介護の基礎知識

介護職員を苦しめる「モニタリング」をわかりやすく解説「本来誰がするもの?」

更新日:

 

介護職員は利用者の介護をする仕事ですが、現場業務だけでなく、数多くの事務仕事もあります。

例えば

  • ケース記録
  • リスク報告書
  • モニタリング
  • ケアチェック
  • 会議の議事録

などになります。

その中でも、今回は「モニタリング」について、できるだけわかりやすく解説していきたいと思います。

 

 

 

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モニタリングとは

 

モニタリングとは、簡単に言えば「評価」をすることです。

評価を「分析」して改善点や見直しする点を明確にした上で、「今のケアプランを見直す材料とか根拠」になるのが「モニタリング」です。

 

モニタリングをする頻度

モニタリングを行う頻度は「定期的に」とされています。

この定期的の解釈は事業所ごとで違うかもしれませんが「概ね3か月を目安」にされているところが多いのではないでしょうか。

また、定期的に行いながら「適宜」行う必要があります。

例えば

「利用者の状態に大きな変化があった時」

「入所者の心身の状況等に応じて適切に判断して」

「退院後に再び施設に戻ってきた時」

などがあれば適宜、モニタリングを行う必要があります。

 

評価の内容

  • ケアプランに沿ってサービスが提供できたか
  • 提供したサービスに効果はあったか
  • 利用者や家族は満足しているか
  • 今後はどうしていくか(方針)

などをチェックしていきます。

チェックするだけなら5分もあれば完成しますが、「特記事項」として

  • 提供できた(できていない)理由
  • 効果があった(無かった)理由
  • 利用者や家族が満足している(していない)理由
  • 今後の課題や検討すべき事項
  • 総括

などを過去のデータを抽出したり、記録を参照して文章で記入していきます。

 

データや記録

  • 食事形態、摂取量、摂取動作
  • 口腔ケア方法、口腔内の状態
  • 体重の推移
  • 排泄方法、排泄間隔、排泄量
  • 入浴方法、入浴動作、入浴間隔
  • 移動方法、起居動作の状態
  • 他者や社会との関わりや精神面、心理面
  • 医療的な処置の有無や状態

などを参照して評価を行います。

 

分析

評価に対して問題点や改善点を見つけ出し分析をします。

評価が「目に見えるもの」であるのに対し、分析は「目に見えないもの」であったり「目に見えるもの同士の因果関係」について考えていきます。

例えば

「急に歩行ができなくなった」

ということがあればそれは目に見える事実ですが、「何故歩けなくなったのか」を考えるのが「分析」になります。

歩けなくなった理由として

  • 足の痛み
  • 精神的な依存
  • 病状の悪化
  • 寝ている時間が増えた

などの原因があれば、その因果関係を分析していきます。

そのモニタリングをもとに、サービス担当者会議(ケース会議)が行われ、各専門職(本人や家族を含む場合もあり)がプランの内容について検討したり協議して、今後のケアプランに反映させていきます。

 

注意点

モニタリングを作成する上での注意点をご紹介しておきます。

 

①事実のみを書く

当然と言えば当然なのですが、事実をそのまま記入する必要があります。

嘘を書く人はいないでしょうが、中には「尾びれ背びれをつけて」書いたり、自分の中で勝手に飛躍した考えを書く人もいます。

例えば

「嬉しそうにされていた」

というのは一見、事実のように見えますがそれは「こちらが感じたもの」であって事実ではない可能性もあります。

ですから、この場合

「うれしいと言われていた」

「笑顔がみられた」

という事実があれば、ありのままにそう書くのがベストです。

 

②頻度は出来るだけ数字で書く

モニタリングをする際によく使ってしまう言葉が、頻度を表す「時々」「時折」「頻繁に」などです。

出来るだけこういう言葉を使わずに、数字で表す方がベストです。

例えば

「1日に2回~3回」

「3日に1回程度」

「毎日夕食後に」

などになります。

そこまで分析していくのは時間も掛かり大変ですが、「時々」などの曖昧な言葉では受け取り方の幅が広くなりすぎるので、数字で表すことによって明確に示すことが可能になります。

 

③擬音は使わない

「ガクガクブルブル」とか「ムシャムシャ」とか「ケラケラ」とか「しくしく」というような「擬音」は使わないようにしましょう。

これも事実とは違ってくる可能性もありますし、自分の思い込みの場合もあり得ます。

また、受け取る人によってイメージが違ってくる場合もあるので、擬音は使わないのがベストです。

 

 

 

モニタリングは誰がするものなのか

 

さて、ここまであたかも「介護職員がしなければならないモニタリング」のように書いてきましたが、厳密には「誰がモニタリングをするべき」なのでしょうか。

 

運営に関する基準

介護保険法に基づいた「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」には以下のように規定してあります。

『指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準』

第十二条

9 計画担当介護支援専門員は、施設サービス計画の作成後、施設サービス計画の実施状況の把握(入所者についての継続的なアセスメントを含む。)を行い、必要に応じて施設サービス計画の変更を行うものとする。

10 計画担当介護支援専門員は、前項に規定する実施状況の把握(以下「モニタリング」という。)に当たっては、入所者及びその家族並びに担当者との連絡を継続的に行うこととし、特段の事情のない限り、次に定めるところにより行わなければならない。

一 定期的に入所者に面接すること。

二 定期的にモニタリングの結果を記録すること

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」によると、モニタリングはケアプラン作成を担当する「介護支援専門員(ケアマネジャー)が行わなければならない業務のひとつ」になっています。

ですから、本来は介護職員が行うのではなく、施設ケアマネがモニタリングをする必要があるのです。

 

