新たな介護事件のニュース報道がありました。
三重県伊勢市の特別養護老人ホーム(以下、特養)で、24歳の女性介護士が84歳の入所者を投げ飛ばして骨折させた疑いで逮捕された、という内容になります。
厳密には短期入所生活介護(以下、ショートステイ)利用中だったとのことですので、特養併設のショートステイで発生した介護事件になります。
今回は、この介護事件について考察していきたいと思っていますが、「どんなことがあろうとも暴力や虐待はいけない」ということは間違いがありません。
それなのに、似たような介護事件が繰り返し発生していることからも、以前の記事でも書いたように「氷山の一角」であり「個別ケアが事件発生の温床」と言っても過言ではありません。
したがって、この介護事件の個別具体的な考察だけでなく、もっと視野を広げて考察していきたいと思います。
介護事件概要と考察
今回の特養での介護事件の概要と考察を以下に書いていきます。
介護事件概要
- 発生場所:三重県伊勢市の特養併設のショートステイ
- 発生日時:2020年1月26日午前4時35分頃
- 加害者:24歳の女性介護士
- 被害者:84歳の女性利用者(1泊2日でショートステイを利用中)
- 発生状況:施設の2階ホールで介護士が利用者を投げ飛ばし、右太ももの付け根を骨折させた疑い
- 動機:「認知症のある利用者が徘徊してイライラしたため」と容疑を認めている
- 発見された状況:利用者が「痛い痛い」と叫んでいるのを別の職員が発見し消防へ通報。その後、施設の防犯カメラに容疑者の介護士が利用者を投げ飛ばす姿が映されており2020年1月27日の夕方に施設が警察に相談。逮捕に至る。
介護事件考察
介護事件の考察をしていきますが、当然このようなことはあってはならないことです。
原因や背景として「介護職員個人の資質や人間性の問題」「介護現場の労働環境(業務の負担過多やストレスなど)」が論じられたりもしますが、もっと視野を広げて掘り下げて考えていきたいと思います。
①トカゲのシッポを切って終わりにしていないか
事件を起こす介護職員の資質や人間性にも問題があるのでしょうが、では何故、介護現場でばかりこのようなことが続くのでしょうか。
考えられる原因として、
- そういう人間性の人が介護現場に存在する可能性
- 普通の人間性の人でも豹変させてしまうような環境がある可能性
- 誰でもかれでも雇い入れなければならない環境や制度に問題がある可能性
- 制度や方針と介護現場との温度差がある可能性
などなど掘り下げていけば様々な問題点や可能性はいくらでも思い当たります。
要は、そこまで掘り下げもせずに事件が発生するたびに介護士個人を「はい、虐待!」「はい、逮捕!」「はい、さよなら」で終わりにしてしまっていることこそ大きな問題と言えるのではないでしょうか。
つまり、「いつでもトカゲのシッポを切って終わり」なのです。
それでは根本的なことが何も解決せず、同じような事件が続いてもおかしくはありません。
②「あってはならないこと」が何度も続くことが「あってはならないこと」
こういった事件は「あってはならないこと」ですが、そのあってはならないことが今までにどれだけ続いたのでしょうか。
そして、これからも続くのではないでしょうか。
介護職員個々の資質や人間性だけでなく介護職員全体の資質や人間性まで疑われてしまいかねない事態ですが、そもそも「あってはならないことが続く業界」が他にあるでしょうか。
つまり、「あってはならないことが何度も何度も続いて発生してしまうこと自体があってはならないこと」なのです。
その原因のひとつが、前述したように「トカゲのシッポを切って終わりにしているから」ではないでしょうか。
「あってはならないことが続いていることがあってはならないこと」だと気づいて頂き、国や業界全体で食い止められるような検討が必要です。
多くの介護職員は「虐待はしてはいけませんよ(虐待防止研修)」「怒りのコントロールをしましょう(アンガーマネジメント)」ということは理解していても、本当の介護現場の闇はその先にあるのです。
臭いものに蓋をしたりトカゲのシッポ切りを続け「介護現場はやりがいがあります」という表面上のポジティブイメージだけで塗り固めようとすることで更に闇を深くしてしまっていると言えます。
ネガティブな部分をもっと掘り下げて考えていかなければ同じような事件が続くことでしょう。
最後に
今回は、三重県の特養併設のショートステイで発生した介護事件について考察しました。
「介護職員の資質や人間性の問題」であるにしても、トカゲのシッポ切りをして終わりにするのではなく、「あってはならないことが続くような業界はあってはならない」という点には留意して国や業界全体でもっと掘り下げて対応をしていく必要があります。
最後に申し添えておきたいのですが、介護現場では利用者から介護職員に対する暴力や暴言・ハラスメントは毎日のように行われている実態があります。
そして、介護職員が被害を受けても上司などから「声掛けや寄り添い方が不十分だったんだ」「介護技術が未熟だったんだ」などと言われ表沙汰にならないどころかセカンドレイプをされているような状況に陥り、思い悩んでいる介護職員が多く存在しています。
まずはそういった不健全な状況を改善していって欲しいと思います。
コメント
介護職員は誰でもこうなる可能性はあると思っておいたほうがいい。
一人で何十人も面倒見てたらまともな人でもおかしくなる可能性はある。
こうなるまえに介護職を辞めることが1番の解決策だな。
>HBKさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
そうですね、十分可能性はありますね。
やはり、介護施設での防犯カメラ設置は、必須にしないと・・・。
>栃木県介護被害者会さん
コメントありがとうございます^^
今回の事件があった介護施設では防犯カメラがあったのに発生してしまったようですね。
証拠としては使えるのでしょうが、こういった事件が発生してしまうことを事前に無くしていきたいものですね。
ショートだから、たぶんスタッフはいつも一人しかいなくて、その女性介護職は疲労マックス・ストレスマックスだったんやろか・・・と思いました。
しかし投げるとはどういう状況だったんだろう。
スタッフが二人以上いれば、利用者への暴力におよぶことはあまりないと思うんだけど。20人ショートだと夜勤は1人ですよね。
>デイちゃんさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
疲労やストレスがMAXだと暴力や虐待はしてはいけないとしても前後不覚の状態に陥ることもあり得ますよね。
詳しい状況はわかりませんが、「投げ飛ばす」とはどういう状況か気になりますね(私は柔道の投げ技を思い浮かべてしまいましたが)。
この事件のあった施設が多床棟かユニット型かはわかりませんが、ユニット型であれば利用者20人(最大)に対して介護職は1人ですね。
そうなんですよ。そのスタッフも監視カメラがあることとか知ってたと思うんですけど。
いわゆるキレて思わず投げ飛ばしたって感じだと思うんですよね。怒りのあまり。本人も自分の行動を制御できない状態であったのではないかと。
だって、暴力をふるう方も力をつかうでしょう。うるさい!とかどなるだけならともかく、実際に手を出すとなると・・かなり精神状態がヤバかったのではないかと思われます。
メンタルヘルスと言うと、精神的な疲ればかりに目がいくけど、実際は利用者や仕事内容への怒りや不満の蓄積の方が、精神的にはよくない気がしますよね。
「大丈夫、絶対時間内に仕事が終わるから」「仕事は大変だけど同僚と協力すればなんとかなるから」「仕事内容が割に合ってるな」と思えるようにしないと、介護の仕事なんて誰もしなくなりますよ。
>デイちゃんさん
返信ありがとうございます^^
そうですよね、監視カメラがあることを知っていても尚、やってしまったということですからよっぽどですよね。
「今のままだと誰もしなくなる」というのは一理あると思います。