入所者が24時間365日生活をしている介護施設では必ず「夜勤」があります。
既に介護職員として勤務をしていて、夜勤業務に入っている人はご存知でしょうが、そうではない人や夜勤について知りたい人に向けて記事を書きたいと思います。
尚、この記事の情報は「ユニット型介護施設」を基本モデルとしています。
介護施設の夜勤体制
まずは、「介護施設の夜勤ってどういう体制なの?」ということを解説します。
職員の人員配置
基本的に夜間帯に配置される職員の人数は1人です。
俗に言う「ワンオペ」というものになります。
介護保険法に基づく「人員配置基準」で定められています。
夜勤で介護する利用者の人数
基本的に1ユニット10名の利用者を2ユニット担当します。
つまり、利用者の人数は最大20人になります。
「最大」というのは介護保険法に基づく「人員配置基準」で定められた人数であり、それを超えて業務をさせられることは法令違反になります。
夜勤の拘束時間
基本的に16時間拘束の15時間勤務になります(理論値)。
1時間の休憩時間を与えることで、法律上は問題がないようです。
-労働基準法第34条 第1項-
使用者は、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩時間を労働者に与えなければなりません。
但し、ワンオペ(一人体制)の夜勤で実際に「利用者のいない場所で自由な休憩が60分取れているか」というと限りなく黒に近いグレーな部分ではないかと思います。
夜勤の勤務時間
これは施設ごとによってまちまちですが、基本的に「17時~翌朝9時」とか「16時~翌朝8時」という勤務時間が多いのではないでしょうか。
どちらにしても16時間拘束の勤務になります。
夜勤手当
月極めの基本給がある正職員などには「夜勤手当」が支給されます。
これも施設によって幅が大きいのですが、夜勤1回につき「3000円~9000円」で、平均的な金額は「5000円」だと思われます。
せっかく過酷な16時間夜勤をするのですから、出来るだけ手当が多いに越したことはありません。
時間給で働いているパートなどの非常勤職員は、時給が1.25倍の時間給での勤務となるかと思います。
16時間夜勤の特徴
16時間もの長時間に渡って仕事をするわけですから、「2日間勤務したとカウント」されます。
つまり勤務時間が「17時~翌朝9時」の場合、夜勤入りの日が労働1日目(17時~深夜1時=8時間)で、夜勤明けの日が労働2日目(深夜1時~午前9時=8時間)ということになります。
夜勤明けの日は午前9時に仕事が終わり、その後の時間は帰宅するなり遊びにいくなり自由な時間となります。
ただ、16時間夜勤は相当過酷なので、明けの日は遊びに行く元気などなく、重い足を引きずりながら帰路につくことになります。
体力が有り余っている若者は遊びに行く元気があるかもしれませんが、くれぐれも事故などを起こさないように十分注意して下さい。
夜勤のスケジュールと仕事内容
16時間もの長丁場で、更に一人で対応をしなければならないのは、肉体的にも精神的にもつらいものがあります。
具体的に夜勤では「どのようなスケジュールでどんな仕事内容なのか」をご紹介したいと思います。
※勤務時間が「17時~翌朝9時」の場合とします。
17時00分~17時30分「夜勤の準備や情報収集」
出勤してくると、まずは夜勤に入るための準備をします。
利用者の状態を把握したり、対応方法が変わっていないかなどを確認します。
17時30分~17時40分「夜勤の申し送りに参加」
その日に施設で夜勤をする職員(他のフロアやユニット)が集まり、顔合わせをします。
夜勤リーダー(当日の夜間帯で責任を持つ役割の人)が誰なのかの確認と、看護師から日中の様子や医療面や健康面の申し送りを受けます。
17時40分~18時30分「夕食準備・配膳・見守りや介助・片づけ」
夜勤の申し送りが終わると夕食の準備を行います。
入所者に夕食を提供し、見守りや介助を行います。
内服薬がある入所者には服薬介助も行います。
夕食が終われば下膳して、片づけをします。
18時30分~20時00分「排泄介助、就寝介助」
夕食が終われば排泄介助と就寝介助をします。
トイレで排泄をする入所者はトイレへ誘導し、オムツを使用している入所者はベッドに寝かせてオムツ交換をします。
この前後に「口腔ケア」を行い、就寝介助を行います。
20時00分~21時00分「パソコン入力、記録等」
この時間くらいから、遅番出勤者が勤務を終え退勤します。
本当のワンオペ夜勤が20時前後からスタートするのです。
入所者の夕食摂取量や様子などをパソコンに入力したり記録を行います。
眠前薬がある入所者がいれば、服薬介助を行います。
21時00分~22時00分「自分の夕食、やり残した事をやる」
