介護施設の避難訓練の実情「ワンオペ夜勤では全員を避難させられない可能性がある」

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介護施設では、年に何回か「避難訓練」があります。

避難訓練の種類は

  • 防災訓練(地震や台風などの自然災害を想定)
  • 消火防火訓練(火災を想定)
  • 水難訓練(津波や河川の氾濫を想定)

などになります。

こんなことを言ったら怒られてしまいますが、この避難訓練が結構な手間で、業務を中断せざるを得ませんし、いらぬ体力をつかいます。

そうは言っても「もし火災や災害が発生した場合のシミュレーション」として実施しておかなければならない義務であるということもよくわかります。

今回は、そんな「介護施設での避難訓練の実情」について記事を書きたいと思います。

介護事業所では定期的に防災訓練が行われているかと思います。 しかし、その訓練の多くは「火災を想定したもの」で「地震を想定したも...

介護施設での避難訓練の実情

普通の一般的な会社などの避難訓練は

「自分が避難する」

「自分の命を守る」

ということが最優先されます。

しかし、介護施設の避難訓練の場合は

「自分と利用者を避難させる」

「自分と利用者の命を守る」

「他者の避難誘導も行う」

という必要があるために、介護職員としての責務と職責が非常に重くなります。

もし実際、火災や災害が発生した場合、自分だけ避難して利用者を避難させようとしなかったら

  • 職責の放棄
  • 人命救助義務違反

などに問われる可能性が十分にあります。

利用者の多くが危険認識が低い

ホテルや旅館などのサービス業のスタッフや、飛行機や電車などの乗務員などにも火災や災害が発生した場合には同じように

「利用客や乗客を避難させる義務」

がありますが、そういった一般的なサービス業の利用客は「ほとんどの人が自分で動ける普通の人」です。

一方、介護施設の利用者の多くは

  • 認知症
  • 歩行困難
  • 寝たきり
  • 高齢者

となるので、「危険認識が低く、自発的な避難が難しい人が多い」のです。

ほとんど場合、介護職員の避難誘導介助が必要になります。

中には耳が非常に遠く、耳をつんざくようなサイレンと避難放送が流れていてもその音が聞こえず、避難の声掛けをしても

「へ?なに?何かあったの?」

と言う利用者もいます。

サイレンや警報さえ聞こえない利用者に避難を促すだけで大変です。

意思疎通が図れない認知症者であれば、「避難しなければならない」という認識が持てないため介助が必要です。

また、歩行が出来なかったり、寝たきり状態で自分では動けない利用者も多数います。

自力移動が出来ない利用者は、介護職員が車椅子に移乗介助し避難させます。

もし本当の火災や災害なら一刻を争う事態なのです。

正直、訓練だから冷静にできますが、もし本当に火の手や煙が目前まで迫っている時に、全ての利用者と自分を安全に避難させられるかは「未知数」です。

ワンオペ夜勤では全員避難させられないかも

全員避難後に本部となる所へピッチで連絡し

「〇〇ユニット利用者〇名、職員〇名、避難完了しました」

と報告して訓練終了となります。

消防署員立ち会いの訓練の場合は、後ほど評価や総評を賜ります。

「避難が完了するまでに10分掛かりましたが、7分以内に全員避難させないと焼け死にます」

などと手厳しいことを言われたりします(事実なのでしょうが)。

日中ならばまだ何名かは職員がいますが、夜間帯に火災が発生した場合は本当に大変なことになると思います。

ワンオペ夜勤の介護施設の場合、1人の職員で20名にも及ぶ利用者全員を7分以内に避難させるのは

「ちょっと無理」

「全員避難させようとすると職員の命さえ危ない」

というのが現実ではないでしょうか。

しかし訓練ですから

「避難誘導の流れを知っておく」

「無理かもしれないということも知っておく」

「無理を可能にできるような対策を講じていく」

という目的もあるのでしょう。

介護施設の夜勤は従来型多床棟を除き、ワンオペ(職員一人体制)であることが殆どです。 過去記事でもワンオペ夜勤のタイムスケジュー...

訓練で体を壊したら本末転倒

夜間想定の避難訓練では、ワンオペ夜勤を想定している為、日中に実施する訓練なのに「1人の職員だけで避難誘導」をする段取りになっています。

他の職員は

  • 利用者に危険がないように見守る
  • 避難誘導をしている職員の見守り
  • どうしても無理そうなら少しお手伝い

という感じです。

自分1人がメインで避難誘導を行った場合、訓練なのに身体を壊してしまいかねません。

なんせ「1人の介護職員が短時間で(7分以内らしいです)20名の利用者を移乗したり誘導したりしなければならない」からです。

単純計算で「20秒に1人を避難」させなければなりません。

本当に1人でやっていたら体を壊してしまいますし、そもそも20秒に1人を避難させるのは「無理難題すぎでは?」と思うわけです。

訓練のせいで腰痛や身体の不調を発生させていては本末転倒なので、手伝ってもらったり無理をしないように多少は配慮をしてくれるのですが、それでも体がきついですし、そもそも「訓練で出来ないことは本番でも出来ない」と思うのです。

「火事場の馬鹿力」に任せるしかないという状況は不健全すぎるので、早急な改善や対策が必要です。

日中でも避難誘導が出来ない可能性

人員不足の介護施設では、日中にパート職員や嘱託職員しかいない日もあります。

もしそんな日に避難訓練が行われた場合

「パートのおばちゃんだからピッチの使い方がわからない」

「寝たきりの利用者を抱えられないから避難誘導できない」

という状況に陥ることもあります。

あくまで「訓練」なので、事前に日程やシフトを調整することで対応をするにしても、「もし日中にパート職員しかいない日に実際に火災や災害が発生したらどうするのだろうか」と思うわけです。

「万が一」の時はいつ発生するかわからないのです。

「普段の状況の中で訓練をしないと意味がない」のではないでしょうか。

そうなると、「ワンオペ夜勤だけでなく、日中でも避難誘導が成立しない日がある」ということになります。

最後に

今回は、「介護施設での避難誘導の実情」について記事を書きました。

訓練の結果から様々なことが見えてくるので訓練の大切さがよくわかる反面、訓練によって体に負担が掛かったり不要な手間が発生してしまうのも事実です。

災害の状況や出火場所により避難誘導をする猶予時間は変わってくるでしょうが、現状のワンオペ夜勤中に発生した場合は「全員を避難させられない可能性が大」です。

また、日中でも職員の配置状況によっては「全員を避難させられない可能性」があります。

せっかく避難訓練を実施しているのですから、こういった「脆弱なポイント」の改善や対策を早急に講じていって欲しいと思います。

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