介護職員が本音や愚痴を漏らしにくい「5つの理由」

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最近ではインターネットが発達し、SNSやTwitterや匿名掲示板などで

  • 介護職員の現状
  • 介護職員の悲痛な訴え
  • 介護職員の生の声

などが発信しやすくなってきました。

しかし、それでもまだまだ少ない方だと感じます。

それは「介護の仕事はやりがいがあるとても素晴らしい仕事なので愚痴や文句ひとつ出ない桃源郷のような業界」だからではありません。

明らかに非常識な環境であったり、地獄絵図のような出来事に遭遇しようが、人権を侵害されようが、介護職員には本音や実情を漏らしにくい原因と理由が存在するのです。

今回は「介護職員が本音や愚痴を漏らしにくい5つの理由」について記事を書きたいと思います。

理由①「秘密保持義務」がある

介護福祉士には法律で定められた「秘密保持の義務」があります。

以下に「社会福祉法及び介護福祉法」を引用します。

社会福祉士及び介護福祉士法 (信用失墜行為の禁止)

第四十五条  社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉士又は介護福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。 (秘密保持義務)

第四十六条  社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。

第五章 罰則

第五十条  第四十六条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2  前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

法律で義務化されており、罰則まであるのですから、おいそれと秘密を漏らすことはあってはなりません。

情報漏洩があった場合は「守秘義務違反」となってしまいます。

しかしこの条文は厳密には「人や法人を特定できる状況」という要件がつきます。

つまり、傍から見て

  • 事業所
  • 利用者
  • 利用者の家族
  • 上司
  • 同僚

などの「特定の個人や事業所」が判別できなければ守秘義務違反に該当しません。

何故なら、特定できなければ被害や損害を被る人も存在しないからです。

条文にも「告訴がなければ公訴を提起することができない」とハッキリと規定してあります。

逆に言えば、特定できてしまう発言は「アウト」ということになります。

ちなみに「匿名」とか「HN(ハンドルネーム)」での書き込みや発言でも明らかに法律に抵触している場合、「発信者情報開示請求」が行われれば書き込み者の特定が出来るので注意が必要です。

したがって、そういうことに鑑みると 「初めから発言しない方がマシ」 ということにもなります。

この法律が手かせ足かせとなり、介護職員が現状や訴えを発信しづらい環境にあると言えます。

しかし、繰り返しになりますが、あくまで 「個人を特定できる内容の発言」+「告訴次第」 になります。

また、「自分は介護福祉士資格を持っていないから関係ない」という人もいるかもしれませんが、殆どの事業所では「就業規定にもこの守秘義務を規定」しています。

したがって、介護業界全体で本音を漏らしにくい環境にあるのです。

理由②「言わないことが美徳」という風潮

介護業界には

「福祉は社会に貢献する仕事」

「社会奉仕の気持ちが大切だ」

「自分を犠牲にしてでも他者を支援するのが奉仕さ」

「文句や愚痴を言うのは心が汚いからだ」

という風潮があります。

もちろん、言っていることが全くわからないわけではないですが、介護職はボランティアではなくひとつの職業です。

職業である以上、プロとして専門性を持って働いています。

プロである以上

「自分の働く環境や待遇を改善していきたい」

「改善することでもっと良い職場環境になる」

「こういう部分を改善すれば業界全体でより良くなる」

「最低限、自分の人権は確保したい」

と思うのは当然のことです。

それは謂わば「向上心」なのです。

「言わないことが美徳」だと考えている人は「向上心を失った人」と言っても過言ではありません。

また、周りにそういう勘違いした美徳を持っている人がいると 「自分も言ってはいけない」「皆、我慢しているのだから」という同調圧力によって正しい発言や訴えが言いにくくなります。

今まで介護業界にそういう風潮が蔓延していたのも事実です。

ですから今も根強く「言わないことが美徳」という洗脳と勘違いをしている介護職員が少なからず存在するのです。

理由③とりあえず「世間のイメージ」に合わせておく

世間の介護職員のイメージは

「社会に貢献する仕事」

「介護の仕事をしている人を尊敬する」

「心が優しいから介護の仕事をしている」

という「ポジティブなもの」が多いです。

つまり、介護職員の世間のイメージは「悪くない」のです。

その「悪くないイメージ」を崩してしまわぬように

  • 愚痴や文句は言わない
  • 世間のイメージ通りの職種でいたい
  • 世間のイメージを裏切りたくない

という人もいるのではないでしょうか。

しかし、実情はそんな良いものではありません。

世間一般の人から見た介護従事者のイメージは 性格が優しい 献身的 という印象を持っている人が多いのではないでし...

