介護保険制度の実情

「介護職員処遇改善加算が手当として貰えない?」リアルな3つの理由

投稿日:2019年7月15日 更新日:

 

2017(平成29)年4月1日から、「介護職員処遇改善加算」が拡充し「全5区分」になりました。

この加算の目的は「介護職員の安定的な処遇改善を図るための環境整備とともに、介護職員の賃金改善に充てるため」とされています。

つまり、本来の目的から見れば「介護職員のための加算である」と言えます。

それなのに、「処遇改善加算手当を貰っていない」「想像していた金額より格段に安い」という介護職員も多く見掛けます。

この加算は、事業所に入ってくる加算なのですが、「内部保留や介護職員以外の職種のために使うことはできない」とされています。

同加算はあくまで直接処遇職員に対するものであって、ケアマネジャー、 看護師、生活相談員、事務員、調理師など、間接処遇職員については対象外である。

【引用元】第118回社会保障審議会 介護給付費分科会 公益社団法人全国老人福祉施設協議会「1.介護職員処遇改善加算について

では何故、この加算を「貰えない」「少ない」というような介護職員が出てきてしまうのでしょうか。

今回は、「介護職員処遇改善加算を手当として貰えないリアルな3つの理由」について記事を書きたいと思います。

 

 

 

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処遇改善手当を貰えないリアルな3つの理由

 

 

介護職員処遇改善加算を適切に介護職員に配当していない場合は、事業所は「介護保険の不正受給」に該当し、返還や返戻をしなければならず、最悪の場合は「行政処分」を受けることになってしまいます。

それなのに何故、「処遇改善加算を貰っていない」「貰っている実感がない」「明らかに少ない」というような介護職員が出てきてしまうのでしょうか。

リアルな理由を3つご紹介します。

 

理由①「そもそも事業所が加算を取っていない」

介護職員処遇改善加算には、「Ⅰ~Ⅴ」の5区分あり、キャリアパス要件によって取得できる加算区分が変わってきます。

【出典】厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内

つまり、「事業所がキャリアパス要件を満たしていなければ金額が低い区分(又は取得さえしていない)」になってしまいますし、そもそもこの加算は介護保険の加算であるため「介護保険外サービス事業所」の場合は、この加算は適用されません。

「加算Ⅰ」と「加算Ⅴ」では、「2万5千円もの差」があります。

この差によって「貰っている実感がない」「想像より少ない」という思いを抱いてしまっている可能性があります。

事業所が加算を取得していなければ、当然介護職員にも加算手当は支給されませんし、加算区分によって手当の金額に多い少ないの差が出てしまうのは当然のことになります。

自分が働いている事業所が、「介護職員処遇改善加算を取得しているかしていないか」「どの区分の加算を取得しているか」を確認しておく必要があります。

確認方法は、上司などに聞いてみるのもいいでしょうし、事業所が利用者と契約する時に用いる「重要事項説明書」にも明記してあるので、自分の事業所のことを知っておくためにも一読しておくのも良いかと思います。

 

 

理由②「目に見えない形で支給されている」

事業所が介護職員処遇改善加算を算定するためには、事前にどういう形でどれだけの金額を使うのか等について「計画書」を作成し、行政へ届け出る必要があります。

しかし、その計画書には「誰に、どの介護職員にどれだけ支払うのか」という具体的な項目はありません(介護職員も出入りが激しいので当然ですが)。

また、給与明細等に「処遇改善手当」などの項目が無くても良いことになっています。

この場合、介護職員にとっては処遇改善手当がいくら入っているのか目で金額を確認できません。

しかし、事業所にしてみれば、計画書に則って「入ってきた加算を介護職員に対して支給していれば問題がない」のです。

これによってどういうことが起こるのかと言うと

  • 基本給に組み込まれる
  • 賞与に組み込まれる

ということが発生します。

つまり、

「基本給は本来であれば15万円だけど、処遇改善加算を組み込んでいるから18万円になっている」

「賞与は本来であれば15万円だけど、処遇改善加算を組み込んでいるから30万円になっている」

ということになります。

いつも貰っていた低水準の給料やボーナスに「目に見えない形で既に組み込まれていた」という悲しい結論です。

「貰えていない」と思っていた介護職員処遇改善手当は目に見えない形で貰えていたわけですが、元々の水準が低すぎるため「焼石に水」でしかありませんし、組み込まれていなければ「ワーキングプア」のレベルです。

