介護職員(介護従事者全般)には「守秘義務」が課せられています。
そして事業者には「個人情報の保護に関する法律」が課せられており、従業員も遵守していかなければなりません。
これらは職場外であっても遵守していかなければなりませんので、プライベートな場所(飲み会の場やインターネット上など)でも注意が必要です。
職場外で気が緩んでしまわないように注意をされているかとは思いますが、勤務中であっても判断に悩んだり意識せぬまま情報が洩れてしまいかねない状況があったりします。
特に介護現場では
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などの原因によって情報漏洩リスクが高くなります。
今回は、「介護現場で注意が必要な個人情報保護と守秘義務」について記事を書きたいと思います。
介護現場で注意が必要な場面とその原因
職場外ならいざ知らず、勤務中の職場内では個々が気を引き締めて利用者の個人情報の取り扱いや秘密保持には十分注意をしているはずです。
しかし、介護現場においては「思わぬ落とし穴」があったりします。
その思わぬ落とし穴も含め、介護現場で個人情報の取り扱いで注意する必要がある場面や原因について解説していきたいと思います。
原因①「利用者の個人情報を扱う機会が多い」
介護施設では、多くの利用者が共同生活を送っています。
居宅系の通所介護(デイサービス)や短期入所生活介護(ショートステイ)では、利用者が日ごとに入れ代わり立ち代わり利用します。
利用者の数だけ個人情報があります。
そして、介護サービスが一般的な接客サービスと違う所は「利用者の細部に至る所まで個人情報を保持している」という点です。
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などなど、1人の利用者だけで膨大な量の個人情報があります。
その膨大な量の個人情報を利用する人数分保持して、尚且つ、介護に関わる全ての職員が情報を共有しておく必要があるため「物理的に」情報漏洩のリスクが高くなるため注意が必要です。
原因②「情報の共有をしながら現場業務」
介護職員は現場に入る前に利用者1人1人の情報を確認し共有します。
基本的なことは既に頭に入っているでしょうが、「最新の情報」であったり「変化や変更のあった点」などの確認と共有は必要不可欠です。
しかし、常に現場には利用者がいて何かあれば対応をしなければなりません。
介護施設であれば、出勤時間もバラバラですし情報の共有が申し送りの紙やケース記録を読むだけではなく、補足的に「口頭」で行われる場合もあります。
口頭で情報共有をする場合は、利用者の居ないスペースで行うのが基本ですが、人員不足の状態であったり利用者の状態や状況によって不意の対応などが必要になる場合が多く、ゆっくりと申し送りや情報共有をしていられないことが多々あります。
そうなるとやってしまいがちなのが「現場で利用者の対応をしながら申し送りをしたり情報を共有してしまう」ということです。
対応中の利用者の耳には入っているでしょうし(認知症の有無や耳が遠いなどがあるにしても状況的には耳に入る状況です)、周りの利用者や家族の面会があれば家族にも聞こえている可能性があります。
「見守りや業務をしながら情報共有」をすることが常態化していれば、思わぬ落とし穴となり個人情報の漏洩リスクが高くなるため注意が必要です。
原因③「おしゃべりが大好きな介護職員」
特に中年以上の女性介護職員に多い傾向があるのですが、「おしゃべりが大好き」で色々なことをずっとしゃべっている介護職員もいます。
個人情報の保護や守秘義務について知ってはいるものの、「その場のおしゃべりの楽しさが優先してしまう人」です。
おしゃべりが優先してしまうということは個人情報保護や守秘義務を正しく理解できていないことも多く、
「しゃべらずにはいられない」
「しゃべっている内容が個人情報だとは思っていない」
「どうせ聞こえていないから大丈夫だと思っている」
などの性格的性質的な問題である可能性があります。
「それは個人情報に当たるので、ここで大きな声で話してはダメですよ」
と伝えても
「どうせ聞こえやしないわよ」
「そう?あはは…」
という返答があるだけで、その場は収まってもまた別のタイミングで繰り返されます。
「時と場所をわきまえないおしゃべりが大好きで止まらない介護職員がいる場合」は、個人情報の漏洩リスクが高くなるため注意が必要です。
原因④「家族の面会時の不可抗力」
家族が面会に来た際に、同じ地域内や近所に住んでいた利用者がいることに気づき喋りかけられることがあります。
「〇〇さん最近見掛けないと思っていたらこの施設に入所されていたんですね」
などという会話が聞こえることがあります。
家族と別の利用者が会話をすることは問題がありませんし、介護職員にとっては不可抗力になります。
しかし、そこから更に家族が介護職員に対して質問をしてくることがあります。
「〇〇さん、ここに入所されていたんですね」
「〇〇さんはいつから入所されているんですか?」
というような確認と質問を介護職員にされると答えに詰まります。
その利用者が「現にここに居る」ということは、「入所している」のは否定しがたい事実であることは間違いないのですが、介護職員として利用者のことを第三者に返答してしまうことは問題があるからです。
「見ればわかるでしょ」とも言えません。
この場面で「どうせわかってしまったことなのだから」という気持ちで「そうなんですよ」「最近ですよ」などと返答してしまうことは思わぬ落とし穴にはまってしまう危険性があります。
介護職員の返答にどう尾ひれがついてしまうかもわかりませんし、その家族が家に帰ってから
「介護職員に確認したら〇〇さんがあの施設に入所していた」
「介護職員が〇〇さんのことを教えてくれた」
という話にすり替わってしまう可能性もあります。
その内容が口伝てで地域内に広まってしまう可能性もありますし、利用者本人の家族の耳に入れば良い気はしないでしょう。
また、更に話が飛躍して「あの施設の介護職員は何でもベラベラ喋る」という風評被害も受けかねません。
そうならないためにも、その場では
「申し訳ございません、個人情報保護法という法律があり利用者の個人情報に関してはお答えできないんです」
というような内容のことを伝えて利用者のことは何も答えないことが最善です。
それを伝えても納得しなかったり逆に憤慨するような家族であれば、上司に対応を代わってもらったりする等をしましょう。
冷静に考えて「モンスター」の可能性があります。
「家族の面会時の不可抗力によって、介護職員が関わってしまった場合」は、情報の漏洩リスクのほかに話が飛躍して風評被害を受ける可能性があるため注意が必要です。
最後に
今回は、「介護現場で注意が必要な個人情報保護と守秘義務」の思わぬ落とし穴になりがちな場面や原因について記事を書きました。
業務上で言えば、利用者がずっと施設内で生活している施設系介護よりも、自宅に帰る居宅系介護の方が情報漏洩のリスクが高くなります。
居宅系の方が施設系よりも地域や他事業所との繋がりが大きいことと、利用者自身の状態(意思疎通が図れる利用者が多い)によるからです。
しかし、介護施設においても家族の面会時などに思わぬ落とし穴があるため、個人情報の取り扱いには十分注意が必要です。