介護施設には色々な人が入所していますが、その家族もまた様々です。
施設での介護に協力的で理解を示して下さる家族もいれば、非協力的でクレーマー気質な家族もいます。
また、一見協力的に見えても実は内心、「施設での介護に何かしらの不満や不信感を抱いてはいるが親を預かってもらっている手前言い出しにくい」という家族もいるのではないでしょうか。
そういった状態のことを「親を人質に取られている」と言い表す家族もいます。
口には出さないまでも、「内心そう思っている本音」であったりします。
今回は、利用者の家族が介護施設へ抱く本音としてあり得る「親を人質に取られている」ということについて記事を書きたいと思います。
家族の本音?「親を人質に取られている」
私自身、冗談交じりも含め「親を人質に取られている状態」という発言をする家族を何人か見てきましたし、厚生労働省が「施設職員のための高齢者虐待防止の手引き」の作成の基礎資料として調査を行った「高齢者虐待防止の取組みに向けたご本人又はご家族向け調査」でも、「施設での介護で気になることがあっても(親を)人質にとられている状態なので相談できない」というような回答内容がありました。
全ての家族ではないにしても、やはりそういう気持ちを持っている家族は一定数いることがわかります。
しかし、現場の介護職員からしてみれば「人質などという言葉を使われるのは心外」「角が立つような言い方をする時点で建設的な話し合いができない人なのではないか」という印象を持ちます。
家族が「親を人質に取られている」と感じる理由
家族が「親を人質に取られている」と感じる理由としては
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というものが多いようです。
介護士にしてみれば
現場で直接的に介護を行っている介護士にしてみれば、「親を人質に取られている」などと言われたら気分が良いものではありません。
多くの介護士が「人質だなんてこれっぽっちも思っていないので、いつでも退所や転所して貰ってOK」と内心思うのではないでしょうか。
しかし、それを口に出せば話が余計にこじれてしまう可能性が高いため出来ません。
そもそも家族の主張が「退所や転所が困難だから人質状態」だと言っているのですから、退所や転所を勧めると家族を更に刺激してしまい角が立ちます。
よくよく考えれば、それならば初めから角が立つような「人質発言」をしなければいいのではないでしょうか。
現実は「反対の事」が起こっている
リアルな介護現場では、人質発言をする家族が思っている事と反対の事が起こっています。
つまり「細かくて口うるさくて異常な権利者意識を持っている人が優遇されている状態」なのです。
介護現場は「クレームを言った者勝ちの世界」なのです。
そんな状態なので、介護士が疲弊していき退職する職員まで出てしまい本末転倒な悪循環があるのです。
何でもかんでも頭を下げて家族の言うことを聞き、現場介護士に押し付けてしわ寄せをしていく事業所に問題があるのですが、そもそもクレームを入れることで仕返しや不当な扱いになることはないですし、そんなことをする介護士もいないという証拠でもあります。
相談はいつでもしたら良いが建設的に
「介護士たちはクレームに怯えていて過重労働の上に過大なストレスを感じているから相談もクレームも一切言ってはダメ」というわけではありません。
ケアについての具体的なことでしたら、現場職員に直接言ってもらっても良いですし、各種相談窓口もあります。
問題なのは「介護士だけに無理難題を押し付けたり、介護士は人質に仕返しをするようなサイコパス集団だと思われるような四面楚歌状態」にあります。
そもそも利用者は人質ではありません。
そして、いつでも何でも相談して下さって結構なのですが、「建設的な話し合い」ができるようにお互いがお互いを尊重し理解しようとする努力が必要です。
「お金を払っているんだから」というような権利者意識だけの押し付けや、「親を人質に取られている」というような角の立つ被害妄想では上手くいくものも上手くいかなくなります。
利用者も家族も介護士も同じ人間です。
その人間同士が利用者を支援してくために協力体制や信頼関係を築きながら「ひとつのチーム」として考える必要があります。
その中で、自分の意見が採用されることもありますし、通らないこともあります。
それは家族であっても同じです。
それを理解した上で、建設的な話し合いができれば「親を人質に取られている」などと思うこともないでしょう。
最後に
今回は、利用者の家族が介護施設に抱く本音として「親を人質に取られている」ということについて記事を書きました。
家族が「親を預けてお世話になっている手前言いたいことも言えない」という状態は不健全なので、気になることがあれば気軽に相談をしてもらえれば良いかとは思います。
しかし、「親が人質」などと発言してしまうような人は、建設的な話し合いが難しいのかもしれません。