介護業界や介護事業所には各々「風潮」や「慣習」や「暗黙の了解」などがあります。
例えば、介護事業所であれば「これがうちのやり方」などというムラ社会的な独自ルールやローカルルールがあったりするのではないでしょうか。
もちろん、会社組織の中で働いている以上、ある程度は従っていく必要があるのですが、中には「明らかにおかしい」「少し考えれば他の方法に改善できるのではないか」というようなものもあります。
しかし、排他的で変化を嫌う事業所の場合は、意固地になって貫き通したり、あたかもそれが世間の常識と言わんばかりの顔で平然とおかしなことをやり続けるということがあるのも事実です。
その結果、介護職員の退職理由の統計では「法人や事業所の運営方針や理念に不満があった」という内容が毎年上位になっています。
更にその結果、「人手不足によって介護施設(老人ホーム)の倒産が過去最多」というニュースもありました(経営難も倒産理由のひとつですが)。
つまり、介護現場で今まで当たり前のように行われてきた「今までこうだったからあなたもこうするべき」という考え方を改めていかなければ、介護職員の退職に歯止めがきかず最悪の場合は倒産してしまうことにもなりかねないということです。
今回は、介護現場の崩壊を招く「今までこうだったのだからあなたもこうするのが当然」という危険な考え方について記事を書きたいと思います。
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【介護現場の崩壊】今まで通りにすることが正しいという危険な考え方
「今までこうだったからあなたもこうして当然」という考え方が何故、危険なのでしょうか。
危険①:介護職員が辞めていく
冒頭で書いたように、介護事業所のおかしな風潮や慣習や独自ルールを押し付けることは介護職員にとって大きなストレスとなります。
ストレスが大きくなれば、介護職員が辞めていくことになり人員不足になります。
人員不足になれば、介護職員の業務負担も大きくなりますし、利用者に対しても質の高い介護などできなくなり、最悪の場合は事業所の規模を縮小したり倒産する運命が待っています。
正に介護現場の崩壊です。
ちなみに、おかしな風潮がどのようなものかと言うと、例えば、
「自分も今まで上司に叱責されてここまで成長したのだから、新人職員も上司に叱責されて当然(それが成長する道)」
「今まで誰も休憩など取らずに働いてきたのだから、あなたが休憩を取れなくても当たり前(それこそがやりがい)」
「家族のクレームの多くは介護職員の責任なのだから、今後も全て受け入れて謝罪して改善していくのがプロの介護職員(責任の押し付け)」
などになります。
未だにこういった体質の介護事業所は今日も明日も人員不足ではないでしょうか。
結局は、人材も介護の質も担保できない危険性をはらんでいます。
危険②:ただの思考停止
「今までこうだったのだから」「自分もそうして成長したのだから」という考え方は、とても危険な「右にならえの一方通行」です。
この右にならえの一方通行が介護職員にも伝染していき、やがて「それが当たり前」になってしまいます。
世間の常識に当てはめて考えると、「自分がそうだったから」という理由だけで全ての人に当てはまるわけではありませんし、その結果が今の人員不足を招いている(ひいては質の低下)というところまで考えが及んでいないため「ただの思考停止」と言えます。
完全に思考停止をして「自分が通ってきた道なのだから当然にあなたも通る道」という風潮には違和感しか感じません。
そういう思考停止が、益々悪循環に拍車をかけ介護現場の崩壊を招くことになるため危険なのです。
危険③排他的独裁的な運営
介護職員の意見には一切耳を貸さず、むしろ「言い出すことさえ許されないような排他的独裁的な運営」であれば非常に危険です。
法人を私物化していたり、恐怖政治で従わせるだけの介護事業所もあるのではないでしょうか。
そんな運営方針では「いつ自分がつるし上げられるか」と戦々恐々としながら働くことになり、介護職員が職場に定着しないことでしょう。
介護職員が定着せず人員不足になれば、現場を回すだけで精一杯となりどんどん介護の質も下がっていきます。
常に介護現場の崩壊寸前の音が聞こえていることでしょう。
改善していくためにはどうすればいいのか
介護事業所のおかしな風潮や慣習や独自ルールを野放しにしているとデメリットしかありません。
この介護現場の崩壊を招く状況を改善するためには「事業所側の意識改革が必要」です。
具体的に言うと、
- 現場の声をもっと拾い上げる体制
- 世間の常識で判断する
- 右にならえの思考停止はやめる
ということになります。
しかし、残念ながらこれらを柔軟に受け入れられる事業所は既に良い方向へ変わっている(変わりつつある)でしょうから、現状で悪しき慣習がある事業所やワンマン経営の事業所は受け入れがたい内容であると推測できます。
介護職員の質ばかり目を向けられがちですが、介護事業所やその経営者の質にもっと目を向けていかなければ、本当の意味での底上げは難しいと言えるのではないでしょうか。
最後に
今回は、介護現場の崩壊を招く「今までこうだったのだからあなたもこうするのが当然」という危険な考え方について記事を書きました。
事業所がおかしな体質だと、介護職員を含めた従業員にもそれが伝染していき、やがて麻痺してしまい「介護現場の常識は世間の非常識」と言われる元凶となります。
介護職員個々が知識や技術を高めていこうとすることも大切ですが、事業所が育てていく体制がなければ「育つものも育たない」ということになりかねません。
悪しき慣習から抜け出せた介護事業所が生き残れる椅子取りゲームが既に始まっているのかもしれません。