「オバヘル」という言葉をご存知でしょうか(介護従事者の方ならご存知でしょうが)。
誰が最初に言い出したのかは定かではありませんが、オバヘルとは「おばさんヘルパー」の略になります。
つまり、中高年の女性介護職員(ヘルパー)を指す言葉になります。
介護現場には様々な性格や人格の介護職員が存在しますが、オバヘルは「お局職員や老害職員と似ているようでちょっと違う存在」になります。
但し、オバヘルは中高年の女性職員を指す言葉なので、性格や人格での分類には適していないのですが、それでもやっぱり多くの介護現場で同僚の介護職員が対応に苦慮しているのが「オバヘル」です。
オバヘル全員(又は大多数)が現場をかく乱させているわけではないにしても、高確率でかく乱させるようなオバヘルが存在するというのも間違いではありません。
特にその特徴として揶揄されるのが「歩くスピーカー」という代名詞です。
あまり良い印象がなく「うるさい」「うざい」「鬱陶しい」「偉そう」「迷惑」「嫌い」という思いを抱いてしまっている人も多いのではないでしょうか。
今回は、介護現場を撹乱させる地獄の「歩くスピーカー」の異名を取るオバヘルの10の特徴と対処法について記事を書きたいと思います。
介護現場をかく乱させるオバヘルの10の特徴
オバヘルは何故、介護現場をかく乱させるのでしょうか。
お局職員や老害職員と共通する部分もありますが、異なる部分もあります。
その無間地獄のような特徴をみていきたいと思います。
特徴①「図々しい」
現在20代の方はご存知ないかもしれませんが、1988年から1998年にかけて「オバタリアン」という漫画が連載されていました。
アニメ化もされ、特別番組として「わてら陽気なオバタリアン」というドッキリ番組も放送されました。
この「オバタリアン」の特徴(キャラクター)が、おばさんにありがちな我が強くて図々しくてふてぶてしくて厚かましい中年女性です。
もし、このような中年女性が介護現場にいたら周りもかく乱されてしまうことでしょう。
そうです、このオバタリアンの特徴そのものが「介護現場をかく乱させるオバヘル」なのです。
特徴②「他人の迷惑を省みない」
我が強くて図々しくてふてぶてしくて厚かましいのですから、当然人の迷惑などお構いなしです。
全て自分がやりたいようにやり、我が道を行きます。
介護現場で「唯我独尊」「オバヘル無双」をやられると周りは非常に困るのです。
何故なら、「統一した介護」ができず、ひいては利用者にも迷惑を掛けることになってしまいます。
注意しても
「あらそう?」
「知らなかった」
「でも私はこれがやりたいの」
「いいのいいの、大丈夫」
「固いことばっかり言っていないでもっと臨機応変に考えなさいよ」
などと独自の反論をしてきて引きません。
空気も読めないため、いつまで経っても平行線です。
何とか説き伏せたとしても、数時間後にはまた「唯我独尊オバヘル無双」が始まります。
利用者という他人の介護をする仕事なのに、常に自分優先で自分勝手で他人の事など何も考えず周りに迷惑を掛けるのが特徴です。
特徴③「おせっかい」
中高年の女性にありがちな特徴に「おせっかい焼き」がありますが、オバヘルも漏らさず「おせっかい」です。
本人は良かれと思って親切心や老婆心で発言したりやったりしているのでしょうが、周りからしてみれば「小さな親切大きなお世話」です。
人のプライバシー領域やデリケートな問題に対しても、ズケズケと土足で踏み込んできます。
「まだ結婚しないの?」
「早く子供を作った方がいいわよ」
など、人のパーソナルスペースを軽々と越えてきます。
そして、オバヘルにしてみれば「100%善意」「思いやり」なのですから、これを拒否したり拒絶したりすると逆ギレしたり不機嫌になったりします。
「人のお世話をすることが大好き」という意味では、介護の仕事に向いているのかもしれませんが、自分の好奇心を満たすためだったり出しゃばった独自の善意による過剰なおせっかいであれば、利用者よりもオバヘルに気を遣わなくてはならなくなり、周りの職員も現場もかく乱されてしまいます。
特徴④「都合が悪くなると年齢を言い訳にする」
普段はとても威勢がいいのに、自分の都合が悪くなると途端に表情を変え、年齢を言い訳にして拒絶したり拒否したり逃げたりします。
自分のやりたいこと(体操やレクリエーションなど)は進んでするのに、体力的にきつい移乗介助や入浴介助を避けたり、書類仕事やパソコン作業から上手く逃げようとします。
「もうおばちゃんなんだから」
「おばちゃんをちょっとは労わってよね」
「歳で足も腰も腕も肩も首も痛いのよ」
