今回はリクエスト案件になります。
大抵の介護現場には介護拒否がある利用者が1人くらいはいるのではないでしょうか。
今現在働いている職場には介護拒否をする利用者は1人も居ない場合であっても、ある程度の月日や年月を介護職員として働いてきていれば過去に1度や2度は遭遇したことがあるかと思います。
利用者本人は介護をされるのが嫌で拒否しているわけですが、それでも介護をしなければならない現実があるのも確かです(最悪の場合は、介護放棄(ネグレクト)やセルフネグレクトになってしまいます)。
いや、こちらとしても「利用者本位」「利用者のニーズ最優先」という建て前を前面に押し出し、「介護拒否をそっくりそのまま利用者のニーズ」として捉え、介護をしなくても済むならそれはそれで大変ありがたい話ではありますが、そうは問屋が卸さず更にそこから「潜在的なニーズを見つけ出すために多角的複合的な視点から分析し、どうにかして介護保険制度上のレールに乗せていこう」としているのが介護現場の実情です。
詳しくは下記記事で解説していますのでご参照下さい。
さて今回は、そういった介護拒否がある利用者の対応を先輩介護職員が新人介護職員に押し付けている実情について記事を書きたいと思います。
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介護拒否がある利用者の対応を新人介護職員が押し付けられる実情
介護をすることを生業としている介護職員が利用者に介護を拒否されるわけですから、非常に心苦しい状況であることは察しがつくかと思います。
ベテラン介護職員でも手を焼く状況です。
それを新人介護職員に押し付けるという実情とは一体どういうものなのでしょうか。
実情①「業務を覚えさせるため」
先輩介護職員が新人介護職員に介護拒否の利用者の対応を押し付ける「大義名分」「建て前」はこれしかありません。
「新人なんだから早く介護拒否のある利用者の対応ができるようになりなさいよ」
「そのために何度も何度も介護拒否の利用者の対応をしなさいよ」
という思考回路に基づく考え方です。
親心や老婆心という建て前を前面に出して、一見、理に適っているように見えますが、やはりこれはただの押し付けです。
何故なら、本当に親心や老婆心があるのならば、新人介護職員が対応できるようになるまで一緒に対応をしてあげるはずだからです。
それが「人材を育てる」ということではないでしょうか。
人員不足などの理由もあろうかとは思いますが、新人職員が対応可能になるまで一緒に対応ができないのであれば、そもそも新人職員一人に対応させてはいけないのです。
新人介護職員にとっても、利用者にとってもストレスになりますし、お互い不要な体力を使います。
新人介護職員にしてみれば、何度も介護拒否をされたり悪戦苦闘しても対応ができないことで自信を喪失してしまいかねません。
「押し付けた当人(先輩職員など)しか得をしない」というものは誰がどう考えても不健全であり押し付けになります。
実情②「誰も対応したくない」
前述したように「押しつけ」になってしまう理由としては「誰も対応をしたくないから」です。
話が冒頭に戻ってしまいますが、「介護拒否のある利用者の対応をしなくて済むのなら、それはそれで大変ありがたい」という心理が隠れています。
ベテランであろうと、新人であろうと関わらないで済むなら関わりたくないのが本心です。
しかし、介護拒否のある利用者の対応も仕事の範囲内であるためそうは言っていられません。
そうなった場合、職員間のパワーバランスを考えると
- 新人介護職員
- 立場や発言力が弱い介護職員
- 押し付けやすい介護職員
などに白羽の矢が立つことになります。
「新人なんだから早く対応しなさいよ」
「介護拒否の利用者の対応は下っ端の役目」
といった思考回路が背景にあるのです。
そして、こういった押し付けの延長線上にあるのはいじめやパワハラです。
つまり、介護拒否のある利用者の対応を先輩職員から押し付けられる背景には「いじめ」「パワハラ」というような不健全な人間関係や職場環境があると考えられます。