ポジティブなイメージを持っている人に、わざわざネガティブなイメージを伝えると、

「介護職員なのに愚痴や文句を言う人」

「自分の仕事に誇りを持っていない人」

という誤解を与えてしまい、自分自身の評価が下がってしまう可能性があります。

また、世間の人は上辺だけでもキラキラとしている職員を良く見る傾向にあります。

「ここで議論しても仕方がないからとりあえず相手に合わせておけばいいや」ということになり、本音や実情を漏らしにくいと言えます。

「キラキラ系介護士」とはなんなのか、どういう介護士のことを指すのかは、以前の記事で書きました。 同僚や後輩や部下にとっ...

理由④本音を漏らすと世間から叩かれやすい

世間の人は「介護職員を尊敬している」と言いますが、その心の奥底には

  • 安い給料できつい、くさい、汚い仕事をするなんて「尊敬」する
  • 安い給料で愚痴や文句を言わずに働く姿に「尊敬」する
  • 自分には到底できない自己犠牲の塊のような仕事だから「尊敬」する
  • そんな仕事をやり続けていることに「尊敬」する

という憐れみにも似た意味も含まれているのではないでしょうか。

もちろん、本当の意味で「尊敬」して下さっている世間の人もいらっしゃるかと思います。

そういう人は決まって、「介護職員のネガティブ発言に寛容」です。

表面上の「尊敬」を口にする人に限って

「介護の仕事をしている人が愚痴や文句を言ってはダメ」

「愚痴が出るのはまだまだプロじゃない」

「努力が足りないから文句が出るんだよ」

などと言いがちです。

しまいには

「そんなに嫌なら辞めればいい」

「仕事は他にもいくらでもあるはずだ」

などと言い出す人も現れます。

「介護の仕事を辞めたくて本音を漏らしているわけではなく、介護現場をより良くしたいからネガティブをさらけ出している」ということを理解してもらえず一方的に叩かれます。

そういう人達には「臭い物に蓋をすることがポジティブではない」ということに早く気づいて欲しいものです。

以前、「介護現場では利用者からの暴力は許されてしまう特殊な業界」ということについて記事を書きました。 賛否両論あって良...

現場で利用者や上司に叩かれ、本音を漏らせば世間に叩かれ、正に介護職員は「フルボッコ状態」だと言えます。

そんな状態であれば、本音を漏らしにくいのは当然です。

理由⑤同業者からもマウンティングされる

介護職員が本音や愚痴を漏らすとキラキラした同業者や業界の人や自称コンサルタントなどから

「愚痴や文句を言うだけでは何も変わらない」

「現状を変えようと思うなら自分が変わらなければならない」

などという「ド正論」をぶつけられたりします。

そんなことは初めからわかっていることですし、正論のマウンティングは正直疲れます。

ここで大切なのは

  • まずは本音や愚痴を漏らすことのできなければ問題点が発見できない
  • 介護業界の問題の多くは自分が変わっても解決しない

ということです。

そして行き着く先は「事業所の経営方針」「介護業界全体の風潮」を改善していくしかない、ということです。

介護現場でも他職種や上司や同僚にマウンティングされ、ネット上で愚痴を漏らしても同業者やコンサルにマウンティングされる業界は非常に摩訶不思議です。

私の勉強不足もあるでしょうが、これほど熾烈なマウンティングが行われている業界は思い当たりません。

マウンティングをされるのが嫌で本音を漏らしにくい状態になっていると言えます。

最後に

今回は「介護職員が本音や愚痴を漏らしにくい5つの理由」について記事を書きました。

「愚痴や文句は良くないもの」という風潮がありますが、介護職員の愚痴ひとつひとつに目を向けていけば「愚痴が出て当然」「愚痴という名の問題点」「人権侵害の吐露」にほかなりません。

介護業界のネガティブ部分を発信し、世間に知らしめ、自らの置かれている環境を改善していけるのが「本当の意味でプロの介護職員」なのです。

最後に、介護職員へのイメージについて

「将来、自分の子供や孫にさせたい職業か?」

ということを考えると自分の本性がわかるのではないでしょうか。

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