介護業界の根本的な構造は自己犠牲で成立させる仕組み

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介護業界には様々な問題が山積みですが、これらが解決していくどころか迷走しているようにも見えます。

小手先や表面上でだけ解決をしようとしても、結局は何も解決しないというのは介護業界に限ったことではありません。

物事には全て原因があって結果があるのですから、目を向けて解決していかなければならないのは「根本的な原因であり構造」なのです。

しかし、残念ながら現状では根本原因や構造は臭いものに蓋をするように見向きもされず「表面上」「中途半端」「迷走」「新たな問題が発生」ということになってしまいます。

では、「根本的な原因や構造上の問題が何なのか」ということを考えてみると、それは「介護業界は自己犠牲で成立させる仕組みが問題である」ということに気づきます。

この部分が変わらない限り、根本的な解決にはならないわけです。

今回は、「介護業界の根本的な構造は自己犠牲で成立させる仕組み」ということについて記事を書きたいと思います。

自己犠牲で成立させる仕組み

介護業界の根本的な構造は「自己犠牲で成立させる仕組み」です。

言い換えれば「自己犠牲がないと成立しない」ということになります。

福祉の根底理念

福祉とは、全ての国民や市民に最低限の「幸せ」や「豊かさ」を社会的援助や支援によって提供するという理念になります。

更にその根底には「福祉や介護では儲け過ぎてはいけない」という理念があります。

「儲けてはいけない」のではなく、あくまで「儲け過ぎてはいけない」ということになります。

その理由としては、「福祉は公正中立でなければならないために、利益至上主義になるとその公正中立が崩れやすい」ということが最大の理由になります。

ですから、そもそも福祉・介護業界において「一攫千金」は成し遂げにくいと言えます。

ここまでは理解ができるのですが、この「儲け過ぎてはいけない」という根底理念が一人歩きして、

  • 儲けることは悪いこと
  • 低収入で当たり前の仕事
  • 自分を犠牲にしてでも他者を救う仕事

ということになってしまっていることが大きな問題です。

こういった妙な脳内変換の改悪によって、いつの間にか「介護業界は自己犠牲で成立させる仕組み」という構造が根付いてしまったと言えるのではないでしょうか。

低収入

介護保険制度やその財源などを考えると、確かに現状では介護職員が高収入を得ることは相当困難だと言えます。

しかし、ここで本当に問題なのは

「介護職員は高収入を望んではいけない」

「身の丈に合った介護職員らしい生活や発言をしろ」

「介護の仕事はそういう仕事」

と斬りつけてくる人達です。

その弾圧的な発言の根底には「介護職員は自己犠牲ありき」という思想が透けて見えます。

自分の収入や待遇や希望を発言することさえ許さない良識の欠如した狭い了見の不寛容な人達が「介護業界は自己犠牲で成立させる仕組み」であることを肯定し助長させてしまっているのです。

また、今月(2019年10月)から実施されることになった「介護職員等特定処遇改善加算」なども含め、介護職員の収入を底上げしようとする施策も行われていますが、どれもこれも本気度を感じません。

その最大の理由は

  • 事業所の柔軟な運用に任せすぎ
  • そもそもベースアップをしなければ意味がない

ということになります。

事業所の裁量に委ねることで事業所格差が生じてしまいますし、加算という「手当」を増やしてもベースとなる「基本給」がアップしないことには将来性の不安は全く払拭できません。

介護職員は、表面上でしかない施策で「やっている感」を出している人達を満足させるための当て馬ではないのです。

介護職員の収入は低水準を這いつくばっています。 2019年10月から「介護職員等特定処遇改善加算」がスタートしますが、最終的に...

人員不足

介護現場は人員不足です。

人員不足を解決するために「外国人介護士の斡旋」や「ポジティブキャンペーン」などが行われています。

しかし、そういった「一時的」「表面上」「取り合えず」の方法では一向に解決しません。

そもそも、外国人介護士が100%斡旋できたとしても最大6万人ですから、2025年に不足すると言われている介護士の人数(38万人とも55万人とも言われている)には遠く及びません。

また、外国人介護士を受け入れることで新たな問題が発生したり、日本人介護士の負担が増えることになれば本末転倒です。

外国人介護士が悪いのではなく、根本的な構造として「最終的には現場介護士の自己犠牲によって成立させればいい」という考え方が見え透いてしまっていることが問題なのです。

そして例外なく現状でも「現場介護職員の自己犠牲によって成立させている」のです。

2018年12月8日の参院本会議で、外国人労働者の受け入れを拡大する「改正出入国管理法(改正入管法)」が成立しました。 この法...

職場環境

介護現場の職場環境は人間関係も含め、まだまだ良いとは言えません。

各種法整備やコンプライアンスの遵守が厳しくなってきたために多少はマシになりつつあるのも事実です。

しかし、介護業界はまだまだ排他的閉鎖的な所が多く、内在している問題が表面化しにくいように隠蔽体質となったり巧妙化するなどの新たな問題も発生してきます。

事業所内は完全な「ムラ社会」で、自分の身は自分で守るしかなく、そのために「自己犠牲を払うことで何とか業務や人間関係を成立させる」ということが横行しています。

こういうことを言うと「自己犠牲を払う方にも問題がある」「イヤなら辞めればいい」ということを言う人もいますが、その理論は「いじめはいじめられる方にも問題がある」という理屈と何ら変わりません。

また、仮に転職をするにしても「石を投げればブラックに当たる」と言われている業界で、転職が最後の拠り所となるとは言い切れません。

ですから、根本的な解決をしていくのならば、業界全体をクリーンでホワイトにしていかなければ意味がないのです。

しかし、根本的な構造として「自己犠牲で成立させる仕組み」が根強い慣習となっているうちは根本的な解決も難しいと言えます。

いつまで経っても人員不足の介護現場には「残業」がつきものです。 ちょっと前までは、職員の自己犠牲に頼る「サービス残業」が横行し...

