介護職員の将来性

「介護職の平均月給が30万円突破?」現役介護士が心中穏やかではない5つの理由

投稿日:

 

2019年4月10日に流れたニュースで、介護職員の給料に関するものがありました。

2018年9月時点で、「介護職員の平均月給が30万円を超えた」という統計を厚生労働省が発表したのです。

「30万円」という数字だけを見ると

「結構多い金額」

「普通に暮らせる金額」

「全然薄給ではないイメージ」

という風に見えてしまう人もいらっしゃるかもしれません。

確かに、もの凄く少ないわけではありませんが、その30万円という金額には「付け加えておかなければならない注釈」があると感じました。

今回は「介護職の平均月給が30万円を突破したという報道に対して、現役介護士の私が心中穏やかではない理由」について記事を書きたいと思います。

 

 

 

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ニュース概要

 

介護職員の平均月給、初の30万円超え 厚労省調べ

厚生労働省は10日、介護施設で働く常勤介護職員の平均月給が2018年9月時点で30万970円と前の年と比べて1万850円増えたと発表した。

30万円を超えたのは09年の調査開始以来初めて。

介護現場での人手不足感が強まるなか、待遇の改善で職員の引き留めを図る施設が増えているためだが、産業界の平均水準には届いていない。

特別養護老人ホームなど全国の1万670施設・事業所を調べ、有効回答率は74.1%だった。

平均月給には基本給のほか、諸手当や賞与も含まれる。

月給のうち基本給は18万1220円で、前の年と比べて3230円増えた。諸手当は7万1330円で3610円増、賞与も4万8420円と4010円増えた。

 

【引用元】日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43563680Q9A410C1EE8000/

 

 

 

現役介護士が心中穏やかではない理由

 

収入や給料が少しでも増えることは大変ありがたいことです。

今回は、「介護職の収入が少し増えましたよ」という趣旨のニュースなので、本来は喜ばしいはずなのに、何故、心中穏やかではないのでしょうか。

その理由を書いていきたいと思います。

 

理由①「賞与も含まれている」

この統計では、単純に介護職員が単月で支給される月給ではなく、賞与も含まれた年収を足して相当月で割った計算で出た数字です。

ニュース記事にも書かれている通り「賞与」も含まれています。

つまり、月給30万円を単純計算すると、「年収360万円」ということになります。

この年収360万円という数字について、過去の記事でも書きましたが「専門職としての年収としては少なすぎる」のです。

「介護福祉士の年収360万円?」それでは求人応募が来ない理由

この記事は厚労省が発表した平成29(2017)年の統計を元に書いているので、「結局は2年前の数字と大差はない」ということが言えます。

大差がないのに、あたかも「30万円の大台に乗りました」というイメージだけが先行すると「心中穏やかではない」のです。

 

理由②「微増するのは当たり前」

正職員(正社員)として働いているのなら、多少なりとも毎年「昇給」があるかと思います。

介護業界はその昇給率がとても塩らしくて、「1000円~3000円程度」ではないでしょうか。

間を取って2000円の昇給だとしても、単純計算で勤続10年で「2万円の昇給」、勤続30年で「6万円の昇給」ということになります。

ですから、介護業界において「基本給が30万円になることは夢のまた夢」だということが言えます。

ニュース記事によると、基本給が「3230円増えた」ということですが、平均基本給は「18万1220円」だそうです。

基本給が18万円だなんて、他の業界の初任給程度です。

3230円増えたと言いますが、普通に考えて「その程度昇給するのは当たり前」なのです。

問題なのは、そもそもの給与水準が低いことであって、それが微増したところで「焼け石に水」でしかありません。

昇給で微増するのは当たり前のことであって、その増加だけを切り取って「少しずつですが給与水準が上がっていっています」というイメージだけが先行すると「心中穏やかではない」のです。

 