 

 

理由③「支給方法や時期は事業所の判断」

介護職員処遇改善加算の支給方法は、原則として次の3つになります。

  1. 給与
  2. 賞与(ボーナス)
  3. 一時金

※福利厚生費に盛り込まれる場合もある。

このどれかで支給されるにしても、支給時期も「事業所の柔軟な運用」に委ねられています。

例えば、給料にプラスして支給する場合でも、毎月ではなく「3か月に1回」「半年に1回」とすることも可能です。

賞与の場合も、年2回ではなく「冬のボーナス時に一括して支給」ということも可能です。

つまり、「支給されるタイミングの時に在籍していないと貰えない」ということになります。

また、事業所は「どの介護職員にどれだけ支給するかも自由」という裁量を与えられています。

つまり、介護職員の賃金改善のために使えばいいわけで、「支給額が手厚い介護職員と手厚くない介護職員がいても構わない」という皮肉な結果になってしまっています。

この判断も事業所に委ねられているため「貰っていない」「貰っている実感が湧かない」と感じてしまう介護職員が出てきてしまうのです。

 

 

 

事業所に柔軟な運用権限を与える方針について

 

 

「事業所の柔軟な運用に委ねる」とか「事業所に一定の裁量を委任する」という方針は、非常に良くないやり方だと思っています。

事業所格差が生じるために、事業所によって介護職員の処遇に格差が生じたり、同じ事業所内でも格差が生じる「不健全な状態」になるからです。

「バカなやり方をしている事業所が淘汰されて良いじゃないか」

と思われるかもしれませんが、やり方に関係なく最初に淘汰されてしまうのは「キャリアパス要件を備えられない零細事業所」となるでしょう。

「介護事業所の倒産件数が増えている」という報道もありましたが、その多くは居宅系介護サービスの零細事業所という結果でした。

つまり、特養や老健などの介護保険施設においては、「大手であればバカなやり方をしていても淘汰されにくい事業所」であるという証明になってしまったと言えます(過去に重大な事故や事件が報道された大手介護施設の多くは現在でも運営を継続出来ています)。

淘汰されにくい事業所に「柔軟な運用権限」を与えてしまうことは、介護職員にとっても、介護業界にとっても「良くない結果しか招かない」ということを、介護職員処遇改善加算で思い知ることが出来ました。

しかし、残念ながら「そうは思わない人達」も存在しているようです。

2019年10月より開始となる「業界10年の介護福祉士に対する新加算」でも、「事業所の柔軟な運用に委ねる結果」となりました。

介護保険を作っている人と、介護現場で実際に働いている人との温度差が垣間見れたのではないでしょうか。

【業界に10年以上の介護福祉士に月8万円】結局誰がどれだけ貰えるの?

 

 

 

最後に

 

今回は、「介護職員処遇改善が手当として貰えないリアルな3つの理由」について記事を書きました。

自分の働いている事業所が「どの区分の加算を取得しているのか」ということを知っておくことが大切です。

また、「貰えていない」と思っていたこの加算が「実は目に見えない形で既に貰えていた」という場合もあります。

しかし、既に貰えていたのに「貰っている実感がない焼け石に水状態の加算」であるところに問題があるのです。

事業所は「雇用する全ての介護職員に賃金改善等の処遇改善の内容等について周知することが必要」とされていますが、全体会議などで「皆さんの給料やボーナスに平等に上乗せしてあります」という説明で終わってしまっても問題がないのが現状です。

今回書いた内容を読んだ上で「それでもやっぱり貰えていない」という介護職員がいれば、管轄の市区町村の担当窓口に相談すれば動いてくれる可能性は十分にあります。

ただ、処遇改善加算を介護職員に支給しないことによって、行政処分を受けてしまっては事業所の運営に支障をきたしてしまうことは「普通に考えればわかる」ことです。

ですから、厳密には「目に見えない形で支給されている」「今の低水準の収入が既に支給された状態」であることが多いのではないでしょうか。

そこには「事業所の柔軟な運用に委任されている闇」が存在するのです。

退職者続出の介護事業所の経営者が無能な5つの理由

 

 

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