同調圧力とは、職場などにおいて少数意見を排除しようとしたり、多数意見に無理やり従わせるような圧力を掛けることを指します。
もちろん、統一した介護を実施することが重要である介護現場においては、スタンドプレーをするような職員がいれば改めて貰う必要があるのですが、介護現場では「声が大きい職員や自己犠牲を払う職員のスタンドプレーが伝染していき、やがて同調圧力となる」という村社会の様相を呈している側面があります。
また、同調圧力が強くなることで職場の雰囲気だけでなく労働環境さえ悪くなっていってしまいます。
今回は、スタンドプレーが伝染していき、同調圧力となることで職場環境が悪くなる実情について記事を書きたいと思います。
声の大きい職員や自己犠牲が大好きな職員のスタンドプレーとは?
声の大きい職員や自己犠牲を払う職員とはどういう人を指すのでしょうか。
また、どのようなスタンドプレーがあるのでしょうか。
声の大きい職員とは
実際、物理的に「声が大きい人」も存在しますが、そういった人も含め「発言力が大きい職員」のことを指します。
例えば
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などになります。
自己犠牲を払う職員とは
自己犠牲を払う職員には大きく分けて2種類の人がいます。
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正反対の考え方を持っているように見えますが「自己犠牲を払う」ことは共通しています。
スタンドプレーとは
スタンドプレーとは、「勝手にやっていること」「自分の印象を強くするために目立つ行為をすること」「良かれと思ってやっていること」になります。
例えば
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などになります。
「明らかに不適切なもの」もありますが、本人は「良かれと思ってやっているもの」もあるのが特徴です。
スタンドプレーが伝染する理由と「同調圧力=職場環境悪化」
何故、スタンドプレーが周りの職員に伝染してしまうのでしょうか。
また、伝染してしまうことで同調圧力となり、職場環境が悪化してしまう実情について解説していきたいと思います。
スタンドプレーが伝染する理由
スタンドプレーは最初は少数意見だったのにも関わらず、何故か伝染していきます。
それは「声が大きい人の意見は通りやすい」ことと、「自己犠牲を払わないとスムーズに業務が回らない」ことが一番の大きな理由になります。
また、「その内容が正しいのか正しくないのかを見極めない」「自己犠牲を払わないとスムーズに回らない現場業務を野放しにしている体制」にも問題があります。
声の大きい人のスタンドプレーを指摘したり問題視することで、「衝突や軋轢」を生んで村八分になるよりは、放置したり従っておく方が得策だと考えるのは人間のさがでしょう。
つまり、「自分が疎外されないようにするための自己防衛としてスタンドプレーに従うことで伝染してしまう」と言えます。
また、「スムーズに業務が回るように人員を確保するよりも自己犠牲を払う方が早いため、スタンドプレーが伝染してしまう」のです。
もうひとつの理由として、「慣れてしまう」「それが当たり前のことだと思ってしまう」という刷り込みをされてしまうことでスタンドプレーが伝染していきます。
伝染すれば「同調圧力=職場環境悪化」
スタンドプレーは「勝手にやっていること」だったはずなのに、それが伝染してしまうことで「誰もがやるべきスタンダードなこと」になってしまいます。
今まで、利用者のことを名前で呼び、「さん」付けをしていた職員が、「皆がそう呼んでいる」という理由で利用者のことをあだ名で呼び始めたりします(論外の話ですがあり得ます)。
「人員不足なんだから」「業務がひと段落していないから」「ここまでやってから帰るのが当然だから」と言い出し、「皆もやっている」という理由で休憩や有休を取らなかったり、残業することが当たり前のようになってしまいます。
「セクハラを受け入れるのがプロ」「利用者からのセクハラは仕方がない」という風潮が強くなってしまい、「皆も受け入れている」という理由で利用者からのセクハラが横行することになってしまいます。
この「誰もが言っている、皆もやっているのだから、あなたもやって当然」という同調圧力によって、「自分もやらないと迷惑が掛かるかもしれない」「浮いた存在になってしまうかもしれない」「自分の方がスタンドプレーなのかもしれない」という心理状態になってしまうことで同調圧力を感じます。
正常な判断を失わせる同調圧力によって、多大な自己犠牲を払うこととなり職場環境は悪化していくのです。
たった1人のスタンドプレーから始まって、最終的には職場環境が悪化することになってしまうため、介護現場でのスタンドプレーには注意が必要です。
スタンドプレーの前に、まずは皆で検討する
「スタンドプレーは一切ダメ」と言ってしまうと、あまりにも窮屈で画一的なケアになってしまう可能性もあります。
中には、実際に取り入れた方が良いような画期的なスタンドプレーもあるかもしれません。
しかし、「自分勝手に」やってしまうからスタンドプレーになってしまうのです。
まずは事前に皆で話し合ったり、検討をして方向性を決めていくことが大切です。
ただ、そうすぐに皆が集まって検討できなかったり、目の前で起こっている事に対して悠長なことを言っていられない場面があるのが介護現場です。
その場合は、その場は臨機応変に対応し、後日でもいいので皆で対応方法を検討してみましょう。
要は「知らぬ間に、いつの間にかスタンドプレーをスタンダードにしないこと」と「スタンドプレーと臨機応変は違うこと」を理解しておく必要があります。
スタンドプレーをしている人が「声の大きい職員」であれば、指摘したり検討の議題にあげづらいのが現実かもしれません。
だからこそ、そういう人がいる介護現場は職場環境が劣悪なのです。
同調圧力の対処法
スタンドプレーを通り越して、既に同調圧力となってしまっている場合は益々対処が難しくなります。
職場の同調圧力に抗うことは相当なエネルギーが必要だからです。
まず、明らかに自分の権利や人権が侵害されている場合は「キッパリと断る勇気」が必要です。
浮いた存在になったり、居心地が悪いかもしれませんが、そもそも「そんな職場は世間から見れば浮きまくっている」のです。
協調性は大切ですが、周りに流されるだけの主体性を欠いた同調に縛られていても苦しいだけです。
そんな職場であれば「疎外して貰って構わない」のではないでしょうか。
大切なのは、「自分の頭で考えて、自分の権利侵害を受け入れない」という姿勢なのです。
最後に
今回は、スタンドプレーが周りの職員に伝染することで、同調圧力となり職場環境が悪化してしまう介護現場の実情と対処法について記事を書きました。
利用者のあだ名やニックネームは論外にしても、介護業界にありがちな「自己犠牲は美しい」という風潮によって介護職員の権利や人権を侵害するようなスタンドプレーや同調圧力が横行しているのが実情ではないでしょうか。
「利用者のために」「周りの職員のために」「会社のために」「皆のために」という自己犠牲の精神が、実は職場環境を悪化させているのです。
職場環境の改善は急務ではありますが、一向に改善しているようには思えないというのも現実です。
現状で出来ることは「職員個々が自分の権利侵害を許さない」という意識を持つことではないでしょうか。