2019年度(第22回)の介護支援専門員実務研修受講試験(以下、ケアマネ試験)は台風19号の影響で1都12県で中止になりました。
【中止になった1都12県】
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その他の地域は「時間を繰り下げて実施」「通常通り実施」ということになりました。
試験問題の情報漏洩を防止するために「試験問題の持ち帰り禁止」という措置が取られましたが、本日(2019年10月16日)に「公益社団法人 社会福祉振興・試験センターのホームページ」にて試験問題が公開されているのを確認しています。
それに伴い、各専門学校や資格指導校などでも、順次「解答速報」が出されています。
しかし、今回の試験では問題用紙の持ち帰りができなかったため、いくら解答速報が出ても自分が解答した選択肢を確実に覚えていないと正確な自己採点ができません。
ですから、各都道府県で順次「試験問題用紙の返却方法」のアナウンスも始まっています。
さて、ここまではとりあえずいいのですが、問題は「中止になった1都12県の対応はどうなるのか」ということです。
再試験があるのかないのかさえわからない状態です。
そんな中、「再試験があるとしても年度末になるのではないか」というニュースがありましたのでご紹介したいと思います。
【2019年11月13日追記】
ケアマネ試験の再試験が2020年3月8日(日)の午前10時開始に決定したようです。
ケアマネ試験の再試験は年度末?いつになる?
情報元は以下になります。
中止となったケアマネ試験、再試験は年度末か 試験問題を新たに作成へ
試験問題の作成には通常、半年程度の時間を要する。厚労省の担当者は、「来月にすぐ再試験を行う、とかそういう日程にはならない。難しい」と説明。年度末が近い頃にならざるを得ないのではないか、という認識を現時点では持っているとした。
新たな試験問題の作成には追加の費用が伴う。再試験には会場の手配や周知なども欠かせず、いざ行うとなると実務研修にも影響が及んでくる。
厚労省は今後、再試験についての都道府県の考え方をヒアリングしていくという。基本的にはそれぞれの意向を尊重する、というスタンスだ。
ケアマネ試験の要綱では、「試験は1年に1回以上行うこと」と規定されている。このため、どこも「再試験を行う」と回答してくる可能性が高いとみられるが、これはまだ確実ではない。都道府県の判断によっては、中止したところの中で対応が違ってくる可能性も残されている。
【引用元】介護のニュースサイトJOINT
確かに、過去に一度だけ平成16年(第7回)のケアマネ試験において試験日が平成16年10月24日(日)であるところ、新潟県中越地震にともない、新潟県でのケアマネ試験を中止し、その代わりに平成17年2月20日(日)に再試験を実施したという出来事がありました(参考:厚生労働省「第7回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」)。
この時も、年明けの2月下旬に再試験が実施されたという事実に鑑みれば、今回の再試験も同じくらいの時期になることが考えられます。
但し、その時の状況とは明らかに異なっていることが3つあります。
①地震と台風は違う
地震も台風も自然災害であり、不可抗力によってやむを得ない事情ということになりますが、「地震は突発的に発生し予測不可能」ということに対して、「台風は数日前から来ることがわかっている」という違いがあります。
つまり、今回の台風の影響は事前に予測することができて、何らかの対応をしていくことが可能だったはずです。
しかし、実際には前日や当日まで「試験をやるかやらないか、時間を繰り下げるか」という判断だけしか伝わってこなかったのは対応が後手後手になってしまっていると思われても仕方がありません。
そもそも、「自然災害を一切想定していない体制が露呈した」と言えるでしょう。
②受験できなかった人数が違う
第7回のケアマネ試験では、新潟県の長岡会場のみが中止となりましたが、今回の第22回のケアマネ試験では1都12県という広範囲の会場で中止措置が取られました。
全受験者数に対して3割~4割近い人数になるのではないでしょうか。
これだけ多くの受験者が不可抗力で受験できないとなれば、全国一律で中止という判断がされてもおかしくはないのですが、ケアマネ試験が国家資格ではない公的資格であり、各都道府県の裁量に委ねられている制度が生み出した不整合だと言えます。
それはそれで仕方がないにしても、問題は「その後の対応」です。
「中止にしました」ということであれば「では今後どうするのか」ということがセットのはずですが、未だ「見通しが立たない」「検討中」「未定」というのは制度として破綻してしまっていると言っても過言ではありません。
③社会情勢が違う
第7回のケアマネ試験の頃は、介護保険制度が始まって日が浅く、まだまだ「ケアマネを作れ増やせ合格させろ」という時代でした。
