介護の基礎知識

【ボディメカニクス】正しい介護技術があれば腰痛にならないという誤解

投稿日:2019年7月17日 更新日:

 

介護職員の職業病の代表格は「腰痛」です。

厚生労働省の腰痛予防指針で介護職員にも「腰痛健診」の受診を努力義務とされています。

介護事業所で行われる腰痛健診の実情「検査項目や内容は?」

しかし、中には

「腰痛になるのは介護技術が不足しているからだ」

「正しい介護技術があれば腰痛にならない」

という間違った認識をされている人がいます。

確かにボディメカニクスを勉強し、正しい介護技術と介助方法を実践することは介護者にとっても利用者にとっても「負担を軽減する」という点で大変有効です。

有効であるものの、「重い物や人を抱える業務」がある時点で残念ながら「腰痛をゼロにすることは不可能」なのです。

リスクがある以上、リスクの発生をゼロにできないのは「介護事故」も同じです。

今回は、「正しい介護技術があれば腰痛にならないという誤解」について記事を書きたいと思います。

「事故を未然に防ぐのが介護のプロでしょ」→「無理です」

 

 

 

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正しい介護技術とは

 

 

そもそも「腰痛にならない正しい介護技術」とは何なのでしょうか。

恐らく「ボディメカニクス」と「ボディメカニクスを駆使した移乗に至る前に、利用者に受け入れ態勢や心の準備をして貰う技術」のことを指していると考えられます。

 

ボディメカニクスとは

ボディメカニクスは、「負担を軽減する」「最小の労力で疲労が少ない」「無理のない自然な姿勢で行う」介助方法のことで、力学的原理を利用した介護技術になります。

 

 

受け入れ態勢や心の準備をして貰う技術とは

ボディメカニクスを駆使するにしても、相手は利用者という人間です。

心の準備が出来ていなかったり、抱えられる体勢になっていなければ、手足を動かしたり重心をずらしたり介護者を押しのけたりする「介護拒否」が出る可能性があります。

そうなるとボディメカニクスどころではありません。

ですから、まずは「声掛け」や「移乗をすることの説明」を行い、利用者に納得して貰った上でなければ、お互いに負担が増幅してしまいます。

そういった一連の流れを含めて「正しい介護技術」と言えます。

 

 

 

正しい介護技術があっても腰痛はゼロにならない理由

 

 

ボディメカニクスを含め、一連の「正しい介護技術」を行ったとしても、腰痛になるリスクはゼロにはなりません。

もし「正しい介護技術があれば腰痛にならない」と言っている人がいれば、それは

  • 実際の介護現場を知らない人
  • 腰を使う頻度が少ない介護現場で働いている人
  • 腰を使う介助を避けている人
  • 腰が人並み外れて強靭な人

ではないでしょうか。

では何故、正しい介護技術があっても腰痛になってしまうのでしょうか。

 

理由①「腰を使う頻度が多い」

何度も移乗を繰り返す必要がある介護現場では、腰を使う頻度が多いことで腰痛リスクが増大します。

腰を使うのは移乗だけではありません。

前かがみの体勢になるだけでも腰に負担が掛かるため、台所での食器洗いや便汚染した衣服を洗濯する前に揉み洗いする姿勢も腰に負担を感じます。

いくらボディメカニクスを駆使しようとも、「頻度の暴力」によって腰痛リスクをゼロにすることは不可能なのです。

 

 

理由②「意思疎通が図れない利用者」

移乗をする前に、声掛けや説明をするにしても、認知症などで意思疎通が図れない利用者であれば理解を得ることが困難になります。

結局は、「理解を得られぬまま移乗をする」ことになるため、ベッド柵や手摺などを移乗中に掴まれて空中で静止するしかなくなり移乗困難になったり、移乗の最中に重心をずらされることで不自然な恰好で移乗をすることになってしまいます。

この場合、通常であれば「職員2人で二人介助」をすることが望ましいのですが、人員不足の介護現場ではそれも困難な状況になります。

意思疎通が図れない利用者の移乗を何度も繰り返すことで、ボディメカニクスを駆使しようとも腰痛のリスクはゼロにはなりません。

 

 

理由③「強烈な介護拒否のある利用者」

意思疎通が図れないだけでなく、強烈な介護拒否がある利用者もいます。

「暴言、暴力、暴行」のある利用者です。

ボディメカニクスを駆使した移乗をするためには、「自分の重心を低くして、相手に体を密着させる」必要があるのですが、低くした顔に膝蹴りをされたり、密着して移乗をしようとすると首や腕に噛みつかれたりして、腰を守るどころではありません。

腰を守る前に、こちらの人権や生命の安全が脅かされるのです。

二人介助をするにしても、密着して移乗しなくてはならないため、利用者からの暴力や暴行を避けることに精一杯で腰痛リスクは二の次、三の次になってしまいます。

上司や事業所が介護職員を守るために早急な対応が必要なのですが、実際問題、効果的な対策もないままこういった状況が放置されている介護事業所もまだまだ多いのが現実です。

暴力を振るう利用者さえ容認するのが介護なのか

 

 

 

最後に

 

今回は「正しい介護技術があれば腰痛にならないという誤解」について記事を書きました。

ボディメカニクスや、移乗に至るまでの声掛けや説明などの正しい介護技術を駆使したとしても、腰痛になるリスクはゼロにはなりません。

本当に介護職員の職業病である腰痛リスクをゼロにしていきたいのであれば、人力での移乗を一切やめて「ノーリフティング宣言をし、ノーリフティングケアを実践」していく必要があります。

腰痛になるとなかなか治りません。

日々、腰を酷使している介護職員の皆様、どうかご自愛くださいませ。

ノーリフティングケアが日本に浸透しづらい理由とは?高知県がノーリフティング宣言をした結果

 

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