最後に

今回は、介護業界の根本的な構造は「自己犠牲で成立させる仕組み」ということについて記事を書きました。

表面を撫でるような対策や改善方法しか行われていない現状は、「介護業界は自己犠牲で成り立たせるもの」という考え方が根本的な構造として存在しているからだと言えます。

そして、事実そうなっているのではないでしょうか。

このままでは何も解決はしませんし、そもそもこんなことを私などが言うまでもなく「既にわかった上で行われている」のだとすれば大変闇深い業界であると言えます。

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コメント

  1. 通りすがりの介護学生 より:

    介護関連の知識を身につければ身につける程、誰かが犠牲にならなければ回らない業界だと感じずにはいられません。
    お上もそれを黙認した上で政策を打ち出している様に見えて…
    失礼は承知で気になるのは、現職の介護士の皆様は全部分かっててお仕事に従事なさっているのですか?どういった心境で?お仕事自体はとても尊いものだと思うからこそ、もっと声をあげて主張してもいいのに、と思ってしまいます。
    学生の身でありこう言った事を聞くのは大変恐れ多い思いですが、私の周りには聞ける人もいないので…。

    • アバター画像 介護職員A より:

      >通りすがりの介護学生さん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      ある程度は事前情報で介護現場の実情についてわかっているつもりで入職しても、実際に業務をしてみると更に想像を超える職場環境だったりします。
      それを受け入れて耐えながら仕事をしていくか、絶望して辞めていくかのどちらかになろうかと思います。
      だから、人員不足なのです。

      少し前までは、使用者(経営者や管理者等)と被用者(従業員)との上下関係や主従関係は強烈で、新興宗教団体のような洗脳や服従の風潮が強かったように感じます。
      そういった環境や風潮の中で、介護職員などが声を上げたり主張をするとどうなるかはご想像にお任せします。

      ただ、最近はコンプライアンスや労働者の権利についてもうるさく言われる社会情勢になってきたので、徐々にはマシになってきていると感じています。
      ですから声を上げたり主張する介護職員も増えてきたように感じています。
      しかしそれでもまだまだ「不平不満を言うのは心が汚いからだ」「協調性がない」「誰でもできる仕事なのだから仕方がないだろう」「働かせて貰っているだけありがたいと思え」等の言葉で介護職員の心を狩ろうとする人達が沢山いるのが現状です。

      結論を言えば、徐々に声を上げだしてはいるものの、「事前抑制される」「一蹴される」「声が届かない」「同調圧力で潰される」というような現実があります。
      こういった現状は、今後業界がどうなっていくかの「過渡期」と言えるのではないでしょうか。

      • 通りすがりの介護学生 より:

        返信して頂きありがとうございます。
        経営陣に服従するしかなかった過去が今尚続いているのが現状なんですね。
        コンプライアンスが騒がれる様になった今が過渡期に凄く納得しました。
        事前に介護について調べ分かったつもりでいても産まれるギャップは大きい、と言うのは学生の身ではありますが痛感しました。私の様なケースが珍しいのかと思っていましたがそうではないのですね。寧ろ人手不足の要因だったとは。
        大変勉強になりました。

        • アバター画像 介護職員A より:

          >通りすがりの介護学生さん

          こんばんは~
          返信ありがとうございます^^

          地域や事業所が違っても同じような悩みや不満や違和感を感じている介護職員が多いと感じています。
          少しでもお役に立てましたら幸いです。

  2. めど立てたい人 より:

    不確かですが、介護保険自体が介護職員(労働者)に支払う賃金自体に制限(上限)をもうけているとかなんとかと聞いたことがあるような気がします。

    どうなんでしょう?昔からそんな制限はなかったのでしょうか?

    たしか、それに対する事業所のインタビューとして、「職員(現場方)の賃金を制限以上支払うと介護報酬(事業所への)が減額される。そうはいっても介護報酬に依存している以上それでは困るのであげられない」…みたいなのを見た気がしますが、もう何年も前の記憶なので実際はどうなんでしょうかね。

    • アバター画像 介護職員A より:

      >めど立てたい人さん

      こんにちは~
      コメントありがとうございます^^

      介護報酬の賃金上限は私は聞いたことがないですね。
      どちらにしても、報酬(事業所に入ってくるお金)を超えて賃金を出すと運営が破綻してしまうことは間違いありませんね。
      実際の人件費の割合は事業所によって異なってきますが、6割~7割程度だと思います。

  3. アングラー より:

    介護の闇の根本は、厚労省自身が労働基準法違反を奨励する夜勤の人員配置基準に付きる気がします。
    虐待だ、拘束だ、違法だという割には根本の闇には手を付けない。クオリティを上げろ、でも報酬は上げない、労働基準法を守れる配置をしようとするとやっていけないような報酬に設定する。
    これで人手不足対策とか自作自演ですよね(笑)

    • アバター画像 介護職員A より:

      >アングラーさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      そうですよね、ワンオペ夜勤を許している人員配置基準は本当にひどすぎると思います。
      でもよく考えると、それもこれも「介護職員の自己犠牲を前提とした根本的な考え方や構造」があると思った次第です。
      おっしゃるように、これは「自作自演」にしか見えませんね><