アクシデント(介護事故)の第一発見者が不幸な理由と問題点

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以前、「気づきが多い職員ほど資質が高いのに介護現場では損しかしない実情」について記事を書きました。

「気づき」というのは介護職員にとって、とても大切なスキルであり専門性のひとつです。 利用者の表情・顔色・行動・言動を見ていち早...

気づきが多い職員ほど、インシデントやアクシデントと遭遇する機会が多くなります。

つまり「第一発見者」になりやすいのですが、そうなると業務が増えてしまいます。

百歩譲って、「仕事なのだからそれは仕方がないこと」だとしても、「責任を押し付けられたり悪者扱いにされてしまう」という不幸な状態があるのも事実です。

今回は「アクシデントの第一発見者が不幸な理由と問題点」について記事を書きたいと思います。

第一発見者が不幸な理由

本来、退勤直前だろうが、定時を回っていようが、夜勤明けであろうが、利用者にアクシデントが発生した場合は「人道的」にも「職業倫理的」にも対応をするのが当然です。

そのお陰で「早期発見」ができ、「初期対応」がスムーズにできるわけですから、謂わば「(大げさに言えば)命の恩人」「お助けマン」「介護職員の鑑」だと言えます。

しかし、現状の介護現場ではそうはなりません。

理由①「第一発見者に大部分の責任が掛かる」

アクシデントの第一発見者は、看護師や家族に報告や連絡を行い、状態に応じて医療機関へ繋げる初期対応者となるのですが、第一発見者であるが故に大きな責任がのしかかってきます。

  • 状況の説明
  • 事故報告書の作成

などの業務が増えてしまいます。

定時を過ぎている場合は、ある程度の所までやって、あとは残った職員へ引き継ぐことも可能ですが、その「ある程度の所まで」を終わらせるのに、結構な時間が掛かってしまいます。

また、引き継げるほどの職員がいない場合もあります。

その場合、残業をして業務をこなす必要があります。

アクシデントを発見してしまったばっかりに、大部分の業務と責任が圧し掛かってくるのです。

理由②「何故か悪者扱い」

第一発見者は「事故現場を発見した」というだけであって、何か悪いことをしたわけでも何でもありません。

しかし、介護現場では、何故か第一発見者や最後に対応をした職員を悪者に仕立て上げようとします。

「ケア方法に問題があったのではないか?」

「対応が不十分だったのではないか?」

「家族にちゃんと説明と謝罪をして理解を得られるような言い方をしなさいよ」

ということを言われてしまいます。

謝罪に関しては、以前の記事でも書いたように「自分が悪くない場合は謝る必要はない」と思っています(但し、「ご心配とお手数をお掛けした」という点においては、一言添えておく方が無難です)。

介護現場において介護職員はケアの最前線で働く仕事ですが、「謝罪」についても最前線に立たされている職種です。 「最前線」どころか...

上司などからは

「寝かせたベッド上のポジショニングに問題があったんじゃないか?」

「利用者の状態(活気がある)を状況的に判断して、他の対応方法があったんじゃないか?」

「もっとこまめに様子観察をしていれば未然に防げたんじゃないか?」

などという知恵熱が出そうなことを言われ、第一発見者が矢面に立たされます。

人員不足を棚に上げて、第一発見者を悪者扱いにしようとする事業所は不幸です。

現状の問題点

どこの事業所でもあり得そうな「こういう状況」ですが、大きな問題があります。

問題点①「気づかない職員の方が働きやすい」

介護職員にとって「気づき」は大切な専門性のひとつです。

しかし、「気づきすぎると責任が大きくなり悪者扱いまでされてしまう」という状況なので、業務量も増えてしまい、肉体的にも精神的にも疲弊してしまいがちです。

同じ給料なのに「気づかない職員の方が責任や業務が少なく働きやすい」という、いびつな環境になってしまっています。

これでは、本末転倒であり「正直者は損をする」状態であり、健全な運営だとは言えません。

「よく気づく職員ほど疲弊していき、辞めていく」という悪循環に陥っていると言えます。

問題点②「気づいても気づかないフリをする職員が出てくる」

「気づいた職員ほど不幸になる」という環境であれば「気づいても気づかなかったフリをしよう」という職員が出てきてもおかしくはありません。

要は「隠蔽」若しくは「ネグレクト(介護放棄)」ということになりますが、現在の介護現場の環境が生んだ「個々の自己防衛」でもあります。

そういう状況はとても不健全で、人道的にも倫理的にも不適切な考え方や行為になるのですが、その原因はやはり「職場環境」にあります。

職場環境が変わらない限り、隠蔽する職員が出て来るのは必然です。

隠蔽だけを責めれば、気づく職員ほど早期に退職していくでしょう。

健全なケア業務は、健全な職場環境と業界全体での意識改革が必須なのです。

最後に

今回は「アクシデントの第一発見者が不幸になってしまう理由と、そういった状態が続くことによって生み出される問題点」について記事を書きました。

リスクや事故に気づいた職員は、介護職員としての資質が高く、本来は褒められる必要がある存在だと思います。

業界全体で上司や家族も「事故を起こしやがって」という目線ではなく「早期に発見し対応してくれてありがとう」という考え方であれば、介護職員にとっても働きやすい環境になりますし、なにより健全な業務遂行が可能になります。

事業所としても、第一発見者ばかりに過大な責任や負担を押し付け、揚げ足を取るやり方をせず、業務を分担し事業所全体の問題として扱っていく体制が必要です。

どちらにしても、現状の人員配置では「事故が発生するのは必然」です。

「職員が何人いればいいんだ?」ということではなく、24時間付きっきりのマンツーマンの介護ではない以上、大なり小なり必ず事故は起こります。

まずは、そのことを理解した上で、職員が健全に業務を遂行できる環境を整備できれば、必然的に利用者も健全な環境で過ごすことが可能になります

逆に言えば、「職員が不健全な環境で働いている以上、利用者も不健全な環境で過ごしている」のです。

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