介護事業所の多くは、「親睦会」という職員互助会があるかと思います。
毎月決まった金額が「親睦会費」という名目で給料から天引きされています。
この親睦会に「あまり価値を感じない」、いやむしろ「どちらかと言えば嫌」という人も多いのではないでしょうか。
そんな価値を感じない嫌な親睦会なのですから「会費を天引きされるのも嫌」「可能なら退会したい」と思っている人もいるかもしれません。
今回は、介護事業所の親睦会が嫌な理由と退会することは可能なのか、ということについて記事を書きたいと思います。
親睦会が嫌な理由
親睦会の目的や存在意義は、職員間の親睦を促進させたり、職員互助で慶弔費が支払われたり、その他福利厚生に関することになります。
基本的に頻度が多いのは年に何度か開催される「会員が集まる飲み会」がメインとなってしまっているきらいもあります。
そんな親睦会ですが、何故多くの人が嫌がるのでしょうか。
理由①「強制加入」
嫌がる以前に、正職員であれば「強制加入」になっています。
嫌だとか嫌じゃないとかは関係ありません。
選択肢は与えられず、否応なしに加入させられること自体に嫌悪感を抱いてしまうのです。
もちろん、法的に考えれば親睦会の強制加入は妥当ではありません。
しかし、入社書類と一緒に渡される加入申込書に何の疑いもなく記入して提出をしてしまえば加入成立です。
親睦会の規約にも「正職員以外は任意とする」という文言が入っていれば「正職員は強制なのか?」という読み替えをしてしまいます。
ましてや、「右も左もわからない一番下っ端となる新人が加入拒否をしにくい」という立場を逆手に取った強制加入になります。
理由②「飲み会の参加も半強制」
仕事以外で会社の人とあまり会いたいとは思いません。
本当に会いたい人や一緒に飲みに行きたい人がいれば個々で勝手に行くでしょう。
親睦会の飲み会は、会いたくもない上司や全く知らない人まで一堂に介し半強制参加です。
都合が悪くて行けない場合は「お金が返ってこない」場合もあります。
「行きたくないけど、行かないとお金を損する」というジレンマの中で参加している人もいます。
また、介護施設であれば遅出や夜勤があるので、勤務の都合上どうしても参加できない職員も出てきます。
その場合、飲み会代が返金される場合もあり、返金される勤務(遅出や夜勤)が職員同士で奪い合いになったりもします。
「親睦会の飲み会に行きたくないからその日は夜勤を希望します」
という本末転倒な勤務調整が行われていることもあります。
多くの人が望まない飲み会に意味や価値があるのでしょうか。
理由③「役員が年替わりで強制」
親睦会の役員の任期は1年で、毎年会員(職員)の中から選出されます。
合計8名 |
で構成されています。
この8名は、立候補や有志ではなく「1年交代で順番に白羽の矢が立つ」というシステムになっています。
これが厄介な慣習で「やりたくなくてもやらなければならない強制的なもの」になるのです。
先程、役員は8名と書きましたが、厳密にはその上に「顧問」「名誉会長」という肩書きの幹部が存在します。
この幹部だけは年替わりせず、毎年固定の人物になります。
口は出すけど面倒くさいことは他の役員にやらせる意味不明な存在です。
大変なのは駒使いの役員たちです。
業務時間外に会議や買い出しや準備が行われるため「親睦会の役員は完全に自己犠牲の存在」になるのです。
そんな状況なので、誰も役員だけにはなりたくないのです。
毎年、年度変わりの時期は「自分が役員に指名されませんように」と祈り戦々恐々としています。
しかし、残念ながら順番に回ってくるので、自分の順番が来たら否応なしに引き受けざるを得ないのが現状です。
1年間の役員業務が終わった職員は「ホッ」としています。
もうしばらくは役員に指名されることはないからです。
よくよく考えれば 「そんな嫌な思いしかしない親睦会が本当に必要なのか?」と思ってしまいます。
親睦会は退会可能?
親睦会が必要だと考えている人が1人でもいるのだとすれば必要なのかもしれませんが、加入未加入の選択肢はあって当然です。
しかし、先に述べたように入社書類と一緒に入会届を提出してしまっているので、考えなければならないのは「入会後に退会できるのか」ということです。
大して親睦にならないのに会費を搾取され、役員まで強制される親睦会には何もメリットを感じません。
親睦会を退会することは可能なのでしょうか?
法律的には退会できるが…
結論から言うと「当然退会することも可能」です。
しかし、現実にはその道のりは果てしなく遠いのです。
法律的に退会が可能だとしても、事業所はそうそう簡単には退会させてくれません。
親睦会は本来「職員互助会」ですから、必要な退会申請を行い役員に承認されれば退会可能なはずです。
しかし、厳密にはその役員の上に法人幹部が鎮座しているので、最終的には幹部の承認が必要になってきます。
その時点で真っ当な職員互助会ではなく「幹部の神輿をかつぐ会」になってしまっています。
それに、職員の退会希望を普通に受け付けていたら、ほとんど全員が退会しかねず親睦会というものが成立しません。
また、労使協定で親睦会費の引き落としを認めている場合や、退会規定が退会しづらいような内容で定められている場合もあるため、最終的には弁護士に間に入ってもらったり裁判で決着をつける所まで想定しておく必要があります。
ですから「正職員が親睦会を退会する道のりは果てしなく遠い」と言えます。
前例がないと退会困難
そもそも規約に「退会規定」さえない場合もあります。
過去に退会した前例が無い場合、事業所も前例を作らないように必死でしょうから退会は困難になってくると言えます。
逆に前例がある場合は、その前例に従って必要な手順で正式な手続きを踏めば意外と簡単に退会できる可能性もあります。
自分が前例を作るという手段もありますが、たかだか親睦会を退会するだけで、そんな時間も手間も掛けていられないのが正直な気持ちです。
仮に裁判までもつれ込んだとして、たとえ勝訴しても親睦会を退会できるだけであって、弁護士費用や裁判費用という余分なお金も必要になってきます。
介護職員の給料では捻出するのも困難です。
最終的にはそういうリスクや手間を天秤に掛けて「退会するのもしないのも棘の道ならばこのままでいいや」という選択をしてしまうのです。
法律的には強制されるものではなく、加入しない権利も退会する自由もあるにも関わらず「結局は自由も権利もあって無いようなもの」と言えます。
しかし、そこまでして本当に親睦会が必要なのでしょうか。謎でしかありません。
最後に
今回は、介護事業所の親睦会が嫌な理由と退会について記事を書きました。
親睦会の存在について同じような思いを抱いていらっしゃる人も多いのではないでしょうか。
退会の前例が無い場合は、退会することは難しいかもしれません。
まずは役員にそれとなく聞いてみるのもひとつの手段かと思います。
というか、自分がその役員になってしまう可能性もある戦々恐々としている親睦会ですが、根強いムラ社会の象徴と言えるのかもしれません。