新人いじめについては下記記事でかなり詳しく解説していますので、興味がある人は是非チェックしてみて下さい。
介護拒否や特定条件のある利用者について
「介護拒否」と一言で言ってもその種類や状況は様々です。
現状では、対応可能か不可能かの線引きは各事業所の裁量に委ねられています。
介護拒否の種類
介護拒否には下記のような種類があります。
- 食事拒否
- 入浴拒否
- 排泄交換拒否
- 服薬拒否
- レクや体操の参加拒否
など、基本的に「三大介護」と言われている「食事・入浴・排泄」に関わる拒否が多くみられます。
介護拒否の状況
介護拒否の状況も多種多様です。
まずは「認知症の有無」です。
認知症があることで拒否があるのか、認知症はないのに拒否をしているかで大別できます。
また、認知症がない利用者にあるのが、介護拒否ではないけれど「特定の条件を希望」するというパターンです。
例えば、「入浴や排泄は同性介助希望」などです。
同性介助希望の場合は、女性利用者が女性介護職員を希望することが多く、男性利用者が男性介護職員を希望することはあまり聞きません(ごく稀にはあるでしょうが)。
女性利用者が同性の女性介護職員の介助を希望する理由としては、
- 男性に介助されることの羞恥心回避
- 同性という安心感
- 女性の丁寧さ
などが求められていることが窺えます。
しかし、毎日そう上手く同性の介護職員が出勤しているとは限りませんし、もしそうなれば介助をすることができなくなってしまうリスクもはらんでいます。
同性介助希望をどう考えるか
同性介助希望を容認してしまった場合、必ずそうしなければなりません。
しかし、前述したように必ずしも同性介護職員が出勤しているとは限らないため、そういった希望をどう捉えてどう対応していくかが問題になります。
個人的な意見としては「事業所が判断すればいい」という当たり障りのない回答になってしまいますが、そもそも「事業所が決めたことを事業所が最後まで責任を持ってくれればどちらでもいい」というのが本心です。
そして、それが組織として当たり前であり、とても健全な姿ではないでしょうか。
それなのに、事業所で決めたことを最終的に現場介護職員に責任を持ってくる介護事業所があるためにおかしくなるのです。
現場の意見とすれば「必ずしも同性介護職員が出勤しているとは限らない」ということに鑑みれば、内容によっては同性介助はできないという判断が妥当です。
その現場の意見を事業所がどう捉えてどう判断するかということがとても重要で、「それでもやりなさい」ということであれば最終的な責任を現場に押し付けるのではなく、事業所全体の問題として対応することが重要です。
例えば、女性介護職員が出勤していない日は、
- 女性看護師やケアマネが介助を行う
- 女性事務員が介助を行う
- 女性事務長や理事長が介助を行う
というような指示や判断を出すくらいの気概を持って欲しいところです。
それこそが介護業界の皆様が大好きな「やりがい」というものではないでしょうか。
最後に
今回は、リクエストを頂きましたので、介護拒否がある利用者の対応を先輩介護職員が新人介護職員に押し付けている実情について記事を書きました。
介護職員としての本音で言えば、実際問題、介護拒否のある利用者には手を焼きます。
しかし、だからと言って介護をしないというわけにはいきませんし、ましてや立場の弱い新人介護職員に押し付けてしまうのも職場環境が不健全であることを証明していることになります。
介護拒否にしろ、特定の条件がある利用者にしろ、最終的には事業所が責任を持って判断して欲しいところではありますが、現状ではまだまだ現場介護職員にしわ寄せがいったり押し付けているために板挟みになっているのが実情です。
「押しつけ」や「しわ寄せ」が弱いところへ向かうように、介護拒否のある利用者の対応が最終的に新人介護職員へ向かってしまうのは「弱い者いじめ」「不健全な弱肉強食」「弱者を蹴落とす悪循環」が健在であるなによりの証拠と言えるのではないでしょうか。
そんなことでは介護業界の人材不足も解決しないのは当然と言えば当然です。