介護施設は入所者が24時間365日、職員から何らかの支援や介助を受けながら生活しています。
そこで今回は「介護施設で夜間に爪切りをすることがあるのか」というシュールなテーマで記事を書きたいと思います。
「夜間に爪切り」というテーマを選んだ理由
何故こんな記事を書こうと思ったのかというと、介護施設で夜勤をしている時に「入所者の爪が伸びている」と気づいたり、入所者から「爪を切って欲しい」という訴えがあった経験があり、その時に「介護施設では夜間に爪を切ってもいいのか?」ということを考えたのがきっかけです。
介護職員での「夜間の爪切り」について
家庭であれば、夜だろうと昼だろうと「ご自由に爪切りをして下さい」と言えるのですが、夜間の介護施設の場合はどう捉えれば良いのでしょうか。
「他人への爪切り」は医療行為ではないのか
そもそも、「入所者の爪を切るという行為は、医療行為に当たり、介護職員は行うことができないのではないか」という疑問があります。
この疑問に関しての答えは以下になります。
①爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること、については原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がない。
【引用元】平成17年7月28日 厚生労働省医政局長通知
「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」
つまり、爪白癬や巻き爪などや、糖尿病等の疾病で専門的な管理が必要な爪は介護職員が爪切りをすることが出来ませんが(医療行為になる)、正常な爪であれば介護職員が入所者の爪切りをしても問題はない、ということになります。
「昔からの言い伝え」について
昔からの言い伝えで「夜に爪を切るのは縁起が悪い」と言われています。
介護施設という「仕事の場」で言い伝えや迷信を気にしていたら仕事になりませんが、仕事の場である一方、「入所者の生活の場」でもあるのです。
何故「夜に爪を切ると縁起が悪いのか」という根拠も併せてご説明しておきたいと思います。
①「身を切る可能性が高い」
昔は電気が通っていない時代がありました。
電気が通っていても満足な供給がなされなかったり、戦時中や節電のために極力電気を使わないようにしていた時代もありました。
つまり、昔の夜は家の中でも薄暗かったのです。
そんな環境の中で爪を切ると身を切って怪我をしてしまう可能性が高いため、「夜に爪を切るのはダメ」ということが言われ出したようです。
②「親の死に目に会えない」
「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」ということもよく聞きます。
これは、「夜に爪切り」を略して「夜爪」とし、それを「よづめ」と読ませ、「世詰(よづめ)」に語呂を掛けたもののようです。
「世詰」とは「自分の世を詰めること」で、つまり「早死にしてしまうこと」という意味になります。
「親より早く亡くなってしまうから親の死に目に会えないよ」という回りくどい意味なのです。
介護施設に入所している利用者の親がご存命の確率は相当低いでしょうから「親の死に目」はもう関係なくなってしまいますが、誰だって早死には嫌なはずです。
ワンオペ夜勤という環境
介護施設での夜勤はワンオペ体制であることが多いため、一人の入所者にゆっくり時間を掛けることが難しくなります。
爪切りをしている途中に他の入所者から呼ばれれば中断してしまいますし、そもそも夜勤中に時間がある時はすぐに手が離せる業務をするのが基本です。
爪切は意外と時間が掛かるので、出来れば夜間は避けたいのも事実です。
身を切ってしまう可能性
部屋の電気をつけて明るくしていたとしても、他人の爪を切るのはなかなかテクニックが必要です。
爪切りの最中に、不意に手や足を動かされたら身を切ってしまい怪我をさせてしまう可能性が高い行為です。
怪我をさせてしまうとインシデントとなり、報告書なども必要になってきます。
良かれと思って行った爪切り行為で、入所者に怪我をさせてしまったり、業務が増えてしまう可能性を考えると出来れば夜間は避けたいのが正直なところです。
夜間は看護師がいない
仮に夜間に入所者の爪を切り怪我をさせてしまっても、看護師がいないため医療的な判断や処置ができません。
夜間は待機看護師が自宅で待機していますが、わざわざ夜中に電話で起こしてまで報告しなければならないほどの外傷でもないでしょうし、かと言って報告しておくことが悪いことでもないような気もします。
介護職員でもガーゼ保護くらいはできますが、わざわざ看護師のいない夜間帯に入所者を怪我させてしまう可能性のある爪切りをする必要はないと思ってしまいます。
結局どうすればいいのか
介護施設での夜間の爪切り行為について結局どうすればいいのか、ということですが、結論から言えば「緊急性がないのなら、翌日の昼間にしてもらう」ということになります。
もちろん、夜間であっても今すぐ爪切りをしなければならない緊急性がある場合は別ですが、そうでない場合は翌日の日中に看護師がいる時間にずらしてもらう方が無難です。
「夜間に爪を切らなければならない緊急性」という事例は正直あまり思い浮かびませんが、爪を切らなければ居ても立ってもいられないような「爪切り依存症」だとか、伸びた爪で自傷他害行為をしてしまうような場合が考えられます。
もちろん、事業所によって取り決めや指示がある場合はそちらを優先させて下さい。
最後に
今回は、介護施設での夜間の爪切り行為について記事を書きました。
事業所で取り決めや指示があればそれに従うのが一番良い選択なのですが、そこまで取り決められていなかったり、現場職員の判断に委ねられていることが多いのではないでしょうか。
もちろん、臨機応変な対応が必要ですが、夜間の爪切りは極力避ける方が良いのではないでしょうか。