燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、仕事を頑張り過ぎたり努力が報われなかったりした場合に虚脱感を覚え意欲を無くして燃え尽きてしまうことです。
燃え尽き症候群は、一種の心因性うつ病や精神障害であると言われてきましたが、世界保健機関(WHO)が策定する「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」の第11回改訂版(最新版)において、「燃え尽き症候群は病気や障害ではなく健康状態に悪影響を与える要因」「職場上の現象」という位置づけとなました。
また、燃え尽き症候群は「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスから生じるもの」と定義されました(第11回改訂版の適用は2022年1月1日)。
※ソース:「WHO公式ホームページ」
つまり、結論から言ってしまうと「劣悪な職場環境や人間関係であったり人員不足が常態化した介護現場で働く介護職員はストレスを抱え込みやすいために燃え尽き症候群になりやすい」と言えます。
では、その背景は具体的にどのようなことがあるのでしょうか。
介護職員が燃え尽き症候群になりやすい背景と対処法
燃え尽き症候群になってしまう背景には「個人因子」と「環境因子」があるのですが、介護現場で発生しやすいパターンを見ていきたいと思います。
※こちらの「バーンアウト尺度」で「情緒的消耗感」「脱人格化」「個人的達成感」を測定することができます。
①熱狂型
燃え尽き症候群のイメージとして一番オーソドックスなパターンと言えます。
個人因子として「頑張りすぎてしまう人」「責任感が人一倍強い人」「ストイックに自分を追い込む人」が陥りやすくなります。
何故ならば、環境因子として介護現場では「やってもやってもキリがない」「やりがいしかない(やりがい搾取)」「頑張っても評価されない(やりがい搾取その2)」「評価されないどころか更に負担が増えたり理不尽なことを言われる(やりがい搾取その3)」という環境であることが多いためです。
いくら強靭な肉体と精神力を持った人であっても、燃え尽きてしまうのは時間の問題となるでしょう。
②挑戦不足型
満足な仕事をしようにも上手くいかず、頑張りたいのに頑張れず不完全燃焼のまま燃え尽きるパターンです。
個人因子として「経験不足」「努力不足」「消極的な性格」などが考えられます。
環境因子としては、介護現場での「理不尽な人間関係で萎縮してしまう」「耐えかねるくらいの圧力や重責」「お互いを助け合う体制がない」「やる気の芽を摘むお局職員の存在」などの環境が背景となります。
個人因子よりも原因ではありますが、やはり環境因子によって「人を育てていく体制や環境づくり」ができていない場合は、不完全燃焼のまま燃え尽きてしまう介護職員が後を絶たないことでしょう。
③疲れ果て型
①の熱狂型と②の挑戦不足型の中間のようなパターンで、やる気はあるのに上手くいかなかったり上手くいったとしても業務そのものに過度な困難さを感じてしまい、必要以上に体力や精神力を消耗し疲れ果てて燃え尽きてしまうパターンです。
個人因子としては「経験不足」「能力不足」「要領の悪さ」などが考えられます。
環境因子としては、介護現場での「技術的なアドバイスをするなどのフォロー体制がない」「過度な業務負担を強いている」「業務がスリム化されておらず、むやみやたらに多い」などの環境が背景となります。
そんな状況では、早々に疲れ果ててしまい燃え尽きてしまうことになります。
燃え尽き症候群にならないために(対処法)
介護職員が燃え尽き症候群になりやすい理由と背景についてご説明しましたが、燃え尽きてしまわないためにはどうすればいいのでしょうか。
まず一番大切なことは「自分を守ること」です。
「燃え尽き症候群は病気ではない」とは言うものの、「病気や障害を引き起こす要因」なのですから軽視や放置できません。
自分を守るために具体的には
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などがあります。
要は「根を詰めたり慌てたり自分を責めても仕方がない」のです。
但し、燃え尽き症候群は「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスから生じるもの」と定義されていることから、環境因子である「職場環境や人間関係」が改善しないことには意味がありません。
「原因があって結果がある」のです。
その原因を何とかしなければ、同じような状況のままだったり、再び介護職員が燃え尽き症候群になってしまう可能性があります。
ですから、未だ職場環境や人間関係を健全化できていない介護現場では「介護職員が燃え尽き症候群になりやすい」と言えます。
最後に
今回は、「介護職員が燃え尽き症候群(バーンアウト)になりやすい理由と背景」について記事を書きました。
燃え尽き症候群は病気や精神障害ではありませんが、健康状態に悪影響を与える要因であるために、燃え尽き症候群になってしまう介護職員を少しでも減らしていく必要があります。
そのためには、職場環境から抜本的な改善をしていくことが重要なのですが、恐らくそれができない(しようとしない)からこそ現状のようになっているわけです。
この場合、「自分のことは自分で守る」しかありません。
自分のことは自分で守るしかない介護現場であるからこそ、自分を守り切れなかった介護職員が燃え尽きてしまうという悪循環が常態化していると言えます。