認知症のある利用者に「身内が亡くなったこと」を伝えることの可否

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こんな話題を目にしました。

「認知症のある利用者に身内が亡くなったことを伝えないのは人間扱いしていないことになる」

これを目にした時にまず思ったのは「必ずしもそうとは限らない」ということです。

認知症があろうが無かろうが、状況や状態やタイミングによって「優しい嘘」や「方便」は必要ではないでしょうか。

今回は、認知症のある利用者に「身内が亡くなったこと」を伝えることの可否について記事を書きたいと思います。

「身内が亡くなったこと」を伝えることの可否

誰であっても人間である以上、人権もありますし、各々の思想信条もあります。

一人ひとり状況も状態も違います。

ですから何事にも言えることですが、他者から「極端で一方的な決めつけや押し付け」があって良いはずはありません。

それは認知症のある人であっても同じです。

それが理解できれば、「必ず伝えなければならない」という考え方も偏った意見であることがわかります。

「偏った独自の意見を押し付けてしまうこと」こそが「認知症のある人を人間扱いしていない」のではないでしょうか。

「伝えるべき」と言い切れるのは固定概念

認知症を理由に「妻や夫や親兄弟などの最愛の人が亡くなったこと」を伝えられないのは確かに違和感があります。

しかし、認知症にも様々な種類がありますし、個々の症状や状態も違うわけですから「認知症を理由に」十把一絡げにしてしまう方が無理があります。

認知症に限らず誰であっても「本人の症状や状況や状態に応じて」伝えることが適切なのか不適切なのかを判断する必要があります。

そういったものを無視して「何がなんでも伝えるべき」と言い切れてしまう人は「固定概念の塊」です。

まずは「固定概念を払拭」して柔軟な考え方をしていく必要があります。

決めるのは家族

そもそも、仮に「身内が亡くなったこと」を伝えるにしても、それを最初に伝えるのは家族の口からになります。

家族を差し置いて介護職員やケアマネや施設関係者から伝えることはありません。

「知らないままは可哀想」という感情が芽生えるかもしれませんが、それは「自分の個人的な感情」です。

確かにそう思ってしまったり思いを馳せることもありますが、バイステックの七原則に「非審判的態度の原則」があります。

つまり、「支援者は自分の個人的な感情で善悪を判じたりしてはいけないという原則」ですから、自分と自分の感情を基準にしてはいけません。

助言をすることはあっても「絶対に伝えるべきです」などという極端で偏った自分独自の考え方を押し付けてしまうことは「おこがましい」のです。

そうなると、伝えるか伝えないかの判断をするのも当然家族です。

もちろん、「本人が知りたいか知りたくないか」ということが最優先されるのですが、状態に応じてそこを推し量りながら最終的に決断をするのはやはり家族です。

いくら「パーソン・センタード・ケア」だと言っても、本人にとってその家族も最愛の人なのですから、家族の判断を軽視することはひいては本人を軽視することになります。

「最愛の家族の判断を尊重」することが「本人の尊重」に繋がります。

どういう判断になろうとも「本人と家族の絆」に横槍を入れる行為は「差し出がましい」のです。

大切なのはバックアップしていくこと

常に家族の判断が正しいとも限りませんが、支援者として大切なことは「決断を尊重しその後もバックアップしていく」ことです。

「身内が亡くなったこと」を伝えることで、利用者本人が極度に落ち込んだり落ち着きがなくなったりする可能性もあり得ます。

そういった本人の変化の有無を観察し受容し対応していくのが支援者としての努めです。

また、「伝えない」という決断であったとしても、「今は伝えない」ということであって、ひょっとしたらいつかどこかのタイミングで「伝えられる」ということもあるかもしれません。

大切なのは、ひとつの固定概念に固執して思考停止となり「利用者の人生を決めつけてしまわないこと」ではないでしょうか。

最後に

今回は、認知症のある利用者に「身内が亡くなったこと」を伝えることの可否について記事を書きました。

「伝えるべきだ」又は「伝えるべきではない」というどちらか一方の概念に凝り固まってしまうと正常な判断を失ってしまい、ただの「エゴ」になってしまいます。

そして、対人援助を生業としていくのであれば「自分中心」ではなく「利用者中心」で考えていく必要があります。

利用者本人にとって「家族も大切な宝」であるのですから、その家族の思いや判断を軽視することなく立てていくことが、本当の意味での「人間扱いをしていく」ということではないでしょうか。

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