介護職員の収入は低水準を這いつくばっています。
2019年10月から「介護職員等特定処遇改善加算」がスタートしますが、最終的に「事業所の柔軟な運用と裁量に委ねられている」ため、事業所個々の判断や基準によって「介護職員の収入格差が拡大する」と予想されます。
それにしても何故、このような「表面をなぞったような政策」ばかりなのでしょうか。
抜本的に賃金水準や給与体系を見直したり、介護福祉士を公務員化するなどの大規模な改革を行えば、賃金水準も改善しますし、人員不足も解決することでしょう。
しかし政府はそんなことをするどころか、「外国人介護士を大量斡旋し介護現場へ投入する方法」を選択しました。
もちろんそれでも人材不足は解消しませんし、「言葉の壁の問題」が発生したり「労働者を安い賃金でこき使う」ことになり、外国人介護士にも日本人介護士にも配慮に欠けた実情に沿っていない愚策と言えます。
表面上を逆撫でするような愚策が続くと「本当に成す術がない」という気がしてしまいます。
今回は、「介護職員がいつまで経っても低賃金である本当の理由」について記事を書きたいと思います。
(スポンサーリンク)
介護職員が低賃金の本当の理由
介護職員が低賃金である理由は1つだけでなく複数あります。
一般的に言われているのが「財源不足」「事業所の中間搾取」です。
どれも間違いではありませんが、もっと突き詰めて「介護職員がいつまで経っても低賃金である本当の理由」について解説していきたいと思います。
財源不足
介護保険制度は介護保険で成り立っており、財源も介護保険です。
この介護保険の財源が不足しているため、介護職員に「他産業の同年代の人が貰っている賃金と同水準は支払えないからそれ以下で我慢してね」と言っているわけですが、「外国人を大量斡旋して教育をさせて身の回りのお世話をするお金はあるけど、日本人介護士を豊かにさせるお金はないのよ」というのも本末転倒な気がします。
そもそも、「政府がその気になれば財源はどうにでもなる」のです。
今後、2019年10月の特定処遇改善加算の開始と同時に「消費税10%」になる予定ですが、どの税金であろうともその税収をどのように使おうが結局は「政府のさじ加減ひとつ」なのです。
つまり、「介護職員の賃金を上げる財源がないのではなく、財源を確保する気がない」のです。
では何故、政府は「介護職員の賃金を上げるための財源を確保する気がない」のでしょうか。
答えは簡単です。
「自分には関係ないから」です。
国会議員や官僚ともなれば、既に莫大な貯蓄を持っているでしょうし、もし今後、自分や自分の家族に介護が必要となっても「別に介護保険を使う必要もない」わけです。
上級国民との温度差は「池袋の車の暴走事故」でも痛感したことでしょう。
「全ての国民は法の下で平等」ですが、実際は「全ての国民は上級国民が作った法の下で上級国民の忖度の中で平等に区別される」ということになってしまっています。
つまり、介護職員の賃金が上がらないのも、「介護職員という下級国民は、財源を握っている上級国民のお眼鏡にかなわない」ということになろうかと思います。
事業所の中間搾取
介護報酬が事業所に入ってきても、それをどれだけ介護職員に給料として支給するかは事業所の裁量に委ねられています。
内部保留が許されていない「処遇改善加算」などは別として、基本給や支給額が著しく低い場合は「事業所が中間搾取している額が大きい」と言えます。
事業所の規模や都市部や地方などの違いによって「格差」が生じやすいのも事実ですが、そもそも「年収600万円の介護職員」は今まで見たことも聞いたこともありません。
つまり、結局は介護職員は「限られた財源の中で年収600万円以下で奪い合いをしているだけ」という状況になります。
本当の理由「ロビー活動が弱い」
「財源」の問題や「事業所の中間搾取」も間違ってはいませんが、もっと掘り下げて考えていくと、そもそも「介護業界自体がロビー活動に弱い」ということが言えます。
ロビー活動(ロビーかつどう、lobbying)とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動である。
【引用元】ウィキペディア「ロビー活動」
政治に無関心だったり、拒絶反応が出てしまう人がいるかもしれませんが、介護職員の給料の財源を握っているのが政府である以上、「政治を動かさないと介護職員の賃金も上がらない」のです。
つまり、「介護職員の収入や処遇を改善してくれるような政策を打ち出してもらうために、政治家に影響を与えるような私的な政治活動が必要」ということになります。
そして、現状でこれが出来ていないため、介護職員はいつまで経っても低賃金のままなのです。
しかし、残念ながら介護職員個人でできることは限られています。
選挙に行くことくらいでしょうか。
もちろん、多くの介護職員が多くの投票をすることで政治を動かすことも可能ですが、もっと重要なのは「団結して団体で政治に影響を及ぼすことができる活動」です。
そして、それは政権を持っている「与党」であれば即効性と威力を発揮します(野党の政治家を顧問としている全国規模の労働組合はあります)。
団体でロビー活動をしようと思ったら、「職能団体」や「労働組合」などが介護職員の意見や要望を取りまとめて政治に影響力を持っていく必要があります。
団体でロビー活動をすることで「選挙の際にまとまった票」を持っていることで「抑止力」や「双方のメリット」にもなります。
「介護職員を味方につけないと次の選挙はヤバいかもしれないな」と思う政党や政治家が増えれば必然的に介護職員の給与水準も処遇も改善していくことでしょう。
しかし、介護業界はこのロビー活動が非常に脆弱です。
つまり、「政治に関与し政治家や政策に影響力を持てていないため、介護職員の給料はいつまで経っても低水準を這いつくばっている」のです。
最後に
今回は、介護職員がいつまで経っても低賃金である本当の理由について記事を書きました。
選挙の時期になると、事業所内に「公選ハガキ」の協力依頼があったりします。
しかし、どの政党であってもどの候補者であっても「とりあえず事業所の独断と偏見だけで節操のない状態」ではないでしょうか。
もちろん、職場なのですから特定の政党や候補者を応援したり協力する義務はありません。
そういった「事業所の柔軟な裁量」だけで動かされている「処遇改善加算」も「ロビー活動」も、ハッキリ言って不毛です。
何故なら「主役が我々国民や介護職員ではなく事業所や候補者」になってしまっているからです。
団結して団体で政治や政策に影響を及ぼせるような状態にならないと、いつまで経っても介護職員の賃金水準は地を這いつくばったままなのかもしれません。