介護事件

岡山県勝央町の特養で職員22人が入所者の腹部をひもで縛る虐待報道考察

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今から数時間前に、岡山県勝央町の特別養護老人ホーム(以下、特養)で、職員22人が少なくとも11人の入所者に対して腹部をひもで縛ったり、居室に閉じ込めるなどの虐待行為を1年間に渡って何度も行っていた、という報道が流れてきました。

ニュース報道の詳細は下記リンクよりご参照下さい。

老人ホームで虐待か 入所者の腹部をひもで縛る【岡山・勝央町】(リンク先:岡山放送)

この虐待の発覚により、対応を指示していた介護主任など職員4人が2020年4月に解雇されているとのことです。

特筆すべきは、解雇された職員4人は「不当解雇として岡山地裁へ労働審判を申し立てている」という点です。

今回は、この特養での虐待報道について介護福祉士として考察していきたいと思います。

 

 

 

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岡山県の特養での虐待報道考察

 

 

「虐待は絶対にしてはいけない」という大前提のもとで、今回の虐待報道について以下で考察をしていきます。

(追記)

山陽新聞の報道によると、

  • 入所者数約70人
  • 介護担当職員の約半数の22人が虐待に関わった
  • 規定の分量の食事を与えなかったり「はよう食え」と暴言を吐いた
  • 部屋から出れないようバリケードを作った
  • ズボンの紐をきつく縛って脱げないようにしていた(←2020年3月に勝央町へ匿名で通報)

という状況のようです。

要は、移動を封じる目的で縄や紐で腹部を縛ったのではなく「ズボンを自分で脱いだりオムツを外したりしない目的でズボンの紐を強く結んでいた」という内容なので、考察内容が少しズレてくるかもしれませんが、「介護現場の根底にあるものは同じ」だと感じていますのでこのまま公開しております。

(追記ここまで)

 

身体拘束同意書が無ければ虐待になる

「虐待」と聞くと、悪意を持った殴る蹴るなどの暴力的な行為(身体的虐待)や汚い言葉で罵ったり侮辱するなどの行為(心理的虐待)を想像されるかもしれませんが、悪意が無くても虐待になってしまうことがあります。

今回のように「腹部を紐で縛る」「部屋に閉じ込める」という対応は「身体拘束」となり、「身体拘束同意書(以下、同意書)」の有無で虐待になるかならないかが分かれることになります。

極端な話、「安全確保のために車椅子の腰ベルトを装着する」という行為も同意書が無ければ「虐待」となってしまうのが介護現場なのです。

つまり、

  • 同意書があって身体拘束を行う(虐待ではない)
  • 同意書が無くて身体拘束を行う(身体的虐待や心理的虐待になる)

ということになります。

もっと言えば、「同意書という紙1枚で扱われ方や捉え方が全く変わってくる」のです。

ですから、介護現場では場合によっては身体拘束もひとつのケア方法であり、必要なプロセスを踏むことで行うことがあるのです。

「同意書を取ることができる条件(三原則)」などについては、下記記事にまとめていますのでチェックしてみて下さい。

介護現場では如何なる理由があっても身体拘束をしたら負けなのか

話を戻しますが、今回の虐待報道においては「虐待を行っていた」ということですから、「同意書が無かった(貰っていなかった)」ということになろうかと思われます。

 

職員22人が少なくとも利用者11人を拘束する闇

今回報道があった特養では職員22人が少なくとも利用者11人を日常的に拘束していたとのことですが、リアル介護現場を知っている私の率直な印象は、

  • 職員に悪意はなく致し方なく行っていたのではないか
  • 拘束をしなければ現場が回せないようなカオスな環境があったのではないか

というものでした。

何故なら、それだけ多くの職員が関わっていたということは、「そうしなければならない何らかの理由があった」と考えるのが自然だからです。

実際はどうなのかはわかりませんが、もしそうでなければ「組織ぐるみで悪意を持って拘束や虐待を行う極悪老人ホーム」になってしまいます。

22人もの職員が、「悪意の塊」「善悪の判断がつかない人ばかり」と考える方が不自然でしょう。

では、致し方が無く拘束をしなければならないようなカオスな環境とはどういうものでしょうか。

例えば、

  • 極度の人員不足
  • 徘徊、異食、弄便、暴言、暴力などの問題行動をする利用者

などが考えられます。

こういった環境の中で何とか介護現場を回そうとした場合、苦肉の策として「致し方が無く身体拘束をする」という考えに行き着いてしまうことは否定できません。

「極悪老人ホーム」であったにしても、「致し方がなく行った苦肉の策」であったにしても、どちらにしても職員22人が関わった身体拘束には闇深いものがあるのではないでしょうか。

