介護現場の悩みの種のひとつが「家族からのクレーム」です。
「苦情やクレームは宝の山」という言葉もありますが、悪質なクレームになれば「ただただ現場が疲弊するもの」でしかありません。
もちろん「明らかな不手際や不備」があれば苦情として指摘して頂ければ真摯に受け止めて改善に努めることは当然のことなのですが、介護現場に押し寄せるクレームの中には
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というものが多いのが特徴です。
何故、そうなってしまうのかと言うと「介護業界自体がクレームを言った者勝ちの世界」だからです。
以前、「言ったもの勝ちの世界」について記事を書きましたが、職員同士だけでなく、利用者の家族からも槍で突かれる四面楚歌状態なのが介護職員になります。
今回は、介護業界が「クレームを言ったもの勝ち」の理不尽な世界なので介護職員が疲弊していく実情について記事を書きたいと思います。
クレームを言ったもの勝ちの理不尽な世界
介護業界では、苦情などがあれば各事業所ごとにその内容を記録して保存しておかなければならないこととなっています。
もちろん、クレーム内容の解決に向けて努力をしたり行動したりするのですが、その内容の多くが「介護現場」のものになるため、介護職員と密接に関わる内容となります。
介護サービスの提供が介護現場で介護職員によって行われているので当然と言えば当然ですが、クレームを受けることで介護職員はどんどん疲弊していきます。
「苦情を糧に」「苦情を活かして」という綺麗ごとでは済まされない実情をご紹介したいと思います。
実情①「理不尽」
明らかに理不尽と感じるクレームがあります。
例えば、
「介護施設に入れたら認知症が進んだ、どうしてくれるんだ」
ということを言う家族もいます。
無知や無理解から来るクレームですが、施設側が「申し訳ございません、これ以上認知症が進まないように頭を使うレクなどを実施させて頂きます」などと回答していれば、それも的外れです。
レクや体操などをしていても認知症は進みますし、介護職員に責任や負担を押し付けているだけでは「あまりにも理不尽」なのです。
もちろん、家族の「無知や無理解」が原因である場合は、真摯に受け止め理解を得られるように丁寧に情報を提供したり説明をしていくことが大切なのですが、「謝罪や金品を要求」することが最終的な目的である場合は「理不尽なクレーマー」と言わざるを得ません。
実情②「無理難題」
明らかに無理難題を言ってくる家族もいます。
例えば、
「絶対に転倒させないで欲しい」
「怪我や身体状態を元通りに治せ」
など無茶苦茶なことを言ってきます。
出来るだけ転倒しないように、可能な限り「付き添い介護をする」という対策をしている事業所もあるかもしれません。
しかし、もし利用者全員の家族が同じことを言ってきたらどうするのでしょうか。
クレームを言ってきた家族の利用者だけ特別扱いをする「言った者勝ちの世界」が介護業界なのです。
そして、こういう無理難題に対して理不尽な訴訟リスクや判決を受けるリスクが伴います。
無理難題なクレームによって益々介護職員は疲弊していくのです。
実情③「権利者意識の暴走」
中には異常な権利者意識を持っていて、その衝動が抑えきれずにクレームとして暴走してしまう家族もいます。
例えば、
「お金を払っているんだから完璧な介護をして当然」
「介護職員は何でも言うことを聞くのが当たり前」
と本気で思っていて苦情として言ってくる家族がいます。
そもそも介護サービスは介護保険と税金で賄われているので、「お金を払っている」と言っても1割~3割です。
なんなら、40歳以上の介護職員は介護保険を給与から差し引かれ、間接的に支払っています。
何故そんなに権利を振り回せるのでしょうか。
答えは、介護業界が「言った者勝ちの世界」だからです。
しかし、介護職員も人間ですし、人員不足もあり完璧な介護は難しいのが現実です。
もっと言えば、そういうクレームが益々介護職員を疲弊させ、退職者を生み、人員不足となり、完璧な介護とはほど遠くなっていくでしょう。
悪循環でしかないのです。
改善するには「言った者勝ちにしない」
こういった「モンスタークレーマー」によって、介護職員は疲弊していくのですが、改善策を考えてみたいと思います。
答えは簡単です。
「クレームを言った者勝ちにしないこと」です。
そして、何でもかんでも頭を下げて謝罪をし、現場の介護職員に責任と負担を押し付けないようにすれば徐々にこういった「理不尽で無理難題で権利者意識を暴走させた苦情」は減っていくでしょう。
施設側が毅然とした態度で「出来ないものは出来ない」とハッキリと言うことが重要です。
また、事業所単位だけでなく、業界全体や行政の役人も含め「社会全体」で取り組んでいく必要があります。
「福祉事業」という性質上、こういった内容のクレームさえも漏らさぬような体制があるのも事実です。
しかし、理不尽なクレームをすくい取ったことで、介護職員が網の目からすり落ちていってしまっては本末転倒です。
誰かの「しあわせ」のために誰かが「ふしあわせ」になってしまっては意味がありません。
介護職員のセーフティネットはどこにあるのでしょうか。
最後に
今回は、介護現場は「クレームを言ったもの勝ち」の理不尽な世界なので介護職員が疲弊していく実情とその改善策について記事を書きました。
介護現場では福祉という性質上、「ここまでは出来てここからは出来ないという線引きが存在しない」ため、「モンスタークレーマー」が多い傾向にあります。
またそれを甘んじて受け入れてしまうために「言った者勝ち」の世界になってしまっています。
その結果、介護職員が疲弊することになり、人材確保は夢のまた夢となっています。
その不健全な状態を改善していくためにも、事業所の毅然とした態度と社会全体での理解が必要不可欠なのです。