夜勤者が遅めの夕食を摂ります。
コール対応や、やり残した業務をしながらなので、きっちり1時間休憩を取ることは困難です。
22時00分~23時00分「居室巡回・排泄交換(介助)、記録」
全入所者の居室を巡回し、様子確認を行います。
排泄介助が必要な入所者の対応もします。
それらが終われば記録をします。
23時00分~1時00分「書類仕事、コール対応等」
イレギュラーなことが無ければ比較的ゆっくりできる時間です。
しかし、介護職員は様々な書類作成をしなければならないので、この時間に作成します。
例えば「入所者のモニタリング」「会議の議事録」などです。
1時00分~2時00分「居室巡回・排泄交換(介助)、記録」
全入所者の居室を巡回し、様子確認を行います。
排泄介助が必要な入所者の対応もします。
それらが終われば記録をします。
2時00分~5時00分「書類仕事、コール対応等」
夜間帯の中で最もゆっくり出来る時間帯です。
もちろん、イレギュラーな入所者の急変や事故などが無ければ、という前提になります。
そして、「最も眠たい時間」でもあります。
適宜、コール対応をしたり排泄介助などをしながら、やり残した仕事や書類作成などを行います。
特にそういう業務が無ければ「ゆっくりできる時間」でもあります。
5時00分~6時00分「居室巡回・排泄交換(介助)、記録、朝食の準備」
全入所者の居室を巡回し、様子確認を行います。
排泄介助が必要な入所者の対応もします。
それらが終われば記録をします。
可能ならば、この時間に朝食の準備をしておきます。
これから一番忙しい時間に突入するので、余裕があるのはこの時間までです。
6時00分~7時00分「起床介助」
夜間帯で「最もハードで過酷」な時間です。
1人で全入所者を離床させ、共同生活室に誘導します。
基本的に①ベッドから起きてもらい、②布団を整え、③排泄介助が必要な場合は行い、④パジャマから普段着に着替え、⑤入れ歯を装着し、⑥洗顔したり整髪を行い、⑦部屋のカーテンを開けて共同生活室へ誘導、という流れになるのですが、入所者を1人誘導するのに平均10分も掛かってしまうと「入所者20人×10分=200分(2時間40分)」となり、朝食に間に合いません。
では、半分の時間で平均5分の場合は「入所者20人×5分=100分(1時間40分)」となり、これでも朝食に間に合わないことになってしまいます。
ということは、「入所者20人×3分=60分(1時間)」という計算式がピッタリ朝食に間に合う時間ということがわかります。
もちろん、自立度が高い利用者もいるので一概には言えませんが、そういう入所者も含め、離床介助に掛けられる時間は「入所者1人当たり3分」という現実があります。
しかし、スピード重視で介助をすると思わぬ事故が発生してしまったり、入所者を危険な目に遭わせてしまうリスクが高まります。
ですから、「離床介助を始める時間をもっと早める」「早番の職員が来てから手伝ってもらう」等の対応を検討していく必要があります。
7時00分~8時00分「朝食介助、見守り介助、片づけ」
早番の職員が出勤してくる時間となり、援軍を得てやっとワンオペ状態ではなくなります。
しかしそれでも「二人」しか職員はいません。
入所者に朝食を提供し、見守りや介助を行います。
内服薬がある入所者には服薬介助も行います。
朝食が終われば下膳して、片づけをします。
口腔ケアも行います。
8時00分~9時00分「排泄介助、パソコン入力、やり残しの確認」
朝食終了後、排泄介助を行います。
日勤帯の職員も出勤してくる時間になります。
トイレで排泄をする入所者はトイレへ誘導し、オムツを使用している入所者はベッドに寝かせてオムツ交換をします。
既に体力の限界が来てヘトヘト状態ですが、もう少しで勤務時間が終わるので、最後の力を振り絞って介助をします。
一通り終われば、朝食と排泄の記録を行います。
夜勤帯でやっておかなければならなかったことをやり忘れていないか、再度確認をします。
既に体力の限界と眠気で頭が回らない状態ですが、特にやり残しが無ければ、晴れて夜勤終了となります。
おつかれさまでした。
最後に
夜勤スケジュールと仕事内容を解説しましたが、これは「何事もなく平和な夜勤だった場合」になります。
体調が悪化した入所者がいたり、転倒や骨折などの事故が発生した場合はその対応に追われることになり、全てのスケジュールが崩れてしまいます。
また、ニュースなどで流れてくる「介護現場での事件」の多くも夜間帯に発生しています。
犯罪行為をしてはいけないのは当然ですが、夜間に事件が集中しているという事実は「夜勤体制に問題がある」ということを雄弁に物語っているのではないでしょうか。
以上、「介護施設の夜勤」についてご存知なかった人のご参考になれば幸いです。