解釈通知

では何故、多くの介護施設では介護職員がモニタリングを行っているのでしょうか。

その理由は、「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」の解釈通知(こういう風に解釈してくれたらいいよ、という正式な通知)が以下のようになっているためです。

(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準の解釈通知)

第十二条

(9) 施設サービス計画の実施状況等の把握及び評価等

(第9項)

計画担当介護支援専門員は、入所者の解決すべき課題の変化に留意することが重要であり、施設サービス計画の作成後においても、入所者及びその家族並びに他のサービス担当者と継続して連絡調整を行い、施設サービス計画の実施状況の把握(入所者についての継続的なアセスメントを含む。以下「モニタリング」という )を行い、入所者の解決すべき課題の変化が認められる場合等必要に応じて施設サービス計画の変更を行うものとする。

なお、入所者の解決すべき課題の変化は、入所者に直接サービスを提供する他のサービス担当者により把握されることも多いことから、計画担当介護支援専門員は、他のサービス担当者と緊密な連携を図り、入所者の解決すべき課題の変化が認められる場合には、円滑に連絡が行われる体制の整備に努めなければならない。

つまり、モニタリングを他職種(主に介護職員ですが)にさせても良いとは明記されていないのにも関わらず「最終的に施設ケアマネがサービスの実施状況を把握して取りまとめるのなら他の職種にモニタリングをさせてもいいよ」という勝手な解釈をしているわけです。

もちろん「他のサービス担当者と緊密な連携を図り」と明記してあるので、「介護職員だけでなく「看護師」「生活相談員」「管理栄養士」にモニタリングをさせる」という勝手な解釈をしてくれればいいのですが、残念ながらそうならないのが現実です。

介護サービスの提供をメインとした事業所では殆どの場合「介護職員がモニタリングを行っている」のではないでしょうか。

もちろんそこには

  • モニタリングは介護アセスメントの勉強になる
  • 介護職員は直接利用者に接しているので状態を一番よく知っている

という理由があるのでしょうが、現状では

「とりあえず何でもかんでも介護職員にやらせておけばいい」

という空気を感じてしまうのも事実です。

そもそも「本来、モニタリングは施設ケアマネが行うべきもの」ということを知らない介護職員も多いのではないでしょうか。

そういった事情やプロセスを情報発信している正式な文書も通知もサイトも見つからないので「暗黙の了解として行われている」と考えられます。

それは事業所個々の問題もありますが、業界全体の問題です。

そしてそういう実情を知っていても問題とならない以上「行政も認めている」と言えます。

モニタリングを介護職員が行っていくにしても、どういう根拠があって、どういう解釈で、どういうプロセスでそういう状況になっているのかを説明した上で行わせるのが「健全な運営」なのではないでしょうか。

 

 

 

介護職員の負担は大きい

 

現状で当たり前のように介護職員がモニタリングを行っていますが、その負担はとても大きいと言えます。

余程能力や余力がある人は別ですが、私の場合、利用者1人のモニタリングを普通にやろうと思ったら1時間前後は時間が掛かってしまいます。

状態の変化や特記事項に書くべきことが多い利用者はもっと時間が掛かります。

それくらい時間を掛けて「やっとマシなモニタリング」が完成します。

もし、「10分で1人分やれ」と言われたら

【食事面】

毎食、全量食べられている。

特に大きな変化なく今後も現状のまま継続していく。

 

【口腔面】

声掛けを行い自身で口腔ケアをされている。

特に大きな変化なく今後も現状のまま継続していく。

 

【排泄面】

リハビリパンツ着用。

最近、尿失禁の回数が増えてきた(1日2回~3回)。

今後も失禁頻度の確認を行い、様子を見ながら声掛けを行っていく。

 

【入浴面】

座位式機械浴で問題なく入浴出来ている。

今後も現状のまま継続していく。

 

【移動、起居動作面】

車椅子を自走して移動されている。

大きな変化なく今後も現状のまま継続していく。

 

【生活面】

レクや体操の声掛けをすると参加されている。

今後も声掛けを継続していく。

このようなモニタリングになってしまいます。

なんせ、時間が無いので詳しいデータを調べたり分析する時間もありません。

こういった内容のモニタリングを提出すると

「こんな薄っぺらい内容じゃダメだ」

「もっと記録やデータを調べて書け」

「問題点を見落としている」

などとケアマネや上司から言われてしまうことでしょう(本来モニタリング作成は施設ケアマネの業務ですが)。

しかし、そんなことはわかっているのです。

10分しか時間がないとこの程度の内容しか書けないのです。

モニタリングを作成している間にケアマネや上司が現場に立ってくれるというのでしょうか。

そんな配慮もないまま、一方的に責められてしまうのが介護職員の現状なのです。

適切な評価をして問題点や変更点を見つけ出し、今後の方針を検討していく上で、これでは利用者にも迷惑を掛けてしまいます。

そうならないように、現場でのケア業務が終わったあとに残業をして、モニタリングを作成している介護職員がまだまだ多いのではないでしょうか。

モニタリングは、気負って素晴らしい文章を書く必要はありませんが、問題点や改善点を見落とさないように様々な情報を集める必要があります。

限られた時間の中で、情報を拾い集めて評価や分析をしていく必要があるために、「介護職員を苦しめるモニタリング」だと言えます。

 

 

 

最後に

 

今回は「介護職員を苦しめているモニタリング」について、出来るだけわかりやすく解説しました。

本来は施設ケアマネがモニタリングを行う必要があるところを、多くの事業所では介護職員が行っています。

まずはそういう実態があることを理解した上で、それならそうと介護職員が質の高いモニタリングを作成できるだけの時間が確保できるような体制づくりを検討していって欲しいと思います。

以上、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

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