2017年8月に報道された岐阜県高山市の老健で発生した介護事件の続報が報道されました。
当ブログでもこの事件について記事をいくつか書き考察してきましたが、今回の報道で進展があったので再びこの介護事件に触れようと思います。
事件の概要
まずは振り返りも兼ねて、以下に事件の概要をまとめたいと思います。
発生場所:岐阜県高山市の介護老人保健施設
発生月:2017年7月以降 初回報道月:2017年8月中旬 被害者:老健入所者5名 被害状況:3人死亡、2人入院 死傷原因:肋骨や頭蓋骨骨折 重要参考人:死傷者を担当していた男性職員 施設側の発言と対応:「五里霧中」「ほぼ100%、自分で転倒して死亡した」「男性職員と話し合いの結果、退職させた」「当初よりも事件的な可能性が強い印象がある」 男性職員の発言:「100%やっていない」 警察の見方:「事件と事故の両方で捜査」 |
以上のような状況のまま、新事実や進展の報道がされずまま1年半が経過しました。
そして2019年2月上旬に以下のような報道がされました。
ニュース概要
岐阜の介護施設連続死傷で元職員の男逮捕
岐阜県高山市の介護老人保健施設で2017年夏、入所者5人が相次いで死傷した事件で、県警は3日、あばら骨を折るなどして入院した90代の女性に対する傷害容疑で、元職員(33)を逮捕した。
【出典元】共同通信
「傷害容疑で逮捕」ということですから、警察は「事件と断定」したことになります。
逮捕されて終了ではないので、今後もなんらかの進展があるでしょうが、とりあえず大まかな真実が見えてきたと言えます。
違うニュースでは、被害者の次男が取材に応じています。
【独自】被害者次男「なぜこんなことできるのか」 岐阜・入所者死傷
2017年、岐阜・高山市の介護施設で入所者5人が死傷し、うち1人への傷害容疑で元職員の男が逮捕された事件で、被害者の次男が、FNNの取材に応じ、「自分の意思も伝えられない者に、なぜこんなことができるのか」と思いを語った。
傷害事件の被害者の次男は、「(認知症で)自分の意思もはっきり伝えられない者に対して、なぜこんなことができるのか」と話した。
被害者の次男は、憤りをあらわにした。
高山市の介護施設「それいゆ」では、2017年7月から8月にかけ、入所者3人が死亡、2人が大けがをし、このうち1人の女性入所者(当時91)への傷害容疑で、元職員の容疑者(33)が3日、逮捕されている。
警察は、容疑者の認否を明らかにしていないが、逮捕1週間前のFNNの取材に対し、事件への関与を否定している。
傷害事件の被害者の次男は、「(容疑者の)自白とか起訴される形になって、(ほかに死傷した)あとの方々の解決につながっていけば、母親の死も無駄ではない」と話した。
警察は、他の入所者が死亡した経緯などについても捜査している。
【出典元】東海テレビ
認知症者等の高齢者を相手にする「介護職員」が何故、このような事件を起こすのか、何故、このような事件が頻繁に発生しているのか、ということは被害者やその遺族のみならず、世間の人が不思議に思う点かと思います。
今回は、その謎について解説していきたいと思います。
介護事件が頻発する理由
介護現場に関わらず、どんな環境であろうと、どんな理由があろうと、他者に手をあげたり違法行為や犯罪行為をすることは許されません。
それなのに、介護業界だけは他の業界に類を見ないほど、こういった犯罪行為や事件が多発しています。
まずその時点で、大前提として「業界として異常」だということを知っておいて欲しいと思います。
この事件が発生した介護施設がどうこうではなく、介護業界全体が「どう異常なのか」を以下で解説していきたいと思います。
理由①「サイコパスが集まりやすい」
介護業界は常に人材不足に喘いでいます。
その理由は、「低賃金」や「人間関係」や「職場環境」や「経営理念や方針のブラック性」などになります。
