介護の都市伝説

特養の七不思議(2)「終わりが来ているのに病院へ」

投稿日:2019年4月9日 更新日:

 

今回は、介護の都市伝説とも言える「特養の七不思議」について記事を書きたいと思います。

他の七不思議については、下記記事をご参照下さい。

特養の七不思議(1)「食べられないのに食べなさい」

特養の七不思議(3)「望まないのに胃瘻(いろう)」

特養の七不思議(4)「胃瘻(いろう)をつけて注入量は変えない」

特養の七不思議(5)「先がないのに検診」

特養の七不思議(6)「先がないのに薬たくさん」

特養の七不思議(7)「親には延命、自分は平穏死」

特養の七不思議2つ目は「終わりが来ているのに病院へ」について記事を書きたいと思います。

 

 

 

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「終わり」とは何を指すのか

 

 

終わりとは「寿命」のことです。

つまり、命の灯が消えかかり「お迎え」が目前に迫っている状態を「終わりがきている」と言っているわけです。

「寿命」とか「終わりがきている」ということは、高齢者の「老衰」を意味することが多いかと思います。

七不思議の1つ目の「食べられないのに食べなさい」にも関係してきますが

 

「口から物を食べられなくなったら老衰」=「終わりが近づいている」

 

と考えられます。

但し、現代医学の発展により老衰の寿命をある程度までなら延ばす(延命)ことができるようになりました。

「点滴」であったり、七不思議の3つ目にある「胃瘻(いろう)」だったりします。

その可否については今回の記事では触れませんが、そういう選択肢があることは事実です。

 

 

 

不本意な「寿命」

 

 

終わりとは寿命のことですが、中には事故や病気などで不本意な終わり方を迎える人もいらっしゃいます。

「事故や病気が無ければまだまだ生きることができた」

という点では「寿命」とは言い難いものがあるかもしれません。

しかし広義の意味で一般的用法では、年齢がまだまだ老衰とは言えない若い年齢の人ならば「短命」と言われ「それがその人の寿命だった」ということを言われたりします。

ですから、高齢者の場合は尚更「事故や病気で亡くなることも寿命」だと捉えるのが一般的なはずですが、介護現場では責任問題が発生します。

もちろん介護現場での突発的な事故や病気は寿命とは言えないので医療機関へ繋げば良いのですが、問題となるのは「転倒や喉詰めや誤嚥などの事故が死因となった場合の責任問題」です。

「居室で勝手に転倒しても介護職員の責任」

「他利用者の介助中に転倒しても介護職員の責任」

「ケアが不十分だったから介護職員の責任」

という世界です。

賠償問題になったり慰謝料を請求されたり、事件として取り扱われ、刑事責任まで問われてしまうリスクがあります。

入所者がおやつを詰まらせ亡くなった事件で有罪判決「ショックを隠せない理由」

それ相応の対価や特殊な手当を貰っているわけではない介護職員は「ハイリスクローリターンな誰もが敬遠する特殊な仕事」となってしまっています。

高齢者や利用者の寿命の前に、介護職員としての寿命が終わってしまうかもしれない職業の特徴を「やりがい」と呼んでいる人達はもっとよく考えて欲しいと思います。

歳を取れば足腰も弱ってきますし視界も狭くなったりします。

様々な要因で転倒は起こり得るものなのです。

いくら介護職員がプロだからと言っても、マンツーマンの付き添い介護ができるわけではないので、事故は必ず発生します。

つまり、利用者が転倒するのも、それによって終わりが来てしまうのも、「寿命」と捉える必要性を感じます。

※もちろん、職員の重大な人為的ミスがあれば別ですが。

 

 

 

誰かの都合で病院へ

 

ちょっと脱線してしまったので、話を戻そうと思います。

突発的な事故や病気はさて置き、慢性的な持病や老衰によって人生の終焉を迎えようとしている利用者を心穏やかに最期を看取る場所が「特養」です。

「終(つい)の棲家(すみか)」と言われているわけですから、特養は家庭の延長線上にある介護施設になります。

老衰で寿命が終わろうとしている利用者を「病院ではなく」慣れ親しんだ施設で、家族やスタッフなどに見送られて最期の時を迎えるのです。

もちろん、延命治療という選択肢もありますが、「利用者本人にとって何が一番良いのか」ということを慎重に検討し決定していく必要があります。

しかし、老衰だったり重度の認知症により意思表示や自己決定ができない利用者が多いので、「他の誰かの都合で病院受診させたり入院させたりすることがある」というのが今回の七不思議になります。

 

 

 

誰の都合なのか?

 

 

では、本人以外の誰が「終わりが来ている利用者」を病院受診させているのでしょうか。

 

①家族の都合

基本的に老衰の場合、病院は積極的な治療をしたり特別な処置をしてくれません。

「人間は老衰し命の終焉を迎えるのが自然な姿」だからです。

但し、「家族が」延命治療を希望した場合は別です。

「自然の摂理に逆らってでも、親の寿命を延ばしたい」という希望があれば、本人の意思を無視して延命治療が行われるという摩訶不思議な状態になっています。

「唯一無二の親だから」という気持ちもわかりますし、家庭の都合もあるでしょうが、本人の意思が不明な以上、難しい問題になります。

「終わりが来ている利用者を病院受診させる理由」の大部分が「家族の都合」になります。

 

②介護施設の都合

ごく稀に「施設の都合」があります。

  • 看取り同意書等の書類の不備や家族の意思を確認できていない場合
  • ワンオペ夜勤などで看取りケアの対応ができる職員がいない場合

などの場合です。

看取り同意書やケアプランなどに不備(又は間に合わず)があり、ターミナル期ではないという状態で、利用者が施設で「命が途絶えた」場合、「急死」とか「変死」の「不審死」扱いになります。

急死や変死の場合は、警察が介入してきます(人の命が消えたのですから当然と言えば当然ですが)。

職員は事情聴取を受けることになり、その心労や煩わしさや他の業務や利用者への支障は計り知れません(そして場合によっては事件扱いになります)。

そういった「支障」を避けるために、救急搬送などで病院へ送り、施設で利用者の終焉を迎えさせないような対応をします。

施設側の自己防衛ではありますが、書類の不備や家族との連携不足、人員不足が故の職員の能力や資質不足によって利用者の命を弄ぶことになります。

家族都合だけでなく、施設都合で寿命を迎えた利用者を病院へ送り込むこともあるのです。

 

 

 

最後に

 

特養の七不思議の2つ目「終わりがきているのに病院へ」について解説しましたが、いかがだったでしょうか。

「老衰を経て人生の終焉を迎える」というのは自然の摂理です。

それを家族や施設の都合で延命治療をすることは、七不思議のひとつだと言えます。

最近では、特養だけでなく他の介護施設(老健や有料老人ホームなど)でも看取り介護(ターミナルケア)を実施している所が増えてきています。

「本人の生前の意思表示(リビングウィル)」があり、本人の意思通りの対応であれば七不思議と言われることも無くなってくるでしょうが、現状ではリビングウィルはまだまだ正常に機能しているとは言えません。

延命治療するにしてもしないにしても、誰でも平穏な最期を迎えたいと思うことでしょう。

リビングウィルがもっと有効活用できるようなシステムが出来れば良いと思います。

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