「夜勤に介護ロボット導入加算」の真実→「センサー対応で余計に労力が掛かる結果に」

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2018年4月に行われた介護報酬改定に新たに加わった加算がいくつかあります。

その中で、夜勤に関する加算である「介護ロボットの導入」について記事を書きたいと思います。

昨今の介護業界は、介護ロボットやAIの導入に期待が寄せられています。

この加算は夜間に「加算要件に見合う割合の介護ロボットを導入すれば加算が貰える」ということなので、介護職員にとっても朗報に見えます。

「介護ロボット」と聞くと、「Pepper(ペッパー)くん」のような人型のロボットを想像します。

「それの進化型なのか」

「マンパワーを温存したり人員不足を補えるような導入になるのか」

「パワードスーツのような装着型の力学ロボットかもしれないな」

などと期待は膨らみます。

きっと皆さんもそういうものを想像していることでしょう。

しかし、真実は想像を下方修正せざるを得ないものでした。

今回は、「介護ロボット導入加算の真実と余計に労力が掛かる結果になってしまう実情」について記事を書きたいと思います。

夜勤に介護ロボット導入の真実

夜勤に介護ロボット導入加算とはどういうものなのでしょうか。

そもそも、対象となる介護ロボットはどんなもので、既に導入している介護施設は存在するのでしょうか。

加算要件

今回の改定で「最低基準よりも1人以上多く置いた場合」という加算要件に以下の2つの要件を追加しようとしています。

1.ベッド上の入所者の動向を検知できる見守りロボットを、入所者数の15%以上に設置している場合

2.見守りロボットを安全かつ有効に活かすための委員会を設置し、必要な検討を行っている場合 この両方を満たしている場合に、夜勤職員の数が最低基準を0.9人上回っていれば取得できるようにするとしています。

【引用元】厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第153回(H29.11.29)資料5(PDF)

加算はありがたいことなのですが、どうも昨今の介護報酬は加算に頼りがちです。

「加算に頼る」ということは、我々の給料で言えば「手当に頼る」と同義です。

つまり、加算という手当が無いと、著しく低い介護報酬になってしまうという現実があります。

加算を取る為には、事業所や現場職員の負担を増やすことなるので、報酬が増えて当然なのですが、一番の闇は「その加算は現場職員に行き渡らないのに負担だけが増える」という所にあります。

事業所は現場に更に負担を強いて加算を取ろうとするでしょう。

加算という見返りがあるからです。

しかし、現場職員には何の見返りも確約されていません。

加算ばかり増やすよりも、基本報酬を増やして(給料で言えば基本給)、現場職員までその対価が行き届くシステムを構築する必要があると思います。

現状の「ハイリスクローリターン」ではいつまで経っても人員不足は解決しないことでしょう。

介護ロボットの真実

今回の介護報酬改定に伴う説明会に出席した職員が、その後えらくセンサーマットの台数を気にしていました。

「あと7台あれば加算が取れるな」

などと言っているので何のことかと思っていると

「見守りロボットが入所者数の15%以上あれば加算が取れるようになったんだ」

と言うのです。

つまり、現状で厚生労働省が言う「介護ロボット」とは

  • センサーコール
  • センサーマット
  • サイドセンサー

等の「感知式の介護用品」のことだったのです。

「センサー」とは利用者の動きを感知してナースコールが鳴る仕組みの介護用品です。

マットの場合は利用者が足で踏んずけた際にコールが鳴り、サイドの場合は利用者がベッドに端坐位になる等の負荷を掛けるとコールが鳴る仕組みです。

台数が加算要件に足りているかは別として、既にセンサーを導入している介護施設は全国に多数あることでしょう。

「介護ロボット=センサー」

という真実は、介護職員ならわかるでしょうが「期待を下方修正するに十分足りる現実」になります。

夜間のセンサー対応は労力が増す

そもそもワンオペ夜勤では、同時にだったり頻繁にナースコールが鳴るとその対応をするだけで過酷です。

普通のナースコールとセンサーコールの違いは、前者は利用者の意思で鳴るコールであるのに対して、後者は利用者の意思は関係なく動きを感知して鳴るコールであるという点です。

介護施設には必ずナースコールが設置されています。 介護保険法に基づく「施設及び設備並びに運営に関する基準」によって設置が義務付...

「ロボット」と言うものの、結局は「介護用品」ですから、センサーコールが鳴れば介護職員が駆けつけて対応をすることになります。

本当にセンサーが必要な利用者に最低限使用する分には、リスクの観点から見ても効果的と言えます。

但し、センサーは転倒等を予防するものではなく、利用者の動きを把握して職員が適切な対応をするものです。

したがって、台数を増やせば増やすほど介護職員は走り回らなければならなくなります。

それでは余計な労力が発生してしまい本末転倒です。

厚労省との温度差

加算要件に「夜勤職員の数が最低基準を0.9人上回っていれば取得できる」とありますが、これは「月全体の総夜勤時間数の90%について、夜勤職員の最低基準を1以上上回れば足りる」という趣旨になります。

つまり、「プラスの人員が居ない時間や居ない日もある」ということになります。

正直、センサーの台数を増やしたところで、「労力は全く変わらないどころか増していく」ようにしか思えないのですが(実際、センサーが2台以上ある時の夜勤はいつもより過酷でした)、厚労省は

  • 夜間の巡視時間を減らせる
  • 夜勤職員の勤務時間が短縮できる
  • 夜勤の休憩時間を長く取れる

という「夜間の見守り機器の導入はメリットがあるというお話し合い」をしているようです。

どこかのモデル事業所のデータを参考にされているのだとは思いますが、「実際にセンサーコール(呼び出しのナースコールも)が鳴り響く介護現場と厚労省のお話し合いの間には温度差」があるように感じます。

そもそも、センサーは「身体拘束の1つ」「グレーゾーン」として取り扱われていたものだったのに、今度はそこには触れず「介護ロボット」「見守り機器」として導入を推奨してくる姿は「ちょっとよくわからない」と思ってしまいます。

介護施設では「身体拘束」は虐待に当たるので基本的にやってはいけません。 「基本的に」というのは、ある3つの要件(三原則)を満た...

最後に

今回は、「夜勤の介護ロボット加算の真実」と「センサーを闇雲に増やすだけでは介護職員の労力や負担は更に増してしまう理由」について記事を書きました。

介護ロボットと言われたら人工知能を搭載した人型ロボットを想像してしまいますが、残念ながら現状では「センサーが介護ロボットである」ということのようです。

もちろん、適切にセンサーを使っていけばメリットも多いのですが、いつの間にか「設置台数を増やすことを推奨される方針」に変わってしまいました。

その結果、介護職員の負担を増やすことにもなりかねません。

その原因は「介護保険を作っている人と実際の介護現場との温度差」ではないでしょうか。

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