 

残る違和感

報道では身体拘束(虐待)をしてしまった理由はわかりませんが、どちらにしても闇深さを感じることは前述しました。

しかし、まだまだ違和感が残っています。

  1. 何故、同意書を取らなかったのか
  2. 何故、解雇された職員が不当解雇を訴えているのか

という点です。

今回報道された特養での実情はわかりませんが、考えられる可能性について以下で詳しく解説していきます。

 

1.何故、同意書を取らなかったのか

もしも、この特養が「極悪虐待集団ではない」としたら、何故、身体拘束をする前に同意書を取らなかったのでしょうか。

同意書を貰っておけば虐待にはならなかったはずです。

考えられるのは、

  • 三原則の条件を満たしていなかった
  • 同意書が貰えない他の理由があった

ということです。

例えば、「人員不足で現場が回らない」という理由だけでは当然身体拘束の三原則を満たしておらず同意書は取れません。

しかし、その場合は管理者や施設長が何かしらの策を講じたり対応をして「職場全体で考える」ことが必要になってきます。

そうでなければ、現場だけで「苦肉の策」を講じるしか手がなくなってしまうのです。

手を下した職員だけに責任を押しつけて「トカゲのシッポ切り」をしてしまうことは、今まで何度もこういった虐待事件の報道などで目にしてきましたが、それでは根本的な解決にはなりません。

京都府京丹後市の特養で男性介護福祉士が利用者を殴り骨折させ逮捕された事件考察

また、他にも「身体拘束ゼロ」を掲げているような介護事業所である場合は、「身体拘束の三原則を満たしている利用者にも身体拘束をしない」という信念や理念を持っているため、今回の報道のような「副作用」「苦肉の策」が発生しやすくなります。

おむつゼロ運動もそうですが、「目的がゼロにすること」になってしまい冷静な判断ができず、ただただ介護現場に押しつけしわ寄せするだけのエゴイズムがカオスな状況を創り出し、現場サイドでの「苦肉の策」の温床になってしまうのです。

「ゼロ」の裏には「苦肉の策」が存在し、「ゼロ」によって「職員や利用者が被害者になる可能性」があることも肝に銘じておく必要があります。

おむつゼロ運動はゼロにすることだけが目的になっているのではないか

 

2.何故、解雇された職員が不当解雇を訴えているのか

悪意を持って虐待をしてしまったのならば、解雇されても仕方がありません。

しかし、今回報道された特養で解雇された職員4人は「不当解雇」を訴えているようです。

つまり、暗に「悪意があったわけではない」「致し方が無い理由があった」「解雇処分はトカゲのシッポ切りだ」と言っているように聞こえるのは私だけでしょうか。

実際はどうなのかは不明ですが、「何故、介護主任などが身体拘束(虐待)を指示していたのか」という原因の解明や、そもそも「1年間にも渡って日常的に行われていたのに何故、施設長は気づかなかったのか」ということを掘り下げていくことが重要です。

全ての介護事業所に言えることですが、介護サービスの向上に努める前に、まずは地盤や足元を固めていかなければ今後も砂上の楼閣となってしまうのではないでしょうか。

 

 

 

最後に

 

今回は、岡山県勝央町の特養で職員22人が少なくとも入所者11人に虐待をしていた報道について考察しました。

「介護施設や老人ホームで虐待があった=介護職員が悪」と思われがちですが、実際の介護現場ではそういう単純な話ではなかったり、環境的に闇深い状況があるのも事実です。

もちろん、虐待はしてはいけないことですが、同じようなことが二度と起こらないようにするために必要なのは「トカゲのシッポ切りではなく根本的な問題の解決」です。

実は私も似たような虐待ケースを体験したことがあります(直接私が関わっていたわけではありません)。

それについては、下記記事の「ケース⑥」で触れていますので興味がある人はチェックしてみて下さい。

介護職員はどんなことをしたらクビになるのか(又はならないのか)

 

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