「うちは年収360万円も出すのに求人応募がない」
なんて嘆いている事業所を見掛けたり聞いたりしますが、正直なところ
「年収360万円じゃ誰も来るわけないでしょ」
と思うわけです。
しかもその年収は「介護福祉士資格者」であって、無資格者はもっと低くなるようです。
今回は「介護福祉士の年収が360万円では求人応募が来ない理由」について記事を書きたいと思います。
年収360万円の壁
事業所にしてみたら「360万円も支給してやる」なのかもしれませんが、介護福祉士にしてみれば「たった360万円しか支給されない」ということでしかありません。
そこにお互いの認識や考え方の違い、乖離、壁があるのです。
財源の壁
介護保険という税金で賄われている介護職員の財源には確かに限りがあります。
年収360万円も給料として貰えれば「御の字」と言われている業界です。
しかし、最近は年収400万円以上を普通に支給している介護事業所も多数ありますし、そもそも全産業の平均年収が420万円程度なので、介護福祉士ならば最低でもそれくらいは欲しいところです。
本当に嘆くのなら「年収400万円以上から」にして欲しいところです。
考え方の壁
事業所が「年収360万円も」と考えているなら、それは思いあがりです。
何故なら、「介護職員(無資格者も含む)の平均年収は約357万円」だからです。
(厚労省の「平成29年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(PDF)」から算出)
介護職員全体の平均年収より3万円ほど高い年収を掲げて「介護福祉士なら年収360万円出しますよ~」「年収360万円も貰えれば十分でしょ」などと言っている姿は滑稽です。
現場のことを何も知らない人だからこういう図々しいことが言えるのだと思います。
私が経営者なら「介護福祉士に年収360万円しか出せなくて大変申し訳ないのですが、今後段階的に給料を上げていけるキャリアパスを準備し優遇して参りますので、どうぞうちに就職して下さい」と言うでしょう。
「十分でしょ」なんて図々しいことを言う事業所には絶対に就職してはいけません。
基本給の壁
残念なことにこの年収360万円には諸手当やボーナスも含まれています(年収なので当然ですが)。
そうなると基本給がいくらで、月々の手取りはいくらになるのでしょうか。
控除される金額にもよりますが、恐らく手取り20万円ありません。
そして基本給も20万円以下であることが推測できます。
基本給が低ければ、ボーナスの金額も低くなります。
手当(夜勤手当や残業手当等)も必ず半永久的に支給される保証がない不確かで不安定なものになります。
介護業界にありがちな「基本給を低く設定して手当で水増しする」という「悪質運営ド・ストライク」な求人に魅力は感じません。
最後に
「年収360万円」は介護職員にとって様々な壁になる金額です。
要は平均的でありきたりな金額の求人と言えます。
恐らく、その平均以下の年収200万円台や300万円前後のワーキングプアレベルの超劣悪な待遇の事業所にお勤めの人に向けた求人なのだろうと思います。
そういう人達にとっては、幾ばくかの収入増になりますのでメリットがあるでしょう。
しかし、今後はそんな平均的な金額では求人応募なんて来ない時代が来ています。
結論として「介護福祉士に対して年収360万円では少なすぎる」のです。
それが理解できる事業所が増えてくれれば人員不足も少しは解決できるのではないでしょうか。