「気づき」というのは介護職員にとって、とても大切なスキルであり専門性のひとつです。
利用者の表情・顔色・行動・言動を見ていち早く何かを察知したり、「昨日(または先程)とは何かが違う」ということに気づいたり、「このままでは何か良くないことが起こる気がする」というエスパー級の気づきが出来る人もいます。
「間違い探しゲーム(クイズ)」が得意な人ほど気づくことに長けていて、介護職員に向いていると私は思っています(職員面接に間違い探しゲームを採り入れたらどうかと本気で思っています)。
ですから、気づける職員が出来るだけ多く介護現場にいてくれたら今よりももっと良いケアができると思っているわけですが、現実はそうもいきません。
今回は「気づける職員が損をしてしまう介護現場の実情」について記事を書きたいと思います。
気づける職員と気づけない職員
「気づき」だけで言うと「気づける職員」と「気づけない職員」の二通りが存在します。
人員不足が故に、三大介護や一連の業務をそつなくこなすことを目指すだけで精一杯の介護現場の現状がありますが、更に出来る職員はよく気づきます。
気づきが多いことで
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ということが可能になります。
ここまで気が配れる職員は「エース級(介護業界で言えばリーダー級でしょうか)」と言えるでしょう。
例えば、家族が面会に来て
「掃除機を貸してもらえますか」
と言ってくる場合があります。
気づけない職員は
「はいわかりました、どうぞどうぞ」
と言って家族に掃除機を渡します。
気づける職員は「部屋が汚かったから家族が掃除をしようとしているのかな…」ということにまで思いを馳せ、
「お部屋が汚れていましたか?私が掃除させて頂きますね」
と言って家族とコミュニケーションを取ることで後々のクレームになるかもしれない事案を未然に防げます。
人員不足で居室清掃まで手が回っていないのは仕方がないことですが、「気づく」ことで至らぬ点をフォローできるのです。
気づけるのに気づかないフリをする職員
実は「気づける職員」と「気づけない職員」のほかに、「気づいているのに気づいていないフリをする職員」という存在がいます。
気づける職員はエース級ですが、介護現場のエースほど損をする役回りはありません。
気づけば気づくほど、仕事が増えていくのです。
仕事が増えようがそれをこなそうが、対価に反映されることもありません。
利用者の体調不良やアクシデントに気づけば、看護師に報告したり、家族連絡をしたり、リスク報告書を作成する必要が出てきます。
間違いやミスに気づけば修正や訂正をしたり、改善する必要が出てきます。
そういう介護現場の実情を知っていれば「自分に責任や業務が降りかからないように、気づいていても気づかないフリをする職員」という存在が出てきてもおかしくはありません。
そして、残念ながら現在の介護現場ではそういう職員が多数存在しているのも事実になります。
もっと言えば、そういう職員でいなければ長くは勤められない仕事であると言えます。
ここに介護現場の大きな闇が存在します。
健全な職場であるために
「気づく職員」が損をして、「気づかない職員」が得をするような環境であってはケアの質が向上するわけがありませんし、「気づかないフリをする職員」ばかりになってしまえば不健全な職場になります。
そういった闇深い現状を改善していくにはどうすればいいのでしょうか。
介護職員としての職責を全うできていないプロ失格の職員だけが長く勤められるというのも悲しい現実と言えますが、そもそも「仕事は増えるのに人員も対価も増えない環境」に問題があるのです。
つまり「気づける職員を大切にできない環境」が今の介護現場では当たり前のようになっているのです。
一番手っ取り早い方法は、気づける職員と気づけない職員の待遇に差をつけていくことだと考えます。
「気づける職員」にはそれなりの評価や手当を与えていき、「気づけない職員」との待遇の格差をつけていく方法なのですが、問題は「どの程度の気づきでどういう評価をしていくか」という基準を設けなければならないことです。
この点については、既に「リスク報告書をより多く作成した職員に手当を支給する」等の取り組みをされている事業所もあるようです。
そういった運営努力や職場環境健全化への取り組みをされている事業所を見習ったり、業界内で情報を共有するなどして、「気づけない得」を無くしていく環境を作っていく必要があります。
最後に
今回は「介護現場で気づける職員を増やしていきたいのにそうなりにくい理由と職場環境を健全化していくにはどうすればいいのか」ということについて記事を書きました。
「正直者はバカを見る」=「気づける職員は損をする」
という環境では、いつまで経ってもケアの質は向上しませんし、人員不足も解消できません。
人員も対価も増やすことができない事業所が、業務だけを増やしてケアの質の向上を謳っています。
しかしそれでは質が向上するどころか逆に低下していくのは目に見えて明らかです。
人員も対価も増やすことができないのなら、「業務負担をスリム化していくことが質の向上に繋がる」ということに早く気づいて欲しいものです。