時々、勘違いをしている人がいるのですが
「介護施設に預けたら完璧な介護をしてくれるはず」
「介護のプロなんだから事故や怪我が発生するはずがない」
と思っている家族がいます。
結論から言うと
「それは無理です」
「怪我や事故が起こる確率をゼロにはできません」
「我々は介護のプロであって事故を防ぐプロではありません」
ということになります。
今回は「介護現場での事故を未然に防いでゼロにすることが可能なのか」ということを記事に書きたいと思います。
何故リスクをゼロにできないのか
リスクをゼロにできない理由は色々ありますが、そもそも「リスクがゼロに出来ないからリスクマネジメントが必要」なのです。
つまり、「必ずリスクが発生する前提で、その被害を最小限に抑えたり、再発防止を目指すため」にリスクを管理していくのです。
もちろん、「事前に予見して未然に防ぐ」という観点も含まれていますが、それを以て「事故や怪我のリスクがゼロになるというわけではない」ということには留意しておく必要があります。
では、何故、リスクがゼロにならないのでしょうか。
理由①「人間の行動を完璧には予見できない」
介護現場は「利用者という人間」を相手にしています。
人間の行動が全てデータやプログラミング等で毎回決まったパターンで動いている機械やロボットならまだしも、予測不可能な行動があったり、想像を遥かに超えた出来事が発生することは普通にあり得ます。
ましてや、介護施設では「認知症者」も多数いるわけですから尚更です。
相手が人間である以上、その行動を完璧には予見できず、リスクをゼロにすることは不可能だと言えます。
理由②「ヒューマンエラー」
相手が人間なら、介護職員も人間です。
介護職員も人間である以上、人為的過失やミスが発生します。
「プロだから」「プロなのに」と言いたくなるのはわかりますが、どんなプロでも失敗やミスは発生します。
お互い、人間である以上100%は存在しないのです。
超一流のプロ野球選手でも「三振」をしたり「エラー」をしたりするのです。
介護職員だって同じなのです。
理由③「人員不足」
介護業界において外せない最大の理由が「人員不足」です。
本来配置されているべき必要人員が配置されていないのです。
もっと言えば、「現在の人員配置基準を満たしていてもリスクをゼロにできる配置とは言えない」という現状があります。
24時間付きっきりの介護ではない以上、リスクをゼロにすることは出来ません。
人員不足であればあるほど、リスクは高くなるのは必然です。
9人のスタメンが必要な野球を5人でやっているようなものです。
エラーが発生するばかりか試合にもならないでしょう。
試合になっていないのが現在の介護現場だと言えます。
リスクがゼロになるわけがありません。
事前に説明する事業所も増えている
転倒や転落や外傷などの介護事故は、十中八九発生する可能性があることは明らかです。
そういう「常識」をわきまえた事業所は「契約書」や「重要事項説明書」などに、「どう頑張っても事故は発生する可能性があるので、その責は負いかねる」という旨の記載をしている事業所もあるようです。
それを納得した上で契約し、利用や入所をするのでトラブルにもなりにくいと言えます。
ちなみに、私の事業所では、その旨の記載はないのですが「口頭で説明」するよう言われています。
しかし、口頭では「言った、言っていない」「聞いた、聞いていない」という水掛け論になり、トラブルや苦情に発展しやすくなります。
早く、全ての事業所や業界が「常識」を持って、契約書等の条文に明記していく必要があります。
口頭説明のリスク
口頭説明には水掛け論というリスク以外に「家族が納得したかどうか不明」というリスクも存在します。
過去にあったパターンで
「入所時に「事故が発生するかもしれない」と伝えられ、とても不安に感じた」
ということを入所後に言ってくる家族もいます。
この場合、普通は
「その説明で納得して契約したんだから何を今更」
「改めてご説明しますが、もしどうしても納得ができないようなら契約を解除して下さい」
という対応で良いはずです。
しかし「常識のないおかしな事業所」は
「不安にさせて申し訳ございません」
「説明が不十分で申し訳ございません」
「誤解を与える説明しかできなくて申し訳ございません」
と言い始め、契約担当者を責めたり「苦情や相談」として受け付けするのです。
従業員一人守れない「何でもかんでも家族の言いなり事業所」はまだまだ多く存在していると思っています。
どこまでもおかしな業界はいつまで経っても人員不足なので「どちらにしてもリスクもゼロになんかできやしない」のです。
最後に
事故を未然防ぐことは大切ですが、現状の介護現場では「ほぼ不可能」だと言えます。
本当に大切なのは「介護のプロとして事故を発生させるな」ということではなく
「被害を最小限に抑えること」
「情報の共有をすること」
「再発防止策を検討し実施すること」
になります。
重複しますが何度でも言います。
介護現場での事故のリスクはゼロにはなりません。