介護職員として介護業務をしていく中でよく言われるのが「根拠のある介護をする」ということです。
根拠のことを「エビデンス」と言ったりもしますが、ほぼ同じ意味です。
以前書いた記事で「介護福祉士の専門性」について、日本介護福祉士会の見解は「利用者の生活をより良い方向へ変化させるために、根拠に基づいた介護の実践とともに環境を整備することができること」とされていることをご紹介しました。
「根拠やエビデンスのある介護をしなければならない」とは言うものの、介護現場では場面場面や利用者ごとに対応が変わってくるために、「ひとつひとつの対応の根拠が職員間で統一されたもの」でなければ介護職員ごとでちぐはぐなケアになってしまいかねません。
そうなると、対応ひとつひとつに根拠を決めておき、情報が共有できるように明示したり可視化しておかなければならなくなりますが、介護現場での対応は無限に存在するために全てに根拠を統一させて共有していくことがなかなか難しいのも事実です。
今回は、介護現場において「根拠のある介護の実践」とは一体何なのかということについて記事を書きたいと思います。
根拠のある介護の実践とは
介護現場において「根拠のある介護の実践」とは一体何なのでしょうか。
根拠とは
介護現場で必要な根拠は
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などになります。
それらに基づいた上で介護を実践していくことが重要です。
具体的にどう根拠に基づくのか
ひとつひとつの対応に根拠があれば確かに安全で的確なケアを提供できます。
では、実際の介護現場では、具体的にどう根拠に基づいて介護を実践していけばいいのでしょうか。
それは「何故、そうしているのか」「自分が行っているケアの意味を知っておく」ということが、具体的な根拠に基づいた介護の実践と言えます。
自分の行っている対応や介護の意味もわからずに「見よう見まねで」「何となく」「流されるままに」ということは良くありません。
例えば、「何故、口腔ケアを行うのか」ということを理解した上で介護を実践することが「根拠のある介護の実践」となります。
口腔ケアは「口腔内を清潔に保つためのケア」ですが、
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などの効果もあります。
介護保険制度においても「社会生活上の便宜の供与その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うこと」とされており、当然に口腔ケアも含まれます。
また、事業所が「口腔衛生管理体制加算」等を取っている場合もあります。
つまり、「何故、口腔ケアをしているのか?」という質問の答えが「根拠」となるのですから、上記内容が「口腔ケアをしている根拠」ということになります。
同じ口腔ケアをしていても、この根拠に基づいて実践しているのと、根拠を理解しないまま実践しているのとでは意識や効果や質が違ってきますし、根拠を理解していることで「腑に落ちた介護」が実施できます。
根拠のある介護を実践していくために
根拠のある介護を実践していくことが重要であることはわかりましたが、どうすれば介護職員一人ひとりが根拠を持って介護を実施していけるのでしょうか。
その答えは「介護職員一人ひとりが、事前に根拠を知っておく、理解しておく」ということになります。
根拠を知る方法は
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などになります。
もちろん、わからないことや疑問に思ったことは積極的に情報を得ていく姿勢は必要ですが、本来であれば、事業所が責任を持って全介護職員に周知させるような体制が欲しいところです。
しかし、現状では殆どが自助努力や自己責任となってしまっています。
「根拠のある介護の実践」が重要であるならば、「根拠を周知できるような体制づくり」も重要ではないでしょうか。
最後に
今回は、介護現場における「根拠のある介護の実践」とは一体何なのかということについて記事を書きました。
根拠と言うと、データや学説や文献などに示されているものを引っ張ってこなければならないように感じますが、介護現場においては「何故、そうしているのか」という問いに対して適切で明確で具体的な返答ができれば、それは「根拠のある介護」だと言えます。
時々、「利用者のため」というパワーワードを根拠としている現場の方針や介護職員を見掛けますが、利用者のニーズに沿った具体的な内容でなければ、それはただ単に「利用者をスケープゴートにして自分を根拠にしてしまっている」に過ぎません。
自分を根拠とせずに職員間で共通の根拠を持って、腑に落ちた介護を実践する方が、利用者にもメリットがありますし介護職員にとっても働きやすいのです。