そういった部分を改善もせず、ポジティブキャンペーンをする業界なのですから「異常さ」は群を抜いています。
そんな業界なので、敷居の低さも異常であり、資質があろうがなかろうが、前科があろうがなかろうが、精神疾患があろうがサイコパスだろうが誰でも雇います。
そんな状況なので「サイコパスが集まりやすい業界」になってしまっています。
サイコパスが多くいる業界なのですから、こういった事件がいつ起きてもおかしくはないのです。
理由②「キャパシティの限界を超えやすい環境」
サイコパスなどではなく、普通の人も多数いますが、介護現場は環境的に普通の人でもキャパシティを超えやすい現状があります。
夜勤は一人の職員で約20名の利用者を介護しなければなりませんし、利用者からの暴言や暴力を受けても上司や会社は助けてくれません。
要は「人間として切羽詰まってしまう環境」しか待ち構えていないのです。
その上、低賃金ともなれば、何のために働いているのかがわからなくなり、精神のバランスを崩しやすい職業だと言えます。
そんな環境の中で働いていると、自分のキャパシティや許容量を超えてしまい、発狂してしまう介護職員が出てきてしまい、こういった事件へと繋がっていくのです。
理由③「ワンオペ夜勤が更に追い詰める」
介護事件の多くは一人体制の夜間帯に発生しやすい傾向にあります。
それは、利用者と1対1となる時間があまりにも長いからこそ発生してしまう悲劇とも言えます。
「1対1」という言い方には語弊があるかもしれません。
厳密には「職員1人対利用者20人の中で1対1になる時間が長い」ということになります。
助言をくれる人もフォローしてくれる人もおらず、排他的な環境の中で自分一人で対応をしていくうちに、事件に発展してしまうケースが考えられます。
理由④「将来性の無さ」
介護職員として働いていても、出世や昇格できる保証がないどころか、マトモな将来像さえ描けません。
50歳や60歳、70歳になろうと同じような給料で同じような業務をしている自分を想像すると嗚咽とともに絶望感に苛まれてしまいます。
「そんな将来しかないのならどうなってもいいや」とヤケを起こしてしまう人がいます。
業務過多な状況の中で将来性の無さも相まって、前後不覚の状態に陥ってしまうのです。
精神状態がおかしくなった異常な状態ですが、本人の中では「介護職員として働き続けること」と「塀の中で生活すること」に大差がないと錯覚してしまいます。
精神的に病んでしまう人を作りやすい環境が、こういった事件に発展してしまう可能性があります。
理由⑤「そもそも氷山の一角」
実際、ここまでの事件にはならないまでも、全国の介護施設では大なり小なり「事件っぽいもの」が発生しているのではないでしょうか。
介護職員が黙っていたり、上司が黙認していたり、事業所ぐるみで隠蔽している(若しくは事件を事故にすり替えている)という体質があります。
たまたま大事件になってしまったら「運が悪かった」と言わんばかりの異常な体質です。
つまりは、報道されているような事件は、全国の介護施設全体から見れば「氷山の一角」でしかないのです。
一歩間違えれば大事件へと発展し報道されるリスクを負いながら運営しているからこそ、こういった事件が後を絶たないのではないでしょうか。
最後に
「何故こんなことができるのか」という問いに関しては、「容疑者である元男性職員の人間性や資質に重大な問題があった」ということになります。
しかし、こういった事件が多発している背景には「介護業界の異常さ」が重要な鍵を握っています。
人員不足や低賃金、業務過多や自己犠牲を強いる理念や方針こそが、今の介護業界が悪名を轟かせている一番の原因ではないでしょうか。
介護業界であろうと介護現場であろうと、他者に手をあげたり犯罪行為をすることは許されません。
もし万が一、自分が他者を傷つけてしまうような精神状態に陥っていると感じた時は、すぐに介護現場を離れる判断をしましょう。
これは他者のためでもあり、自分のためなのです。