多くの介護施設での夜勤は「職員1人で約20名の利用者の介護」をします。
勤務時間やタイムスケジュールなどは下記記事をご参照下さい。
9時間拘束8時間労働の夜勤者もいますが、全ユニットに対して1人なので、緊急時や救急搬送時に業務フォローをしたり不穏な利用者や転倒リスクがあるのに歩き回る利用者などに付き添うくらいで、特に何もなければ何もしない役割です。
「何もしない勤務者」は無駄なのですが、暇な時間は掃除をしたり、書類を作成したりしています。
あくまで、「何かあった時のための配置」という位置付けです。
そもそも人員不足なので、このプラスαの夜勤者が配置できていない日もあります。
ですから、基本的にユニット内の業務は、結局は夜勤者1人(ワンオペ)でこなすことになります。
特にワンオペ夜勤では職員1人しかいないので「五感」をフル活用するわけですが、今回は「夜勤で一番敏感になる五感」について記事を書きたいと思います。
ワンオペ夜勤での「五感」の重要性
五感とは、「味覚」「触覚」「嗅覚」「視覚」「聴覚」のことです。
日中は複数の職員がいるために、五感が多少鈍感でも複数人の五感でフォローし合えるのですが、ワンオペ夜勤ではそうもいきません。
夜勤は1人の職員で2ユニット(約20人)の利用者のケアを行うわけですが、真面目に一生懸命やっていても、どうしても目が行き届かない場所や時間が出てきます。
2~3時間ごとに各部屋を巡回して
・様子確認
・排泄介助
などのケアを行いますが、1人の利用者を介助中に他の部屋で何かが起こっているかもしれません。
空いた時間もコール対応や書類仕事をするのでゆっくり休憩など出来ません。
翌朝、早出職員が来るまでは、夜勤者1人で責任を持って対応する必要があり、精神的にも肉体的にも過酷な勤務となります。
ですから「出来るだけ平和でありますように」「転倒などありませんように」「何事もありませんように」と祈りながら夜勤に入るわけですが、それを実現させるためには、五感を敏感に働かせることが重要になってきます。
夜勤で一番重要な「五感」は?
では、その「五感」の中で、ワンオペ夜勤で特に重要なものは何なのでしょうか。
味覚
「味覚」は夜勤にはあまり関係ないかもしれません。
疲れを癒すために「甘いものを食べよう」という時は必要かと思います。
触覚
「触覚」は、利用者の体に触れた時に「熱感(または冷感)がある」と感じたり「何かこの服濡れてる」と感じることが出来ます。
その感覚によって、熱発者の早期発見や尿失禁や尿漏れの早期対応が可能になります。
嗅覚
「嗅覚」は、「便臭がする」という具合に、便失禁などをいち早く察知し、排便処理をするための必要物品を事前に準備し、心構えをすることができます。
他にも「焦げ臭い」「異臭がする」などの緊急事態をいち早く察知することが可能になります。
視覚
「視覚」は、目で見て物事の状態や形状や動作などを確認したり判断します。
利用者が居室から出てくるのを目視し、早期対応をすることができます。
聴覚
「聴覚」は、遠くから聞こえる物音を察知したり、利用者の呼吸音の確認に必要です。
どの五感も重要なのですが、夜勤において最も研ぎ澄ましておきたいのが、この「音を察知する感覚」です。
ワンオペの夜勤では、「聴覚」がリスク回避に重要な役割を果たします。
遠くの音を察知する重要性
ワンオペ夜勤では「聴覚」が最も重要だということがわかりましたが、具体的にはどう重要なのでしょうか。
聴覚は「他の五感よりも距離的に遠くの動きを察知できる」ということが言えます。
いくら視力が良くても、透視ができるエスパー以外はドアや障害物で遮られている死角となる場所の目視は不可能です。
「嗅覚」は遠くのにおいも察知できますが、介護現場でのにおいの殆どは「排泄物のにおい」になり、転倒等のリスク回避にはあまり役立ちません。
夜勤中はそういう理由により「聴覚が最も重要」と言えます。
「ゴホゴホ…(咳)」
「ふぁ~ぁぁ~(あくびや伸び)」
「ガタン、ドタン、バタン、ガチャリ(ドアの開け閉め)」
「テクテクテク、キュッキュッキュ(歩行)」
「トントントン…(杖をつく音やノック)」
「ゴン(転倒、転落)」
「キィキィキィ…(謎の音)」
など、様々な物音き気づくことができます。
この「気づき」は介護職員にとってはとても重要な能力なのです。
時には
「誰か~助けて~」
というドキっとする声が聞こえてきたりします。
聴覚を研ぎ澄ませておくことで転倒や転落などのリスクを未然に防いだり、早期発見が可能になります。
最後に
今回は「夜勤で一番敏感になる五感」について記事を書きました。
夜勤において「聴覚」が非常に重要だということをご理解頂けたかと思います。
リアル現場では「聴覚を駆使したいのにできない状況」も多々発生します。
それは、夜遅くや朝早くに利用者が共同生活室で大音量でテレビ観賞をしている場合です。
特に耳が遠い利用者は、音量が大きくなりがちです。
その音量にかき消されて、居室にいる利用者の「音や声」が聞こえず聴覚を駆使できません。
駆使できないどころか、逆にテレビの
「ガチャン」
「ピーピーピー」
などという音に
「ドキリ!」
と敏感に反応してしまいます。
「あぁ、テレビの音か…」
ということが繰り返されます。
理解のある利用者なら音量を下げてもらったり、イヤホンをしてもらう等の対応も可能ですが、理解を得られなかったり理解できない利用者がいるのも事実です。
そうなると五感のうち、一番重要な「聴覚」の機能が発揮しづらくなってしまいます。
ワンオペ夜勤では全て自分一人で対応し、その責任も圧し掛かってくる相当ハードな勤務になります。
可能な限り「五感、特に聴覚」を研ぎ澄ますことができる環境であって欲しいものです。