「キラキラ系介護士」とはなんなのか、どういう介護士のことを指すのかは、以前の記事で書きました。
同僚や後輩や部下にとっては敬遠をされがちな存在となるのですが、その反面、上司や業界の人達にとっては歓迎される対極的な存在です。
そして残念なことに、介護現場を知らない世間一般の人達にも「キラキラ系介護士は良い職員」に見えてしまうという事実があります。
何故、「実際の現場で働いている職員が持つ印象」と「実際の現場を知らない人が持つ印象」に乖離ができてしまうのでしょうか。
今回は「実際の介護現場を知らない人にはキラキラ系介護士が良い職員に見えてしまう謎」について記事を書きたいと思います。
キラキラ系やなんちゃらプロジェクトとかは、基準を世間や社会などの「外部」に置いている。
ネガティブと言われる情報発信をする人は、基準を事業所内や介護職そのものの「内部」に置いている。
同じ介護でも「外部」と「内部」では交わることはないし似て非なるもの。— 介護職員A@介護福祉士ブロガー (@kaigosyokuinA) May 15, 2019
介護現場を知らない人にはキラキラ系介護士が良い職員に見えてしまう理由
一般の人や利用者の家族などにとっては、キラキラ系介護士が良い職員に見えるようです。
その理由を考えていきたいと思います。
理由①「キラキラしながら働く人は素晴らしいという思い込み」
「キラキラ」とは「輝き」を表す言葉です。
介護現場の内情や実情を知らない人から見れば「見た目」や「印象」だけが全てです。
死んだ魚のような目をしながら働く介護士よりも、キラキラと輝いて見える介護士に良い印象を持ってしまうのは当然のことなのかもしれません。
そして「キラキラ系介護士」もそう思われたいと思っているのですから本願成就となります。
理由②「リーダーシップがあるように見える」
キラキラ系介護士は自分ではやりもしないし出来もしないことを平気で言います。
実際にやるのは下の人間だったり周りの職員になるわけですが、一見するとそれが「リーダーシップがある」ように見えます。
介護現場を知らない人が見れば、リーダーシップが取れる職員が良い職員に見えてしまうのは当然です。
しかしキラキラ系のリーダーシップは周りの職員の犠牲の上に成り立っているのです。
理由③「利用者本位に見える」
実際、介護現場の方針として「利用者本位であるべき」と言われているわけですが、理想と現実があるので何かを成し遂げようとすると何かを犠牲にしなければなりません。
本気で利用者本位な業務をしてしまうと、他の必要な業務に支障が出かねません。
実際の介護現場では、利用者は好きな時間に寝て好きな時間に起きるということは難しいですし、食事も好きな時間に好きなメニューを注文することも困難です。
人員不足もあるために、一人の利用者に付きっきりの介護も出来ません。
現実ではできないことだらけなのですが、キラキラ系介護士は「利用者本位」の名のもとに率先してそれらを実行しようとします。
一見、素晴らしい職員に見えますが、他の業務のしわ寄せが周りの職員にきてしまいます。
キラキラ系介護士が一人の利用者に「寄り添い」「傾聴」をしている間に、他の職員が掃除、洗濯、シーツ交換、オムツ交換、入浴介助など、業務を回すために必要なことをしています。
表面上の利用者本位のために、周りの職員の業務負担が増加しているのです。
理由④「ポジティブ思考の方が印象が良い」
キラキラ系介護士は基本的にポジティブシンキングです。
多くの人が「ネガティブよりポジティブの方が良い」と感じることでしょう。
しかし、キラキラ系は明らかに短絡的ですし軽率な綺麗ごとばかりです。
また、介護現場ではメリットばかりでなくデメリットの説明も行い理解を得ていく必要がありますが、メリットしか言わないキラキラ系は耳触りは良いものの現実的ではありません。
理想が高く見えますが、その正体は「理想が高い自分が大好き」というナルシストでしかないのです。
利用者のためではなく自分のために自己陶酔をしているのです。
理由⑤「肩書きがある」
業界全体で「やりがい搾取しやすいキラキラ系」を推奨する風潮があるので、キラキラ系介護士は上司にも気に入られやすく昇格しやすいと言えます。
そうすると「介護リーダー」や「介護主任」などに出世しやすくなり肩書きを持つことになります。
介護現場を知らない人から見れば「キラキラしていて肩書きのある介護職員は良い職員」に見えてしまうのは当然と言えます。
肩書きがあるということは、「事業所から能力や経験や実力が認められている」と言えるので尚更です。
しかし、キラキラ系介護士の下で働く職員はつらい日々を過ごしていることは、現場の実情を知っていれば容易く想像がつきます。
理由⑥「表面上しか見えていない」
ここまででわかることは、介護現場を知らない人はずっと介護現場にいるわけではないため、キラキラ系介護士の特定の一部分や表面上のものしか見えていないということになります。
つまり、キラキラ系介護士の本質には
- 家族などの面会者が来ている時だけ良い対応をしている
- キラキラ系介護士の良いと思われる行動の裏で困っている職員や利用者がいる
- 自分の好意が受け入れられないと態度が豹変する(メサイアコンプレックス)
- 自分は弱者を助けられるような優位的地位にいるという恍惚感を感じていたい(メサイアコンプレックス)
- 行動の多くは自分が目立つためだけのスタンドプレイ(メサイアコンプレックス)
ということが往々にしてあり得るのです。
もし、上記のどれにも当てはまらないのだとすれば、それは確かに「良い職員」です。
しかし、いずれか又は全てに当てはまってしまうからこそ、一緒に働く同僚職員には本質が見えてしまい「良くない職員」「一緒に働きにくい職員」と思われてしまうのではないでしょうか。
「表面上は良く見えるが本質は困った職員」ということであれば健全な状況とは言えません。
キラキラ系介護士は、介護現場を知らない人から見える側面と実際の本質とのギャップが大きいことが特徴です。
そもそも、本当に良い職員であれば、同僚介護士たちからも良い評価をされているはずなのです。
「表面上を取り繕っただけの介護でいいのか」ということについて業界全体で掘り下げたり突き詰めて考えていき、もっと本質に目を向けていく必要があるのではないでしょうか。
最後に
今回は、介護現場を知らない人には「キラキラ系介護士」が良い職員に見えてしまう理由について記事を書きました。
キラキラ系介護士のように理想を追い求めること全てを否定するわけではありませんが、一切現実が見えていないからこそ「キラキラ系」と揶揄されているのです。
「介護の仕事はお金じゃない」「利用者の笑顔が最高の対価」などということを言っている人は、介護現場の処遇や環境の改善に悪影響を及ぼします。
利用者に笑顔でいて欲しいですし、幸せに暮らして頂きたいのは介護職員なら誰しも思っていることです。
理想ばかり見て現実から目を逸らしてしまうことは「砂上の楼閣」になり不健全な状態になってしまいます。
あなたが「良い職員」だと思っているのは、ひょっとしたら「キラキラ系介護士」と呼ばれている存在なのかもしれません。