理由③「夜勤手当も含まれている」

介護施設で働いていれば夜勤があります。

つまり、この平均月給30万円の中には「夜勤手当」が含まれていることになります(もちろん他の手当等も含まれています)。

ですから、夜勤がない他の産業や業界の平均給与と比較するには少々無理があるのではないでしょうか。

ニュース記事にも書いてある通り、それでもまだまだ「産業界の平均水準には届いていない」のです。

もし他の夜勤がない産業の人が夜勤手当を支給されたとしたら、月給40万円や45万円になるはずです(賞与や諸手当も含まれた統計なので)。

そう考えると、「夜勤手当込みで月給30万円という介護職員の給与水準は著しく低水準」なのです。

夜勤がない他の業界と同じ土俵で単純に比較し、「もう少しで追いつける」などというイメージが先行してしまうのは「心中穏やかではない」のです。

 

理由④「10年前は既に月給30万円だった」

ニュース記事中の

30万円を超えたのは09年の調査開始以来初めて。

という部分が気になってしまったのは私だけでしょうか。

今から10年前の2009年には、介護職員の平均月給は30万円以上あったということになります。

2000年4月に施行された「介護保険法」によって、介護職員の給与水準は低空飛行することになりました。

介護報酬の引き下げや事業所の中間搾取によって、低い水準を彷徨いはじめ、今度はそれによって人材不足になったために「介護職員処遇改善加算」や「業界10年の新加算」等で底上げをしようとしています。

正直、やっていることは「意味がよくわからない」としか言いようがありません。

「元々の水準から下げた挙句にまた上げる」というやり方で、「生かさず殺さずの生殺し状態を地でいっている」のが介護職員の給与水準になります。

つまり、今の「月給30万円」という数字は「やっと10年前の水準に戻れた」というものでしかなく、「心中穏やかではない」のです。

 

理由⑤「地域格差が大きい」

今回は「平均値」ということですが、収入に関しては「中央値」で考えなければ、芯を捉えた統計にはなりません。

中央値は平均値と類似した目的で使うが、用途によっては中央値のほうが平均値よりも優れていることがある。これは、たとえば年収の場合を考えてみるとわかりやすい。

貧富の差が激しい国では、一部の富裕層が平均年収をつり上げてしまっている為、平均年収は「普通の人」の年収よりもずっと高い値になってしまう。

この為平均年収は「普通の人」の生活水準を推し測るには向かない。

例えば、人口100人の集落で、90人が年収200万円だとしても、10人が年収5000万円であれば平均年収は680万円となってしまい、実態と大きくかけ離れることになる。

 

【引用元】ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E5%80%A4

つまり、高収入(とは言っても介護業界ではせいぜい年収500万円前後ですが)の人が増えてくると、低収入(例えば200万円台後半)の人が沢山いても、その中間値でしか捉えることが出来ず、格差が見えづらくなります。

ですから、まだまだ年収360万円に満たず、月給30万円なんて見たことも聞いたこともない介護職員がたくさんいるのではないでしょうか。

施設形態で給与水準が違うのではなく、介護業界の場合「地域格差」がとても大きくなります。

田舎ほど給料水準が低く、都市部に行くほど高くなる傾向があります。

これは介護業界に限ったことではないのかもしれませんが、介護業界の場合は「介護報酬の単価が地域によって等級づけされている」ために、その単価の等級格差は、「田舎と都市部で最大20%」違ってきます。

つまり、基本給で言えば「田舎では15万円スタート」なのに対して「都市部では18万円スタート」ということも普通にあり得ます。

介護職員にとって20%の差は大きく、この統計では「地域格差を平均という形で塗りつぶしたものに過ぎず、まだまだ介護職員の給与水準の本質や実情に迫れていない」という点で「心中穏やかではない」のです。

 

 

 

最後に

 

今回は「介護職員の平均月給が30万円を超えたというニュースに対して、現役介護士として心中穏やかではない5つの理由」をご紹介しました。

ニュース記事にも書いてある通り、他の業界から見ても「まだまだ低水準」だということには変わりはありません。

「介護職員の平均月給30万円」ということだけが独り歩きしてしまうことも喜ばしいことではありませんし、地域格差によって「介護をするなら都市部で働こう」という発想にならざるを得ないのも本末転倒のような気がします。

地方に住んでいれば都市部まで通勤するのは大変ですし、引っ越しをするのも大変です。

そもそも、高齢者も介護施設も田舎の方が多いのです。

今後の介護業界においては「地域格差」にもテコ入れしていく必要があるのではないでしょうか。

 

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