最近は徐々に在宅介護を支える取り組みが活発化してきています。
被介護者が認知症の場合は、特に家族の負担は大きいと言えます。
在宅介護をすることによって
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などの問題があり、自分の人生を犠牲にしたり、事件に発展してしまったり、重大な社会問題となっています。
そういった社会問題を少しでも改善できるように、政府が
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などの施策を講じています。
その「新オレンジプラン」の中には「7つの柱」があり、その1つ目にあるのが「認知症サポーター」です。
今回は「認知症サポーター」と「オレンジリングをしている人をあまり見掛けない理由」について記事を書きたいと思います。
社会全体で支える取り組み
「認知症サポーター」の解説の前に、まずは「新オレンジプラン」の概要を確認しておきたいと思います。
「新オレンジプラン」とは
新オレンジプランの正式名称は「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」という名前の政策です。
平成24(2012)年9月に公表された「オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)」を改め、平成27(2015)年1月27日に「厚生労働省」が関係府省庁と共同で策定されました。
【関係府省庁とは】
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平成30(2018)年度から全ての市町村で実施されています(それまでは段階的暫定的に行われていた)。
認知症の人が住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けるために必要としていることに的確に応えていくことを旨としつつ、以下の7つの柱に沿って、施策を総合的に推進していくこととしています。
【引用元】厚生労働省ホームページ「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」
7つの柱で構成
「新オレンジプラン」は、社会全体で認知症の人を支える「7つの柱」で構成されている政策になります。
在宅介護を
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などの「社会全体で支えていく取り組み」が推進されています。
詳細や具体的な支援策については「厚生労働省ホームページ」及び「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)概要(PDFファイル)」 に記載されています。
「認知症サポーター」とは
先程確認した「新オレンジプラン」の1つ目の柱として「認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進」があり、具体的な支援策として「認知症サポーター」があります。
基本的な考え方
認知症は皆にとって身近な病気であることを、普及・啓発等を通じて改めて社会全体として確認していきます。
①広告等を通じ認知症への社会の理解を深めるための全国的なキャンペーンを展開します。その際には、認知症の人が自らの言葉でメッセージを語る姿等を積極的に発信していきます。
②認知症サポーターの養成を進めるとともに、地域や職域など様々な場面で活躍できるような取組を推進していきます。 ③学校において、高齢者との交流活動など、高齢社会の現状や認知症の人を含む高齢者への理解を深めるような教育を推進します。 |
「認知症サポーター」になるには
認知症サポーターとは、「認知症について正しく理解し、認知症の人や家族を温かく見守り、支援する応援者」のことです。
認知症サポーターになるには、地方自治体などで実施している「認知症サポーター養成講座」を受講することで、誰でも認知症サポーターになれます。
お勤め先が「医療系や福祉系」の場合は、職場で開講されることもあります。
「認知症サポーター養成講座」の内容
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講座の時間は約60分~90分程度のようです。
※内容の変更などがされている場合もあります。詳細は各市区町村へお問い合わせ下さい。
受講方法
お住いの市区町村へお問い合わせ下さい。
認知症サポーターの目標人数
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オレンジリングをつけている人を見掛けない理由
認知症サポーターの目標人数が800万人とのことですから、養成講座を受講する機会が多くなってきていて、既に受講済の人もいらっしゃるかと思います。
養成講座を修了し、認知症サポーターになると、下の画像のような「オレンジリング(又はオレンジバンド)」と呼ばれるゴム製のオレンジ色の腕輪(リストバンド)が貰えます。
「オレンジリング」は研修を修了した証であり、この腕輪をしている人は認知症の人に対する一定の基本的な知識を持っているはずなので、「街や近所で認知症の人がいればサポート、支援してあげて下さいね」という政策のはずです。
街でオレンジリングをしている人を見掛けたら
「この人は認知症サポーターだな」
ということがわかりますが、今まで私はオレンジリングをしている人を日常で1人も見たことがありません。
これは「養成講座を修了したサポーターの人が殆ど存在しない」ということではなく「オレンジリングを腕に着けて外を出歩く人がいない」ということだと思います。
かく言う私も、オレンジリングを持っていますが、身に着けたことは一度もありません。
せっかく貰った「認知症サポーターの印(しるし)」を何故身に着けないのでしょうか?
その理由を考えてみたいと思います。
理由①「恥ずかしい」
大の大人が、オレンジ色の腕輪をつけて歩いていたら「少し恥ずかしい」気持ちになります。
どんなものを身に着けていようが個人の自由なので、自意識過剰と思われてしまうかもしれませんが、恥ずかしいという気持ちが払拭できないという理由があります。
理由②「腕に何もつけない主義」
普段から「腕には何もつけない主義」の人もいます。
「違和感がある」「気持ち悪い」などの理由で腕時計さえつけていない人が、急にオレンジリングをつけ出したら逆に驚いてしまいます。
理由③「リングが切れたらイヤ」
せっかく貰った「認知症サポーターの証」なのですから大事にしたい気持ちがあるのかもしれません。
リングが切れてしまったらイヤですものね。
理由④「職場では外す必要がある」
職業や職種や職場によっては、オレンジリングを装着したまま仕事をするのが相応しくないものもあるかもしれません。
その場合、職場ではリングを外す必要があるために「つけたり外したりが面倒くさい」という理由も考えられます。
理由⑤「そもそも、つける価値が見い出せない」
そもそも論ですが、「オレンジリングをつける価値がよくわからない」という理由もあります。
認知症で支援が必要な人や困っている人が、わざわざオレンジリングを身に着けている人を探し出して助けを求めることも考えにくいです。
「社会全体で支えることが必要なのであって、オレンジリングを装着することが目的ではない」
ということがわかっていれば、つけなくたって構わないと考えています。
また、誤解している人もいらっしゃるかもしれませんが、「認知症サポーターは何かをする役割ではない」のです。
認知症の人を積極的に支援したり、介護技術を発揮する役割ではありません。
認知症サポーターの役割を簡単に言えば「認知症の人がこの地球上に存在していることを認める役割」になります。
何か対応をしたり介護をする必要もありません。
自分の出来る範囲で何かをしてあげてもいいですし、何もしなくてもいいのです。
求められているのは自分自身の「理解、容認、受容」なのであって「活躍や能力発揮」ではありません。
この点を勘違いしている人が多いように感じます。
つまり「オレンジリングは心に身に着けるもの」だと言えます。
最後に
今回は「認知症サポーターとオレンジリングをつけている人を見掛けない理由」について記事を書きました。
「認知症サポーター」や「オレンジリングの配布」は、地域住民や社会全体の意識改革という点では有効なのかもしれません。
しかしながら、「認知症サポーター」とは言っても「約60分~90分の研修をたった1回受講しただけ」になります。
正直言って、2時間足らずの研修を1回受講しただけで得られるものは限られています。
オレンジリングを配って終わりにするのではなく、その後その先のフォローアップをしていく事の方が大切だと思います。
そして、オレンジリングをつけている人をあまり見掛けないのは「腕ではなく心に装着するものだ」ということをわかっている人が多いからではないでしょうか。