介護の仕事は「奉仕」や「ボランティア」に準ずる仕事なので「高望み」をしたり「自分の幸せを追求」することは良くないこと、という風潮が未だにあります。
もうそろそろ介護職員を「奉仕」や「ボランティア」という括りから解放して欲しいのですが、特に社会福祉法人にはまだまだこういう考え方が根強く残っています。
ですから、介護業界は「上見て暮らすな、下見て暮らせ」を地でいっているのです。
今回は、「向上心は必要なのに高望みは許されない特殊な介護業界」について記事を書きたいと思います。
介護業界の「上見て暮らすな、下見て暮らせ」
「上見て暮らすな、下見て暮らせ」とは本来、「他人を羨ましがって高望みするのではなく、自分は恵まれていると思って自分の足元を見て暮らせ」という戒めにも似た言葉として使われています。
では、介護業界では具体的にどのような使われ方をしているのでしょうか。
①給料
介護職員の給料は低空飛行を続けているわけですが、「給料を上げて欲しい」「給与水準を改善して欲しい」と訴えると
「介護職員よりもっと給与水準の低い職業もあるんだよ」
「あなたよりもっと給料の低い介護職員もいるんだよ」 「だからあなたは恵まれているのだから給料を上げて欲しいなんて言うのはやめなさい」 |
ということを言われます。
②人員不足
常に介護現場は人員不足のため、職員一人ひとりの業務負担が大きくなっています。
そこで「人員を補充して欲しい」「人材を確保して欲しい」と訴えると
「うちの事業所よりもっと人材不足の事業所があるんだよ」
「このユニットよりもっと人員不足のユニットがあるんだよ」 「よそは人員不足でも皆で協力して頑張っているらしいよ」 「だからあなたの職場は恵まれている方なのに人員を確保して欲しいなんて言うのは楽をしたいだけなのでは?」 |
ということを言われます。
③職場環境
人員不足であれば大体は職場環境は悪くなるものですが(残業や業務過多や休憩が取れない等)、他にも人間関係などで雰囲気が悪いことも多くあります。
そこで「職場環境を改善して欲しいです」と訴えると
「ここよりもっと劣悪な事業所もあるんだよ」
「他のユニットはもっと職場環境が良くないのに頑張っているよ」 「だからあなたは恵まれている方なのだから職場環境を改善して欲しいなんて図々しい」 |
ということを言われます。
要望を高望みと勘違いしている業界
介護業界は今まで職員を大切にしてきませんでした。
使い捨てのボロ雑巾のような扱いをしてきた結果が、現在の人材不足を招いていると言っても過言ではありません。
つまり、本来あるべき
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というものは、一切合切「高望み」「わがまま」「不平不満」として取り扱われてきたのです。
ですから、決して「上」や「より良い状況」や「改善」などの要望を口にすることは許されず、「現状より」「自分達より」「下」を見て働くことを強いられてきたのです。
この状況は
「向上心は必要なのに高望みは許されない」
「介護に正解はないのに不正解はある」
というような「意味のよくわからない特殊な業界」だと言えます。
最後に
今回は、「上見て暮らすな、下見て暮らせという介護業界の特殊な実情」について記事を書きました。
何故、このような不可解なことになってしまっているのかは「奉仕」や「ボランティア」の延長線上にある「福祉論」を歪曲してしまった結果ではないでしょうか。
最近は、ひと昔前に比べるとマシにはなってきたように思いますが、それでもまだまだ根強く残っています。
「頑張ればこんな良い待遇が待っているよ」
「もっとより良い職場環境を目指そうね」
という「上」を向けるような風を取り込んでいくことで、モチベーションの維持が可能になるのです。