介護の基礎知識

現場スタッフが戦々恐々とする「緊急ショートステイ」をわかりやすく解説

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基本的にショートステイというのは、「在宅介護の最後の拠り所」になるべくサービスなので、在宅介護をされている家庭からの利用希望が殺到しています。

ですから、どこのショートステイ事業所も予約がいっぱいで、新規での利用や急に利用したくても「予約で埋まっていて利用できない」という状況があります。

他事業所や居宅ケアマネとの連携も必要で、利用者が毎日入れ代わり立ち代わりとなるため業務も煩雑で、ショートステイが特養の併設の場合は「人員不足」を理由にショートステイ事業所の枠を減らしたり閉鎖する事業所も多くなってきたように感じます。

ショートステイは特養より仕事が楽なのか?「両者の具体的な違いは?」

そんなショートステイの業務の煩わしさの1つに「緊急ショートステイ」というものがあります。

今回は、現場スタッフが戦々恐々としてしまう「緊急ショートステイ」についてわかりやすく解説したいと思います。

 

 

 

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緊急ショートステイとは

 

 

ショートステイを「利用したくても利用できない状態」の人は大勢いらっしゃるでしょうが、緊急ショートの場合、尚且つ「利用しなければならない急迫な状態」にある利用者や家族が対象となります。

そういった人達を救済するために、国が「緊急ショートステイ」というシステムを作り、その加算や受け入れの要件についても緩和してきています。

では以下で詳しくみていきたいと思います。

 

緊急入所できる対象者

〇厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等 (平成24年3月13日厚生労働省告示第95号)

十七 指定居宅サービス介護給付費単位数表の短期入所生活介護費の注10の厚生労働大臣が定める者

次のいずれにも適合している者

イ 利用者の状態や家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護(指定居宅サービス等基準第百二十条に規定する指定短期入所生活介護をいう。ロにおいて同じ。)を受けることが必要と認めた者

ロ 現に利用定員の百分の九十五に相当する数の利用者に対応している指定短期入所生活介護事業所(指定居宅サービス等基準第百二十一条に規定する指定短期入所生活介護事業所をいう。)において、緊急に指定短期入所生活介護を受ける必要がある者

上記、イとロの両方とも適合している必要があります。

具体的には、

  • 身内に不幸があり急に出掛ける必要があり被介護者の介護が出来なくなり緊急入所の必要があると判断される者
  • 元々、ショートステイを利用する事が予定されておらず居宅ケアプランにも記載が無いが、緊急入所の必要があると判断される者
  • 被介護者が介護者(家族)から虐待を受けていると疑われる又は確認でき、緊急入所の必要があると判断される者
  • 利用定員の95/100に対応しているショート事業所において緊急入所を受ける必要がある者
  • その他、担当ケアマネが「緊急性」を認める場合

等になります。

 

 

加算要件の基準

〇厚生労働大臣が定める基準(平成24年3月13日厚生労働省告示第96号)

二十 短期入所生活介護費における緊急短期入所体制確保加算の基準

イ 指定短期入所生活介護事業所(指定居宅サービス等基準第百二十一条第一項に規定する指定短期入所生活介護事業所をいう。以下同じ。)において、緊急に指定短期入所生活介護(指定居宅サービス等基準第百二十条に規定する指定短期入所生活介護をいう。以下同じ。)を受ける必要がある者(現に指定短期入所生活介護を受けている利用者を除く。以下この号において同じ。)を受け入れるために、利用定員の百分の五に相当する数の利用者に対応するための体制を整備していること。

ロ 算定日が属する前三月間において、利用定員に営業日数を乗じた総数のうち、利用延人員の占める割合が百分の九十以上であること 。

上記、イとロの基準を満たしていれば「緊急加算」を取ることができます。

 

 