「今更この歳でパソコンなんて覚えられやしないわよ」
「若い人がやればいいんじゃないの」
などと言い急に老け込みます。
加齢による体の不調は仕方がないにしても、毎日のようにこのような状態だと周りの職員の負担が大きくなり現場がかく乱されます。
特徴⑤「恥じらいがない」
人間、歳とともに恥も外聞もなくなっていくのは男女ともに共通しているのかもしれません。
他人にどう見られようが気にしていないので、品が無く罪悪感もありません。
利用者が使用するための共同トイレで鍵もかけずに用を足している最中のオバヘルと遭遇した時は、こちらの方が気まずくなってしまいます。
介護現場では恥ずかしいなどと言っていられない場面もありますが、度を超すと現場がかく乱されてしまいます。
特徴⑥「無視をしたり嫌味を言って人をいじめる」
性格がきつかったり勝気で独特の価値観と世界観を持っているオバヘルは、自分の都合が悪くなると無視をしたり、逆ギレや逆恨みをして周りの職員(特に弱者)をいじめたりします。
一応「いじめは悪いこと」という認識は持っているようなので、「無視」や「嫌味」や「意地悪」に走る傾向があります。
しかし、「無視や嫌味や意地悪もいじめになる」という認識がないのが残念なところです。
話し掛けてもプイっと横を向いてどこかへ行ってしまったり、ネチネチと嫌味を言い続けたり、しょうもない意地悪をして相手の心を削っていきます。
そんなことを毎日のようにしていると「オバヘルと一緒に働くのはもう嫌だ」と思う人が出てきてしまい、現場がかく乱されてしまいます。
特徴⑦「若い男性職員には甘く女性職員には厳しい」
オバヘルは若い男性職員には甘く、女性職員には厳しいという特徴があります。
若い男性職員には「母親(オカン)目線」や「異性としての目線」があり、女性職員には「姑目線」があるように感じます。
そしてやたらと指導したがり仕切りたがります。
介護現場で根拠のない指導をされることほどつらいことはありません。
職場に家庭の縦社会制度を持ち込まれると、現場はかく乱されてしまいます。
特徴⑧「根に持つ」
オバヘルはサバサバしているように見えて、意外と根に持ちネチネチと同じ話をしてきます。
数日経ってからこちらが忘れていたようなどうでもいい内容を急に持ち出し
「ずっと考えていたんだけどさぁ、この前のアレ、どういう意味?」
などと言って蒸し返したり掘り返したりします。
建設的な内容であればいいのですが、その多くは「自分の感情のおさまりがつかない」「不完全燃焼で納得ができていない」「気になって仕方がない」という自分本位の内容です。
職場なのですから、全て自分の思い通りにいくはずがないのですが、思い通りにいかないことが我慢できないのです。
既に決まったことを蒸し返したり、根に持って同じ話を何度もネチネチと話してくるようなことが続くと仕事どころではなくなり現場がかく乱されてしまいます。
特徴⑨「意外と雑」
年の功と経験年数があり、介護職員としてもベテランのオバヘルなので仕事は丁寧なのかと思いきや「意外と雑」です。
オムツ交換をしてもちゃんと当たってなかったり、物品の整理整頓が出来ていなかったり、仕事が雑な上に異常に遅かったりします。
指摘すると、年齢を言い訳にしたり逆ギレをしてやり過ごします。
雑な仕事をのらりくらりとするようなオバヘルがいると、他の職員の負担が大きくなってしまい現場がかく乱されてしまいます。
特徴⑩「地獄の歩くスピーカー」
オバヘルの代名詞でもあり異名でもあるのが「歩くスピーカー」です。
とにかくおしゃべりと噂話が大好きで、話し出したら止まらず仕事を忘れて延々と喋り続けています。
それだけに留まらず、聞いた情報をすぐに他の人にも喋りたがります。
オバヘルに「ここだけの話(内緒話)」は通用しません。
内緒話をしても、数日後には職場中や地域中に広まっていることでしょう。
内緒話や自分の身の上話が職場中だけに留まらず地域中に広まってしまうとしたら正に地獄です。
「歩く街宣車」
「口が軽い間諜者(スパイ)」
「スイッチの壊れた拡声器」
と言い換えることもできます。
つまり、大変口が軽いのです。
職員の情報だけでなく利用者の個人情報も漏洩しやすいために、こういったオバヘルの取り扱いには細心の注意が必要です。
仕事もせずにペチャクチャと喋り続け、情報漏洩のリスクが高いオバヘルがいると、周りの職員の負担が大きくなるだけでなく事業所の信用問題にまで発展するリスクがあるために、現場がかく乱されてしまいます。
但し、「広めて欲しい情報もすぐに広めてくれる」ので、そういった時には重宝したりもします。
オバヘルの対処法はある?
