人員不足の介護事業所には共通する特徴があります。
事業所や上司の方針が「自分たちを棚に上げた綺麗ごとばかり」ということです。
この「事業所の理念や方針」に嫌気が差して「辞めていく職員」があとを絶たず「求職者」さえ寄り付きません。
その結果「常に人員不足に陥る」わけですが、「綺麗ごとは耳触りが良く倫理的にも間違っていないと受け止められがち」なので、とてもたちが悪いのです。
今回は「自分たちを棚に上げ綺麗ごとばかり言っている人員不足の介護事業所の特徴」について記事を書きたいと思います。
人員不足の介護事業所が言いそうな3つの綺麗ごと
綺麗ごとに共通しているのは、「利用者の権利は立てるが、介護職員の権利はないがしろにする」ということです。
利用者の人権を守るためには、「介護職員の権利も確保されていないと実現不可能」という当たり前のことがスッポリ抜け落ちてしまっています。
「だから人員不足に陥る」という理屈なのですが、人員不足の介護事業所の経営者は未だそのことに気づかず、恥ずかし気もなく綺麗ごとを言います。
そんな経営者や上司が言いそうな代表的な3つの綺麗ごとをご紹介したいと思います。
綺麗ごと①「介護をさせて頂く」
完全に精神論です。
誰しも働いている以上「介護をしてやっている」とは思っていません。
普通に「介護をしている」のです。
「サービス料を頂いているのだから「介護をさせて頂く」のだ」と教えている事業所もあるかもしれませんが、そもそも介護サービス費の利用者負担は1割~3割でしかありません。
残りは「介護保険」から支払われています。
介護保険の財源の半分は公費で、約3割は40歳以上の現役世代(第2号被保険者)の給料から天引きされている「介護保険料」です。
つまり我々だって、なけなしの給料の中から「間接的に利用者のサービス料を支払っている」のです。
それは制度上、仕方のないことなのですが、まずはそういう仕組みを理解しておく必要があります。
介護保険制度が理解できていない利用者が言うのならまだしも、理解しているであろう事業所が言うのですから介護職員にしてみれば四面楚歌状態です。
そんな押し付けがましい事を言う前に「介護職員に気持ち良く働いて頂く」「介護職員に法律で定められた休憩や有給を取って頂く」ということを考えてみてはいかがでしょうか。
綺麗ごと②「利用者はお客様」
確かに利用者負担が1割~3割であってもサービス料を支払っていることには違いないわけですから「利用者はお客様」という考え方は理解ができます。
しかし、ここで問題となるのは「お客様を通り越えて召使いのようなサービスを強要していませんか?」「利用者からの暴言等の問題行動を放置していませんか?」ということです。
介護職員は仕事としてサービスを提供しているので、何でも言う事を聞く召使いではありません。
介護職員に自己犠牲を強いて「介護職員の人権や権利侵害を放置している」のだとすれば明らかに不法行為であり治外法権の異常な世界です。
「利用者はお客様」という考え方にはとても大きな矛盾があって、本来「違法行為をする人はどの業界においてもお客様ではない」のですが介護現場ではそんな利用者でもお客様として扱います。
この話をすると「認知症は病気なんだから…」と言う人が現れますが、その点については今後の記事で触れていきたいと思いますので今回は割愛します。
しかし、そんなことばかり言って介護職員の人権をないがしろにしてきた結果が人員不足を招いているのではないでしょうか。
綺麗ごと③「ありがとうが最高の対価」
これも完全な精神論です。
介護職員自身が言うのならまだしも、事業所が言うので「刷り込み」や「押し付け」の方針になります。
要は介護職員というものは
「低賃金で当たり前」
「お金を求めるのは心が汚い」
「ありがとうという言葉を貰うために馬車馬のように働け」
ということを暗に言いたいのです。
しかし、我々介護職員はボランティアではなく仕事として介護サービスを提供しています。
「ありがとう」の言葉だけでは生活が成り立ちません。
「やりがいに対する対価は賃金や手当」にしてもらわないと、俗に言う「やりがい搾取」ということになってしまいます。
もちろん「そういう気持ちで仕事をしよう」という精神論も理解ができますが、本当にそれだけしかないのであればモチベーションを維持することが困難になります。
そろそろ「生活が豊かになる対価」を用意しなければ人員不足が解消することはないでしょう。
最後に
今回は「人員不足の介護事業所が言いそうな3つの綺麗ごと」をご紹介しました。
「介護をさせて頂く」「利用者はお客様」「ありがとうが最高の対価」という考え方は良いのですが、介護職員への権利侵害を放置したままそんな事を言っているようでは「不健全な運営」と言わざるを得ず、職員も嫌気が差してしまうでしょう。
そしてこういうことを「現場にも入らず賃金を最高の対価として貰っている管理者や経営者」が言うのですから余計に反感を買ってしまいます。
まずはそういう現実に「気づく」必要があります。
介護現場でも「気づき」は大切ですが、管理者や経営者ももっと気づいて欲しいものです。