基準の緩和

しかし、どんどん基準が緩和されており、「満床でも緊急入所を受け入れ可能」という方針になってきています。

その最たるものとして、「介護保険最新情報vol.454」に以下の記述があります。

緊急利用者の受入れであれば、短期入所生活介護の専用居室や特別養護老人ホームの空床を利用する場合のほか、静養室でも緊急短期入所受入加算を算定できる

介護保険最新情報vol.454」より引用

つまり、ショートステイが満床でも、

  • 特養の空床
  • 静養室
  • 談話室
  • 家族の宿泊室

などが空いていれば、「そのスペースを使って受け入れても緊急加算を算定できる」というものです。

但し、担当介護支援専門員が緊急やむを得ないと認めた上で、「当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がない場合」という条件がつきます。

 

 

加算の金額

介護保険の加算は「単位」で表され、1単位の金額が地域ごとに異なります。

概ね「1単位=10円~11円」だと思っておけば良いかと思います(厳密に知りたい人は、各地域の単位等級をご確認下さい)。

緊急入所を受け入れた場合の加算単位は、2019年6月現在で「90単位/日」となっています(平成27年の介護報酬改定で加算点数が変わりました)。

つまり、「1日約900円程度」となります。

これを通常「7日間算定」できます(利用者の日常生活上の世話を行う家族の疾病等やむを得ない事情がある場合は、14日を限度として算定できる)。

つまり、緊急ショートステイを1人受け入れた場合、

「1日約900円×7日間=約6400円」

ということになります。

 

 

 

現場スタッフが戦々恐々としてしまう理由

 

 

社会福祉において、やむを得ない事情のある人を救済できる素晴らしい緊急体制ではありますが、現場スタッフはいつも戦々恐々としています。

その一番の理由は「現場には配慮が一切ないから」です。

 

 

理由①「夕方に多い」

緊急入所は何故か夕方に多い印象があります。

夕方ともなると、介護現場では早出の職員が退勤していき、夜勤者が出勤していく時間です。

そして、時間の経過とともに、職員がどんどん退勤していき、夜勤者一人になる時間となります。

そんな時間に「緊急入所の受け入れ依頼」が入ることが多く、現場スタッフにしてみれば「寝耳に水」状態です。

今いるスタッフで何とか受け入れをせねばならず、かと言って既にいる利用者にもいつもと変わらないケアをしなければなりません。

この「受け入れ態勢が整っていないのに受け入れてしまう緊急ショート」には戦々恐々としてしまいます。

 

 

理由②「一切の情報がない」

緊急なのですから、本人も含め担当ケアマネや関係機関もバタバタとしています(現場にいるので実際の動きは見えませんが)。

それが故に、受け入れ先の現場までなかなか入所者の情報が下りてきません。

最終的に直接介護を行うのは現場スタッフなのに、その職員に一切の情報を与えぬまま緊急受け入れが進んでいきます。

顔や氏名や状態や年齢はもちろん、性別さえもわからないまま話が勝手に進んでいきます。

受け入れ30分前にやっと性別がわかり、15分前に名前や年齢がわかり、入所とともに顔や状態がわかるということが当たり前のように行われています。

一旦受け入れが落ち着くと、上司たちは「あとはよろしく~」などと言って帰っていきます。

残された現場スタッフに負担だけが重くのしかかります。

「現場スタッフに丸投げするだけの緊急ショート」は戦々恐々としてしまいます。

 

 

理由③「一切拒否できない」

居宅ケアマネから「緊急要請」があった場合、 ショートステイ事業所はその受け入れを拒否出来るでしょうか。

そもそも、短期入所生活介護(ショートステイ)の受け入れは、「正当な理由がなく受け入れを拒否できない」としてあります。

通常利用の場合、「満床」は正当な拒否理由になりますが、緊急利用の場合は、「静養室や談話室や休憩室でも受け入れ可能」となっているので、満床だけでは正当な拒否理由にはなりません。

