ご存知の人もいらっしゃるでしょうが、介護施設などの介護サービス事業所ではネット上での情報発信やチラシなどでの広告や宣伝をする際に内容の制限や規制が存在します。
但し、その制限や規制はどの介護サービス形態でも同じ基準ではなく、大きく分けて「1.介護老人保健施設(老健)」と「2.介護老人福祉施設(特養)と居宅系介護サービス(デイや居宅介護支援事業所など)」と「3.有料老人ホーム」の3種類があります(2018年4月から創設された「介護医療院」もありますが今回は割愛します)。
どういった広告規制や宣伝内容の制限があるのかを以下で詳しく解説していきたいと思います。
介護施設や介護事業所の広告制限や宣伝内容の規制
それでは早速、介護サービス事業所の広告制限について
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護老人福祉施設(特養)と居宅系介護サービス
- 有料老人ホーム
の順番で確認していきたいと思います。
1.介護老人保健施設(老健)
老健は、入所者の療養やリハビリなどの医療色が濃いために、医療広告ガイドラインの影響も受ける上、現状で唯一介護保険法に広告制限が規定してある介護サービス形態になります。
介護保険法では以下のように規定してあります。
(広告制限)
第九十八条 介護老人保健施設に関しては、文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない。
一 介護老人保健施設の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
二 介護老人保健施設に勤務する医師及び看護師の氏名
三 前二号に掲げる事項のほか、厚生労働大臣の定める事項
四 その他都道府県知事の許可を受けた事項【引用元】介護保険法98条
つまり、「上記に該当する事項以外は宣伝してはいけない」ということになります。
尚、同法206条には違反した場合の罰則も規定されており、「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられることになります。
2.介護老人福祉施設(特養)と居宅系介護サービス
特養や居宅系の介護サービスの広告制限については、介護保険法では規定がありません。
では、全く制限も規制もないのかと言えば、それぞれ「人員、設備及び運営に関する基準(省令)」に広告について規定してあります。
「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第31条(省令第39号)」と「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第34条(省令第37号)」と「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第24条(省令第38号)」には、広告について同じ文言で下記のように定められています。
広告をする場合は、その内容が虚偽又は誇大なものであってはならない。
老健に比べて比較的ゆるやかな規制になっています。
しかし、虚偽又は誇大な内容でなくても次に掲げるような広告表示は不正競争防止法や景品表示法や医師法や薬機法などの他の法律やガイドラインに抵触する可能性があるため認められていません。
①自己の優良、優位性を掲げる表示、又は優良、優位であるかのように誤認を与える表示
②「安心」「安全」を掲げ、約する表示
③医療にかかわる表示
④将来の予定又は計画事項(認可、許可を得ているものは可)
違反した場合は行政指導を受けたり、内容によっては違反してしまった法律の罰則の適用を受けることもあります。
3.有料老人ホーム
有料老人ホームは、景品表示法第5条第3号に基づいた告示によって広告の規制を受けています(参考:消費者庁ホームページ「有料老人ホームに関する不当な表示」)。
こちらは規制や制限というよりも、「表示しなければならない事項は全て明瞭に表示しないと不当表示になりますよ」という性質のものです。
規制や制限に関しては、景品表示法などに基づき公益社団法人全国有料老人ホーム協会が「有料老人ホームの広告等に関する表示ガイドライン(PDF)」を出していますのでご参照下さい。
こちらのガイドラインには、事細かく「表示の対象」や「具体例」などが明記されています。
例えば、「最高」「厳選」「多数」などという言葉は「客観的にその内容を証明できない場合は表示してはならない」とされており、なかなかシビアな印象です。
「最高の介護サービスを提供します」などという文言は、その最高さが証明できない場合は表示してはいけないということになりますが、どこかで目にしたようなキャッチコピーであるような気もします。
最後に
今回は、介護施設や介護事業所にはネットやチラシなどでの広告制限や宣伝内容の規制についてご紹介しました。
ネットやチラシだけでなく、パンフレットやダイレクトメールやファックスや口頭などでの表現も制限や規制の対象となります。
つまり、介護サービス事業所では「当たり障りのない事実だけを明瞭に表示するだけに留め、過度な顧客や利用者の獲得競争は慎んでくださいね」ということになろうかと思われます。
関係法令やガイドラインなどに抵触さえしなければ広告や宣伝をしてもいいわけですが、蛇足にならないように表示の仕方や管理体制には十分な注意が必要です。