今回の記事は「利用者として」「利用者の家族として」介護施設に入所や入居する際の選び方のポイントを、現役介護職員であり介護福祉士である私の視点でご紹介したいと思います。
施設選びのお役に立てたら幸いです。
介護施設の種類
まずは「介護施設の種類」を見ていきたいと思います。
「介護施設」と言っても様々な施設形態があります。
- 有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- 介護療養型医療施設
- ケアハウス
- 養護老人ホーム
などがあります。
ひとつひとつ、サービスの内容や入所条件や費用や料金が異なり、介護保険が適用される施設やされない施設もありますので、目的に合わせた施設選びが必要です。
契約前に必ず見学を
入所や入居を決めた場合、次にすることは契約です。
契約が成立すると入所できるわけですが、必ず契約をする前に施設の見学をすることをお勧めします。
普通に考えて施設見学をする場合は、事前に施設へ連絡し予約やアポイントメントを取ってから見学をするかと思います。
「それが社会のルールやマナーや常識」だという先入観があるからです。
もちろん間違ってませんし、事前予約を推奨している施設が多いのも確かです。
しかし本当に「良い介護施設を見つける場合」は、事前にアポを取らずに突撃見学に行ってみるのもひとつの手です。
まずは玄関で事務所職員や生活相談員などが応対すると思いますが、そこで
「急に来られると困ります」
などと言う施設はまずないでしょうが、もしそのような雰囲気だったとしたら「すぐには見学して貰えない理由」があるのです。
例えば
- 掃除が行き届いていない
- 職員の心構えが出来ていない
- 普段の様子を見られると困る事がある
- 急な来訪者を排除する体質
などです。
もちろん
- 担当者が不在
- 特別な行事がある
などという一見正当な理由もあるかとは思います。
しかし私に言わせればそんな理由は正当でも正常でもありません。
見学をする担当者なんて誰でも出来るはずですし、行事があれば是非その見学をさせてあげるべきです。
また、突撃見学の方が「着飾らない普段の施設の様子」を知ることができます。
それでこそ「施設の本当の特色がわかる」ということになります。
入所者やその家族が一番知りたいのはそういった部分なのではないでしょうか。
大体の場合は、事前連絡なしで見学に訪れても対応をしてくれるはずです。
見学で確認しておきたいポイント
介護施設を見学する際に、どのような点に注意して見学をすればいいのでしょうか。
①職員に笑顔と挨拶があるか
良い施設は職員の表情が明るいです。
そして必ず職員の方から挨拶をします。
職員の表情が暗く、挨拶もしないような施設は論外です。
仮にそれが作り笑顔だったとしても「来訪者には笑顔で挨拶をする」という常識を兼ね備えた職員がいるということになります。
②職員から利用者への言葉掛けは適切か
- 強い口調や命令口調になっていないか
- 「ちゃん」付けや「あだ名」で呼んでいないか
という点に注意してみて下さい。
それが日常的に行われているとすれば「それが許される施設、環境である」と言えます。
あなたやあなたの家族も同じ対応をされることになるでしょう。
③利用者のいる前で上司が部下を叱責していないか
利用者の前や家族の前で部下を叱責したり乱暴な言葉遣いをしている上司がいる場合は要注意です。
十中八九、人間関係が良くない施設である上に、上司の人間性が最悪です。
そういう施設は必然的に職員がすぐに辞めるので「人員不足の施設」であると予想できます。
また、そういう環境の中では職員も伏し目がちとなり、笑顔も出ません。
人員不足や虐げられてストレス過多な職員が行うケアが利用者に幸せをもたらすとは考えにくいのです。
④掃除が行き届いているか
床やテーブルの上を確認して下さい。
明らかに汚い場合は、掃除が出来ていません。
掃除が出来ていないということは不衛生な環境で利用者が生活することになります。
掃除が出来ていない理由は
- 職員の人員不足
- 掃除をする時間がない
- 汚れに無頓着な職員ばかり
ということが考えられます。
ちなみに、介護施設では食事の際に「食べこぼす利用者」も多くいるので、掃除は最低でも1日3回は必要です。
意識の高い事業所は、介護職員の負担軽減も考慮して掃除業者に外注で依頼したり、掃除専門の職員を雇っていたりします。
どちらにしても掃除が行き届いていない場合は、良い環境とは言えません。
⑤利用者の服装が乱れていないか
衣類の着脱に介助が必要な利用者の衣服の
- 襟が内側に入っていないか
- 服の後ろが背中の下までおりているか
- 季節に合った服装をしているか
という点を確認して下さい。
介助が不要で自分で衣類を更衣できる利用者であっても、衣服が乱れていれば声掛けをしたり直したりするのがケア業務です。
これらが行き届いていないのも
- 人員不足
- 職員の知識や技術不足
が考えられます。
上記を確認した上で、納得できれば契約に進むことになります。
契約での注意点
契約をする上で確認しておくべきことは、
- 料金(利用料)
- 料金の支払い方法や時期
- サービスの内容
- 職員の人員配置体制
- 損害賠償等の免責事由
- 苦情や相談窓口
- 重要事項説明書
などです。
その際に注意をしておきたい点は
- デメリットの説明があるか
- リスクの説明があるか
ということです。
例えば、
「職員は24時間付きっきりで介護が出来ないので、転倒のリスクはゼロではありません」
「病院受診が必要になった場合は必ず家族の付き添いが必要です」
などです。
その説明があった上で「契約します」ということであれば入所の運びとなります。
デメリットやリスクは無い方が良いのですが、限られた人員で多数の利用者をケアする以上、必ずデメリットもリスクもあります。
それを理解し了承して頂いた上で契約をして貰わないと
「聞いていない」
「介護のプロなのに転倒させるなんておかしい」
「完璧な介護をお願いしたつもりだ」
というトラブルに発展しかねません。
残念ですが、どこの施設であっても現状で「完璧な介護は不可能」だと思って下さい。
利用者が100人いて、介護職員も100人いる場合は別ですが、そのような施設は皆無に等しいです。
厳密に言えば、介護職員にも公休や有給があるので、100人では足りません。
本当のマンツーマンで完璧な介護をする場合は、利用者100人に対して在籍介護職員が130人は必要です。
最後に
今回は「介護福祉士の私が教える良い介護施設の選び方」について記事を書きました。
最後に申し上げておきたいことがあります。
上記のチェック項目をクリアできる介護施設は間違いなく「良い介護施設」です。
しかし、残念ながら「どこの施設も似たり寄ったり」という現状があります。
結論として言えるのは
「職員が働きやすい施設が利用者にとっても良い施設」
ということです。
職員が働きやすい施設とは
- 人員確保の問題
- 収入面の問題
- 人間関係の問題
- 利用者や家族の理解を十分に得た上で働ける環境
をしっかりと考えて対策をしている事業所のことです。
もちろん、スタッフ一同、理解を得られるように努力をしていきます。
利用者のためにも家族のためにも、より良い信頼関係の構築が出来ますよう願ってやみません。