至です。
②頻繁に異動(ユニット編成)が行われる
ユニット編成という名の異動が頻繁に行われる介護施設は自滅への道を突き進んでいます。
異動はあり得るものだとしても、それが3か月に1回行われるなど、あまりにも頻度が高い場合は介護職員にも利用者にも負担が掛かります。
そもそも、異動が頻繁に行われる理由が、
- 退職者が続出しているため異動で調整せざるを得ない
- 中堅職員やリーダー級の介護職員が退職しているためユニット職員を再編成せざるを得ない
- 頻繁に異動になることが大きな負担となり退職する職員が後を絶たない
という「異動が異動を呼ぶ悪循環」である場合が多々あります。
「なじみの関係」が推奨されているユニットケアを謳いながら異動が頻繁に行われる介護施設の矛盾とダブルスタンダードを冷静に判断すれば「良い施設ではない」という基準になるのではないでしょうか。
③ハラスメントが許される環境
未だに職場内でパワハラやセクハラがあったり、仮に問題になってもそれが許されてしまう環境の介護事業所は自滅しています。
そんな事業所は十中八九、利用者からのハラスメントも野放し状態であり、介護職員は四面楚歌、八方ふさがりで泣き寝入りの日々です。
ハラスメントの窓口となる人物自体がハラスメントの権化であるという場合は遠回しに「相談に来ても無駄」と言っている隠蔽体質で排他的なムラ社会の事業所であり、遅かれ早かれ何かのバグが発生することでしょう。
④無能なのに事業規模を拡大する
明らかに経営手腕がないのに、事業規模を拡大する姿は狂っているとしか思えません。
もちろん、経営は投資をしていくことで事業を拡大していくのがスタンダードな方法ですが、一番大切な「働く人」には目もくれず箱(建物)だけ建てていく姿は首を傾げてしまいます。
例えば、
- 地域包括支援センター
- 居宅介護支援事業所
- 軽費老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
などを次々と開設していき、建設費用を派手に使った結果、働き手も利用者も入居者も集まらず赤字を出してしまえば無能以外の何者でもありません。
それだけなら「勝手にどうぞ」と思えるのですが、その赤字によって職員のボーナスカットにまで及ぶことになれば働いている側としてはバカバカしくてやっていられないことでしょう。
介護職員は経営者の無能さと法人の赤字を補填するために働いているのではありません。
自滅するのは勝手ですが、職員まで道連れにするような経営者からは早く逃げ出した方が良いでしょう。
⑤親の遺産を食い潰しているだけ
自分の力で成り上がったのならまだしも、ただの同族経営で親の威光を借り遺産を食い潰しているだけの経営者は自滅へ突き進んでいます。
同族経営そのものが悪いのではなく、何の苦労も知らず自分で稼いだお金でもなく明らかに経営者としての資質がないのにトップに立ってしまっていることが問題なのです。
食い潰してきた補填をボーナスカットなどで職員たちにしわ寄せしているのだとすれば行く末は見えています。
そんな介護事業所は泥船です。
介護主任やユニットリーダーなど、「頑張ってきた職員が我先にと辞めていく」ことでしょう。
最後に
今回は、自滅する介護施設(事業所)にありがちな5つの特徴をご紹介しました。
統計を取ったわけではありませんが、当たらずとも遠からずの内容ではないでしょうか。
特にボーナスカットに関しては、大手企業のボーナス支給額が2年連続で最高額を達成しているというニュースも流れていた中で、増えるどころか減ってしまえばモチベーションも保てなくなってしまいます。
一生懸命頑張っている従業員に迷惑を掛けるような介護事業所は、経営状態を立て直すことが益々困難になる自滅行為をしていることに気づけない残念な事業所です。
自滅するのは勝手ですが、従業員を道づれにしようとするような介護事業所からは早々に逃げ出す必要がありそうです。