介護現場で暗躍する地獄のオバヘルの対処方法はあるのでしょうか。
対処法①「上司に相談報告」
一番オーソドックスな対処法です。
まずは、上司に相談報告をして助けを求めるのが最優先です。
但し、十中八九「無意味な結果」になってしまうでしょうが、「上司には報告してある」という既成事実を作っておくことを目的とする対処法です。
何故、無意味な結果になってしまうのかと言うと、
- 上司は既に知っている
- 知っているが何も対策ができない
- 上司さえも手に負えない
- 愚痴や不平不満を言うなと一蹴されてしまう
という現実があるからです。
対処法②「距離感を保つ」
上司が何も対応をしてくれない以上、自分で自分の身を守らなくてはなりません。
本来はオバヘルには「接しない」「相手にしない」「近づかない」という方法が一番良いのですが、介護現場で一緒に働いている以上そうはいきません。
それをしてしまうと連携が取れず、ミスや事故が発生しやすくなるためです。
ですから、「近づき過ぎず離れ過ぎず、適度な距離感を保って仕事をする」ことが重要です。
なかなか難しいかもしれませんが、オバヘルが近づいてきたらこちらが少し離れて、オバヘルが遠ざかっていったらこちらが少し近づくのです。
業務負担が大きいことにはあまり変わりありませんが、オバヘルと真正面でぶつかって精神衛生上良くない被害を被ったり、完全に居ないものとして扱って全ての業務負担を抱えてミスや事故が発生するよりも大分マシです。
「割り切って働く」ということになります。
対処法③「信頼関係を構築する」
オバヘルだって全員が悪の権化というわけではありません。
我が強いけど根は良い人だったり、おせっかいだけど気さくな人だったりします。
自分だって完璧な人間ではないはずです。
人間誰しも良い部分もあり悪い部分もあるのです。
ですから、オバヘルの悪いところだけでなく良いところも汲み取って、良好な人間関係と信頼関係を構築できればほぼ解決します。
しかし、自分もオバヘルも人間である以上、全ての人に上手くいくわけでもありません。
自分とオバヘルの性格や能力や人間性や相性も関係してきますし、我慢できないことは我慢できないのは当然です。
介護職員の離職理由の常に上位にあるのが人間関係です。
最悪の場合は退職したり転職するという選択肢も持っておきながら、信頼関係を構築できるように心掛けてみるのもひとつの手段と言えます。
最後に
今回は、介護現場を撹乱させるオバヘルの特徴と対処法について記事を書きました。
オバヘルは中高年の女性介護職員を指す言葉ですが、全てのオバヘルが悪の権化で存在するだけで無間地獄の世界になってしまうというわけではありません。
中には尊敬してしまうようなスペシャルなオバヘルもいます。
ただ、オバヘルの言動に悩まされている介護職員が多いのも事実です。
オバヘルに振り回されたり思い悩んだりして身動きが取れなくなってしまうこともあるかもしれませんが、まずは「自分を見失わないこと」が大切です。
最終的には「自分のためにはどうするのが一番良いのか」ということを忘れないように、自分にとってプラスになるような判断をすることを心掛けましょう。