常識的に考えて「夜は寝るもの」です。
夜にちゃんと寝なければ体内時計やホルモンバランスも狂ってきます。
ですから、「出来るだけ夜勤の回数を減らしたり夜更かしはやめましょう」というお話ではありません(もちろん可能ならそうしたいところですが)。
今回の記事で書きたいのは、介護現場でも「夜は寝るもの」「夜寝ることが人間らしい生活」という前提があるために、「余計に様々な問題やリスクが発生してしまっているのではないか」ということです。
つい最近も、北海道で「24歳の男性介護職員が在宅介護サービス利用の35歳男性を何度も殴り死亡させる」という介護事件がありました。
この事件の容疑者である介護士の動機は「利用者が寝付かなかったから腹が立った」という報道がされています。
詳しい状況はわかりませんが、利用者が寝付かなかったからと言って手を出してしまうことは絶対にあってはなりません。
しかし、絶対にあってはならないことが発生してしまうのも介護現場の現状です。
今回は、介護現場では「夜は寝るもの」という前提をやめる必要性について記事を書きたいと思います。
「夜は寝るもの」という前提をやめる必要性
「夜は寝るもの」という前提があるが故に様々な問題やリスクが発生してしまいます。
その前提や既成概念を取り払って考えていかなければ「リアルな介護現場の実情に沿っている」と言えなくなってしまいます。
夜間の職員配置
介護施設での夜間の職員配置は人員配置基準によって「一人体制(ワンオペ)」が認められています。
これは「夜は寝るもの」「多くの利用者は夜寝るであろう」という前提があります。
仮に1人や2人昼夜逆転だったり不穏な利用者がいたとしても、他の多くの利用者は寝ているのだから職員1人でも対応可能だろうという前提です。
しかしその1人の利用者の対応に苦慮して他の利用者の対応が満足に出来なかったり、場合によっては夜に活動をする利用者が3人以上いる可能性もあります。
また、同じタイミングで利用者の体調の悪化や急変が発生するとも限りません。
「その辺の個別の具体的な事案については事業所内で上手くやってくれよ」ということなのでしょうが、「利用者に夜に寝て貰わないと業務が回らない環境」「上手くいかなかったら人の命が危険に晒される」という重責を1人の介護職員に背負わせてしまっている現状は、人の命を軽視していることになるのではないでしょうか。
「夜は寝るもの」という前提をやめて、「夜に寝ない利用者がいる可能性」「夜に寝ない権利もある」「人の命を預かる業務だから最大限の対策をする」ということに配慮することが必要なのです。
介護事件の多くは夜間帯に発生
ニュース報道で流れてくる介護事件の多くは「夜間帯に発生」しています。
そして、「マンツーマン対応中に夜に寝ない利用者に対して行われる」ことが多いように感じます。
つまり、共通点として
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という三拍子が揃うと介護事件の発生確率が上がると考えられます。
マンツーマン対応は個別ケアを推奨するユニットケアでは日中でもあり得ることですが、何かあればすぐに他職員を呼んだり相談できる日中と、全ての判断を自分1人でしなければならないワンオペ夜勤では、その独特の閉塞感や重責は雲泥の差があります。
神奈川県川崎市で発生した「有料老人ホームの連続転落死事件」や岐阜県高山市で発生した「老健で入所者3人死亡、2人入院の事件」でも上記三拍子が揃っていました。
東京都の「有料老人ホームで男性入所者が死亡した事件」と「入所者に布団を何度も汚されたため殺害して逮捕された事件」でもこの三拍子が揃っていました。
介護職員の人間性や資質の問題が大きいことはあるにしても、「寝付けない利用者の対応に苦慮」したり「寝てもらわないと困る環境がある」から、こういった介護事件が発生してしまっていると言えます。
「人間らしい生活」を前提とすることで「人間として生きることが出来ず命の危険が発生するかもしれない」という状況では本末転倒ではないでしょうか。
職場や事業所単位だけでなく、業界や国が「介護現場では夜は寝るもの」「利用者が夜寝るように各事業所が努力をすればいい」という前提をやめて「夜寝ない権利もある」「夜寝ない利用者ばかりだったらどうするのか」ということを真剣に考えて「人の命を大切にしていく」ことが必要なのではないでしょうか。
重要なのは「人を大切にする」こと
もちろん、「夜寝ること」は規則正しい生活を送る上で大切なことです。
多くの利用者が昼間に寝て夜に活動している介護施設があれば「何だか不健全」に見えてしまうでしょう。
ですから、規則正しい生活が送れるように可能な限り支援していく必要があるのは当然ですが、この記事で言いたいのは「最悪の場合を想定しておくことで人を大切にできる」ということです。
我々だって寝れない夜もあれば夜更かしをする日もあるでしょう。
規則正しい生活をすることだけが「人間らしさ」ではないはずです。
介護現場で「夜は寝るもの」という既成概念を当たり前のように押し付けてしまうことで、介護職員の負担が大きくなったり利用者の生命が危険に晒されたりしているのが現状です。
それを改善していくためにも「夜に寝なくても大丈夫」「夜に寝なくても安全安心」という介護現場でのセーフティネットが必要なのです。
セーフティネットがあることで「人を大切にすること」に繋がっていくのではないでしょうか。
最後に
今回は、介護現場では「夜は寝るもの」という前提をやめる必要性について記事を書きました。
制度上であったり、個々の既成概念であったり、職場の体制上「夜は寝るもの」という前提があるから発生してしまう悲劇もあるのではないでしょうか。
特に認知症者や日常生活全般に支援が必要な人が共同で生活している介護施設では、一元的な前提では対応しきれないことが沢山あります。
大切なのは、介護職員も利用者も含めて「人を大切にするためにはどうすればいいのか」を突き詰めて考えていくことなのです。
コメント
夜は寝る、固定観念なのかも知れませんが…私は夜に寝たいです(笑)
私の勤務している特養は、2ユニットをワンオペです。勤務している階は比較的夜寝ている方ばかり(昼間も寝てばかりの人もいます、しかもかなりクリア)です。トイレに行きたいという目的をもって起きる人ばかりで、本当に助かってます。
ワンオペなので、センサーマット使用者のとこに急行した時に別のセンサーマット使用者のセンサーが鳴ると「終わった…」と観念せざるを得ません
起きるのが、起きているのが悪いとは言いませんが、意味もなく(こんな言い方いけませんね)起きるのはごめん被りたいなあと思います
>ともさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
そうですよね、私も夜は寝たいです(笑)
そうではない現実が介護現場であった場合に「終わった…」とならないような対策が欲しいですね。