そして、事業所は緊急時のために

  • 常にそういう「緊急に対応出来るスペースを確保する努力」をしなさい
  • そもそも静養室や休憩室はあるでしょ?
  • だから満床は正当な理由にならないよ

という暗黙の了解があるように感じます。

もちろん、「特養も満床だし静養室も休憩室も空きが無い」と言ってしまえば受け入れ拒否は出来ます。

しかし本当にそうならば良いですが、それが断るための虚偽の発言だったり、事実ではないことで拒否した場合は、行政に指摘や指導をされる可能性があります。

また、事業所も「緊急入所を受け入れた実績」が欲しいことでしょう。

「人員不足」も正当な拒否理由になり得ますが、

  • たった1人利用者が増えただけで回せなくなる人員配置はおかしい
  • そもそも今まで人員配置基準を満たしていなかったのでは?

という「やぶへび」になる恐れがあるため、おいそれと「人員不足」というワードを社外には発信したがりません。

そういったマイナス面やデメリットを考えると、緊急加算という(微々たる)プラスにもなるし、受け入れたという実績にもなりますので、「事業所や経営者としては 受け入れを拒否する選択肢というのは殆ど無い」と言えるでしょう。

そうなると、当然現場スタッフには一切の拒否権限はありません。

甘んじて受け入れるだけです。

「緊急!」という声がいつ飛んでくるのか、戦々恐々とする日々なのです。

 

 

理由④「一切のメリットがない」

緊急入所を受け入れても、現場スタッフには一切のメリットがありません。

手当が貰えるわけでもありませんし、評価が上がるわけでもありません。

ただ「業務や介護をする人数だけが増える」というものでしかありません。

緊急受入加算が現場スタッフの懐に入ることもありません。

もちろん、「困っている人を救済できた」ということは素晴らしいことですが、介護職員はボランティアではないので、現状のシステムでは「片手落ち」なのです。

緊急受入の対応や想定外のプラスの業務によって、他の利用者に手が回らなくなって迷惑を掛けてしまうリスクも発生します。

そのリスクさえも現場スタッフの責任にされるのですから、一切のメリットがありません。

そんな「リスクを増やすだけで一切のメリットがない緊急ショート」は戦々恐々としてしまいます。

 

 

理由⑤「予定が立たない」

緊急事案ですから、中には「身寄りがない人」も受け入れすることになります。

家族がいても遠方であったり、非協力的であったり、そもそもその家族から虐待を受けて入所の運びになる場合もあります。

そうなると「もし夜間に何かあったら誰に連絡をすればいいのか」ということが問題になります。

「何か」とは、転倒や体調の悪化などになります。

夕方以降の入所が殆どで、そういう細かい所まで詰められないことが多く、当日の夜勤者にとってはとても負担になります。

そういう時こそ居宅ケアマネが緊急連絡先に名乗りをあげてくれたら良いのですが

「いや~私もさっき担当になったばかりなので…」

「それは業務範囲外なので…」

という返答ばかりで途方に暮れてしまいます。

結局は「とりあえず救急搬送するしかない」という結論で終わります。

また、緊急でドタバタで入所してきたために、いつまで利用するのかの予定もはっきりとわかりません。

ずっと居るかもしれないし、明日帰るかもしれない状況は、予定が立たず戦々恐々としてしまいます。

そして、多くが「2時間後に退所になりました」などということになり「急に帰っていく」のです。

急な入所も大変ですが、急な退所も大変です。

現場スタッフは今日も「緊急ショートステイ」に戦々恐々としています。

 

 

 

最後に

 

今回は、現場スタッフが戦々恐々としてしまう「緊急ショートステイ」について記事を書きました。

緊急ショートステイというのは、在宅介護をしている家族や利用者にとっても、受け入れた事業所にとっても、社会全体で見てもメリットがある必要なシステムです。

しかし、唯一「現場スタッフにだけ配慮が足りていない」ために、片手落ちの状況になってしまっているのが否めません。

必要な緊急受入制度を価値のあるものにするために、もっと現場への配慮が必要だと感じています。

 

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