「介護施設」「夜勤」「恐怖体験」というワードが並ぶと、何となく「霊的な体験」を想像されてこのページを開いた方も多いかもしれません。
しかし、介護士が夜勤で一番怖いのは「幽霊やおばけよりも利用者の転倒や急変」です。
「幽霊出てきていいから、利用者の転倒や急変なく朝を迎えさせてくれ」と願う介護士が多いのではないでしょうか。
かと言って、本当に幽霊が出てきたら肝を冷やすことでしょう。
しかし、私は霊的なものをあまり感じませんし見たことがありません。
周りのスタッフからもそういう話を聞いたことがありません。
今回は「介護施設の夜勤で多くの介護士が怖いと思った体験」について記事を書きたいと思います。
認知症の症状
恐怖体験の前に「認知症の症状」についておさらいをしておきたいと思います。
認知症の症状には「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」があります。
「中核症状」は脳の細胞が壊れることで、壊れた脳細胞が担っていた機能が失われることで、「周辺症状」はその二次的な症状や行動のことを言います。
図で表すと以下のようになります。
【出典】認知症ねっと
【中核症状】
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【周辺症状(BPSD)】
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夜勤の恐怖体験
ベテランになってくると慣れっこなのかもしれませんが、新人職員や慣れていない職員にとっては「恐怖そのもの」であるものを集めてみました。
恐怖①「誰もいない居室からナースコール」
「まさか本当に霊的な現象?」と思ってしまったのが、誰も入所していない居室からナースコールが鳴った時です。
空き部屋からのコールは夜間の平和と静寂が破られ「ドキっ!」としてしまいます。
恐る恐るその居室へ行ってみると、霊的なものではなく、「夜間に徘徊している利用者が空き部屋に入り込んでナースコールを握りしめている」ということがあります。
安心していいのかどうかわからぬまま利用者を空き部屋から出てもらうよう誘導します。
恐怖②「居室へ入ったら便まみれ」
これもあるあるなのですが、認知症の周辺症状に「弄便(ろうべん)」があります。
読んで字のごとく「便を弄ぶこと」なのですが、利用者の居室に入った途端、鼻を刺す臭いと「茶色の地獄絵図」と対峙し「ゾッと」してしまった経験がある人も多いのではないでしょうか。
至る所が便まみれで、ワンオペ夜勤でこれを処理するのは相当大変です。
恐怖③「居室から叫び声」
利用者の部屋から叫び声が聞こえ駆けつけると「ただ叫んでいるだけ」ということもあります。
悪い夢を見たのかもしれませんが、落ち着いてもらうまでに時間が掛かることもあり、周辺症状の「せん妄」だったりします。
アクシデント等がなく安心するものの、急に叫び声が聞こえると「ドキっ!」としてしまいます。
恐怖④「利用者が誰もいない所に向かって話し続ける」
利用者が誰もいない所に向かって一人で話し続けていることもあります。
誰もいない所に向かって手招きをし「小さい子供がいるわ、こっちにおいで」などと言っていると「心霊的なものが見えているのか」と思い、一瞬怖くなってしまいます。
この場合、周辺症状の「幻覚」が見えていることが多いのです。
ここで「誰もいませんよ」などと言って否定してしまうと、介護職員として「受容」や「寄り添い」ができていないことになりますし、否定をすることで利用者がもっと不穏にもなりかねません。
ですから「そうなんですね」などと言って共感し受け入れるのですが、だんだんと「見えない何かを受け入れている自分」が怖くなってきます。
恐怖⑤「暴力利用者の対応」
認知症の周辺症状に「暴言や暴力」もあります。
何の前触れもなく急に暴力的になる人もいます。
オムツ交換中に職員に噛みついたりつねったり、靴を履いてもらう介助中にしゃがんでいる職員の顔面めがけて膝蹴りをされた、という話はよく聞きます。
ワンオペ夜勤ですから、その対応には苦慮することになり、対応そのものが恐怖となります。
最後に
今回は「介護施設での夜勤中に発生しがちな怖い体験5選」をご紹介しました。
冒頭にも書きましたが、やはり一番恐怖なのは「利用者のアクシデントや急変」です。
心霊体験をしている職員はあまり聞きませんが、認知症利用者の周辺症状による恐怖体験が多いように感じます。
もちろん、そういった症状のある人を介護するのが介護職員の仕事になります。
認知症なのですから仕方の無い部分はありますが、職員の身体や生命を脅かすような「暴力」への対応は事業所全体で対策を講じて欲しいと思います。