しかし、最近のケアマネ試験の合格率を見ればわかるように、近年は「ケアマネはもうこれ以上いらない」「落とす試験」という時代になっています。
受験者もそういった方針や社会情勢の変化を感じ取っているために、受験者数も減少していくこととなり「人気がなくて合格率も低い類まれなる資格試験」になってしまっています。
こういった方針が、今回の試験中止に際して「再試験の有無」「再試験の時期」「再試験の問題の内容や難易度」に影響が出ないとも限りません。
もし再試験が年度末だとするならば、10月13日に受験した人達の合否は既に出ているわけですから「再試験が調節材料」にならないことを願うばかりです。
その他の問題
ニュース記事を読むと、その他にも問題点が見えてきます。
問題点①「再試験問題はこれから作成」
試験問題を作成するのに半年程度かかるために「再試験は年度末」という厚生労働省の担当者の話ですが、つまり、再試験問題は未だ準備されていないわけです。
全国統一の試験問題と合格基準でありながら、試験問題を1つしか準備していなかったということは、やはり「自然災害や何かの原因で再試験をしなければならないという状況が想定されていない」ということになります。
もちろん、費用も手間も掛かるでしょうが、「これが福祉という業界の資格試験の実態か」と思うと物悲しくなってしまいます。
問題点②「これから都道府県にヒアリング」
厚生労働省による「都道府県等介護支援専門員実務研修受講試験事務規程」によれば、第2条に以下の通り規定してあります。
第二条 試験事務は、この試験事務規程により実施する。
2 試験事務は、その重要性に鑑み、適正、確実、かつ、公正に実施するものとする。
3 試験は、年1回以上実施する。
第2条3項に「試験は、年1回以上実施する」と規定してある以上、「1回も実施しない」ということになるとこの規定に違反してしまうことになります。
ですから、再試験は当然あるものと思われますが、それらについてこれから都道府県の考え方をヒアリングしていくようです。
そして、厚労省の担当者の話では「基本的にはそれぞれの意向を尊重する、というスタンス」とのことです。
これが、都道府県に権限委譲しているケアマネ試験の怖いところでもあり面倒くさいところでもあります。
今後、各都道府県で対応が変わってくる可能性もありますし、「再試験をやらない」という判断をする都道府県がないとも限りません。
試験事務規程に「年1回以上実施する」と規定してあるからと言って、この規程には「罰則規定」がありませんし、そもそも「やむを得ない事情」と言われてしまえばそれまでです。
また、再試験をやるにしても試験問題の情報漏洩の関係もあるため「日時」は揃えてくるでしょうし、それらの調整にまだ時間が掛かるため「再試験は年度末」というのは信憑性があります。
問題点③「ケアマネとして従事予定だった人への配慮」
今回のケアマネ試験を受験して合格したら介護支援専門員(ケアマネジャー)の業務に従事しようと考えていた人にとっては、その予定を大きく狂わされてしまうことになります。
そもそも、ケアマネ試験は「実務研修」を受講する資格を得るための試験であり、実務研修を修了し資格者証を得なければケアマネとして従事できません。
この実務研修を修了するのに半年以上掛かります。
2019年10月13日に受験をした人は2019年12月3日(火曜日)に合格発表があります。
その後すぐに実務者研修を受講したとして、スムーズにいけば2020年の夏頃にはケアマネとして従事できます。
しかし、今回中止となった1都12県の受験者は仮に年度末に再試験を受けたとしても、合格発表まで更に時間があるでしょうし、尚且つ、実務研修の開始が10月13日に受験して合格した人達と比べ大幅に遅れることになります。
そうなると、ケアマネに従事できる日も2020年を通り越して2021年になってしまう可能性が十分にあり得ます。
「来年のことを言えば鬼が笑う」と言うのに、再来年のことを言わなくてはならないなんて笑えません。
厚労省も都道府県も「公正中立」を掲げているのですから、ケアマネとして従事予定だった人も含め全受験者に配慮ができる体制であって欲しいと思います。
最後に
今回は、2019年度(第22回)のケアマネ試験が台風19号の影響で1都12県で中止になったため、「その再試験はいつになるのか」ということについて記事を書きました。
どうやら、再試験をやるにしても年度末になる可能性が高いようです。
但し、これから厚生労働省が各都道府県の考えをヒアリングしていくようなので、まだまだハッキリとしたことはわかりません。
再試験問題の作成もあるために時間が掛かってしまうのは仕方がないことではありますが、そもそもの体制や制度にも問題があるような気がしてなりません。
同じような感覚を「制度や体制の方針と介護現場の実情との温度差」で感じることが何度もありますが、こういった「現場との温度差」を解消していくことができれば、もっとより良い業界になっていくのではないでしょうか。